7月下旬から8月中旬にかけては、青森県内各地でさまざまなお祭りが開催されます。
ユネスコ無形文化遺産に登録された八戸三社大祭、弘前ねぷたまつり、青森ねぶたまつり、五所川原立佞武多、平川ねぷたまつり、黒石よされ…etc
弘前市民の僕としてはやっぱり弘前ねぷたまつりを一推し…と言いたいところなのですが、実はまつりに対する思い入れ、執着がそんなにあるわけではありません。
僕にとって「弘前ねぷた」といって真っ先に思い浮かぶのは亡父のこと。あの頃の思い出をむやみに壊したくない、という思いの方が強いというのが正直なところです。
昔の弘前ねぷたといえば各町内が競ってねぷたを制作し、街を練り歩くといった印象だったのですが、時の流れと社会構造の変化とともに、最近は町内のねぷたよりも有志によるねぷたの方が増えている感があり、亡父が身に纏っていたような帯に浴衣という昔ながらの衣装ではなく、袢纏姿の人たちが凄く多くなったこと、そして、どことなく排他的というか、強い仲間意識(縄張り意識)みたいなものを感じるようになってしまい、あまり観る機会もなくなってしまいました。…なんてことを言うと弘前ねぷたを批判しているようにも受け取られかねないのですが、そういうことではありませんので念のため。
今年は連日天候に恵まれた割には夜になると涼しくなる日が多くて、熱帯夜の中で「もんどりこ」の音を聴きながらようやく眠りに就く、ということがありませんでした。逆にそれが寂しくもあり、更にはまつりが終わるとともにやってくる妙な静寂感、そしてねぷた囃子に取って代わって現れる虫の声が一気に秋を近づけるような気がして、個人的には何とも言えぬ切なさすら感じるような、そんな2017年の夏でした。
一方、今年は甥っ子が弘前ねぷたに初参加。某団体のねぷたに参加し、ヤーヤドーと叫びながら街を練り歩いたそうな。仕事の都合もあって残念ながらその姿を見ることはできませんでしたが、飽きることなく最後まで歩いたのだそうで。
「そんなにねぷたが好きなら、五所川原の立佞武多、観たら喜ぶかな。」
妻の何気ない一言から、あれよあれよと五所川原立佞武多の弾丸観戦ツアーが決定。5日の夕方に五所川原市へ向かい、立佞武多の館のすぐ近く、僕にしてみれば「走れメロスマラソン」のスタート地点と認識している場所で観戦することになりました。例年、マラソンの時に立ち寄る立佞武多の館で、仁王立ちするその姿を観ていましたが、動く姿を観るのは今回が初めて。
日が暮れ、周囲が暗くなり始めた午後7時、打ち上げ花火を合図に運行がスタート。
いきなり現れた婦人会の皆さんのこの姿を見ただけで、一気に引き込まれました。
ちなみにこの祭りに欠かすことができないのが地元出身の吉幾三さんなのですが、この日の出演はなし。聞いたところでは、前日の初日と我々が観た翌日の6日に登場したとのこと。まあ、吉幾三リサイタルを観に来たわけじゃないので…と嘯いても、実はこの方がいるといないとでは盛り上がり方が全然違っていて、観客動員数にも顕著に現れるらしいです。事実、我々が観覧した2日目の土曜日は15万人、初日は33万人との発表でした。
程なく気付いたのが、観覧する場所を間違えたということ。五所川原市内を反時計回りに周回するため、僕らが観ている位置からだと、肝心の立佞武多が建物から出てきても、背中しか見えない、ということに。しかし、そんなことはともかく程なく現れた姿に、息を呑むことに。
実は予備知識も何もほとんどなく観覧に来てしまったため、何台が出陣し、どれぐらいの時間を要するのか、そしてどこで観るのが一番いいのか、全くわからないという失態。大体にして、どれが一番新しい立佞武多なのかも知らないし…。にしても凄い。倒れることはないにせよ、倒れてきたらひとたまりもありません。
この日運行されたのは、3台の巨大な立佞武多の他に、中型の立佞武多や、青森ねぶたのような組ねぶたが数台。
月すらも蹴散らさんばかりの勢いです。
太鼓を打ち鳴らす皆さんが勇ましく。
キャラクターを題材にしたものも数台。
やがて、大トリとばかりに立佞武多の館からヌゥッと登場した2台の立佞武多に、歓声が沸き上がります。
大物が登場するまでの間、子供たちは健気に待ち続けます。
ヌゥッと大物登場。…背中しか見えないし。
「ガンダム」とも揶揄される2台の背中を見送ると、先方からは最初に現れた立佞武多が周回を終えて戻ってきました。その前方には、最後尾を意味する赤色灯を光らせたパトカー。その姿を確認した周囲の観客が、一斉に撤収を始めます。どうやらこれで終わりらしい…時計を見ると、19時55分。いやいや、まだ少し早いでしょ。
ということで、背中しか見えなかった2台の立佞武多を追いかけることに。予備知識がないとはいえ、朧気ながら運行ルートだけは頭の中に入っていたので、先回りして前から見てやろうという魂胆。しかし、20時44分には弘前行の五能線が出発するため、その前に五所川原駅に向かわなければなりません。色々頭の中で駅までのルートや算段を画策しつつ、2台の立佞武多が現れるのを、時計を見ながら待ち続けます。
そして20時15分、来ました来ました。
立佞武多の前で「ヤッテマレヤッテマレ」と鉦を鳴らしながら練り歩く皆さん。弘前はゆったりと練り歩くスタイル、青森は派手に跳ねまくるスタイル、五所川原はその中間といったところでしょうか。流し踊りにも近い感じなのかな。
2台の立佞武多を見届けた後、賑わう喧騒を離れ、五所川原駅から帰路に就くことができました。意外だったのは、この列車に乗車しているほとんどの方が弘前に向かうんだろうな、と思ったら、途中の陸奥鶴田や鶴泊、板柳駅で下車する人がとても多かったこと。きっと初日の車内は、すし詰め状態みたいになっていたんだろうなあ、と。
五所川原立佞武多の運行が復活してから今年で20年の節目を迎えるそうです。道幅がさほど広くないということもあるからなのでしょう、間近で観る巨大な立佞武多は、ただただ圧巻の一言に尽きます。町内会、そして有志による運行の他、高校を挙げての運行など、青森や弘前とは異なる勢いを感じさせる運行や、他のまつりとは趣を異にする雰囲気が、その場に居合わせた観客を魅了するのでしょうね。
…で、ふと思ったこと。JR東日本及び関係機関は、5日と6日五所川原発弘前行で五所川原立佞武多と弘前ねぷたの駅前運行を(全てではないにせよ)同日に観覧できるんだよ!というプチツアーを考えるべし!
…ということで今度は吉幾三が出演する時に観覧してみよう(笑)