「His Majesty’s Pop Life」のCD化に寄せて #prince


プリンスがこの世から旅立ってから、怒涛のリリースラッシュが続いている。

一時期、所属のレーベルがコロコロと変わったこともあり、レコード会社の事情とはいえあのプリンスの作品でさえも廃盤になる世の中だったが、旅立った途端の再評価なのだろうか、廃盤となった作品の再発が次から次へと続いた。一ファンとしてはプリンスの作品を知ってもらえるという嬉しさがある半面、苦労してようやく手に入れた作品が今や、何の苦労もなく手に入ってしまうという現状に、何とも言えない複雑な気持ちになってしまった…のは、僕だけだろうか。

元々発売が予定されていたという「Purple Rain」のデラックス盤はともかく、「1999」のデラックス盤となると、果たして本人が発表を検討していたものなのか怪しいところもあるし、更に今年9月に発売が予定されている「Sign O’ The Times」のデラックス盤に至っては、その規模感から見ても、本人が存命であればこういった形で商品化されて発売されることは、絶対になかったのではないかと思う。この作品については発売されてから改めてレビューすることにしたいが、この「Sign O’ The Times」を発表した時期、プリンスは一番ワーカホリックだったのではなかろうか。確か、このアルバムを発表するまでに2~3枚のアルバムをお蔵入り(ボツ)にしているんだから。

昨年4月のレコード・ストア・デイでは、サンプラーのような幻のカセットテープ「The Versace Experience」が発売されるということで話題になった。

(レコード・ストア・デイに合わせて発売されたカセットテープと、そのあとで発売されたCD。後ろにあるのは特典のポストカード。)

世界に目を向けると、かつて日本国内で500枚のみ出回ったという激レアなレコード「His Majesty’s Pop Life」が、全世界で2000枚だけ再発売されることが決まったが、こちらはさほど盛り上がっていなかった、というお話は以前このブログに投稿したところ。

その数少ない1枚を手に入れることができたということで、些細な優越感に浸っていたが、その後、時期を同じくして発売された幻のカセットの音源が、CD化されて発売された。

結果として、幻はすっかり影を潜め、その音源は数多くのファンの手中に収まった。

この頃から何となく嫌な予感がしたが、自分が手に入れたレコードの変則的なフォーマットや収録曲を見る限りでは、恐らくCD化はないだろうし、仮にCD化してもそんなに話題にはならないだろう、と踏んでいたのだが…。

結局そのレコードについても、予定通りというか、予想通りのCD化が決定。それも、またしても日本国内のみの限定発売。当初5月発売とアナウンスされたが、新型コロナウイルス感染症の影響で発売が延期され、ようやく7月8日に発売された。まあ、レコードとしてのマテリアルは手元にあるのでそれはそれで充分価値あるものだと思っているけれど、CD化して欲しくない作品、再発して欲しくないと思っていた作品が世に出ると、何とも言えない気分になるもので。

…といいながらも、何かあるのではないかという淡い期待を寄せて購入してしまったのは私です、ハイ。

(CD、Amazon特典のメガジャケ、レコードの順に置いてみた。)

今回のCDを手に取ってみると、レコードのジャケットや封入されていた年表など、パッケージをCDの大きさにまとめた感じで、レコードのミニチュア版みたいな感じ(って、説明がそのまんまですね)。しかもご丁寧に、レコードのレーベル部分がブックレットとして収められているという徹底ぶり。しかしここまで来ると、主の不在をいいことに、ちょっとやり過ぎではないかと思ってしまうのですよ、私は…。

収録内容は、前半が「Around The World In A Day」に収録され、シングル化された楽曲のリミックスをメインに4曲、後半が以前に発売されたアルバム「Purple Rain」「1999」からシングル化された楽曲のリミックスをメインに6曲、計10曲という構成。

Pop Life (Extended Version) (9:07)
America (Album Version) (3:40)

Raspberry Beret (New Mix) (6:33)
Paisley Park (Remix) (6:56)

Let’s Go Crazy (Special Dance Mix) (7:35)
Little Red Corvette (Dance Remix) (8:22)
1999 (Album Version) (6:22)

I Would Die 4 U (Extended Version) (10:15)
Erotic City (Make Love Not War Erotic City Come Alive) (7:24)
When Doves Cry (Album Version) (5:52)

もともとプロモーション用だったということもあり、収録されている楽曲に一貫性はなく、強いて言えば、リミックスがメインだということと、どちらかいえばアップテンポの楽曲で構成されていること、だろうか。

レコードだと2枚組で、1枚目が45RPM、2枚目が33・1/3RPMという回転数の異なる変則的な組み合わせだというのも興味深いところだったが、CDになると、楽曲が並んでいるだけなので、何だか味気なくなる感じ。このCDのおかげで、レコードの深みというか面白みを再確認することができたことは、最大の収穫かも知れない。

結論から言うと、レコード盤をCD化することで得られるもの、損なわれるものそれぞれあるということを悟ったし、少なくとも、前回のカセット然り今回のレコード然りで、なんでもかんでもデジタル化すればよい、というものでもないのだな、ということを強く感じた。

プリンスの膨大なアーカイブを鑑みると、今後も様々な作品が発掘され、そしてリマスターされ、この世に出てくることだろう。

僕の意見に同調してくれるファンがどれぐらいいるかはともかく、個人的には、今回の楽曲も収録されている「Around The World In A Day」「Parade」そして「Lovesexy」、この辺りのリマスター盤、あわよくばデラックス盤が発売されたら、とーっても嬉しいなあ、と思う。

…だから主が不在だからって、いくら何でも期待し過ぎだろう!って、あちらの方から怒られそうだけど。