日別アーカイブ: 2014-05-12

八戸の海は、青かった。 - 八戸うみねこマラソン

初めてエントリーした「八戸うみねこマラソン全国大会」。
全国大会を名乗るだけあって、県内だけではなく県外(遠くは長崎県)からの参加者も多いと聞いた。
僕が所属している弘前公園RCでは、同日に仙台市で開催される「仙台国際ハーフマラソン」にエントリーしている人も多く、どちらの大会に出場するか頭を悩ませる人も多いらしい。
僕は、昨年諸般の事情でエントリーできなかった八戸市の大会にエントリーすることを結構早い段階から決めていて、これを「GW3連戦」を締めくくる最後のレースにしようと決めていた。

結果的に20名以上のメンバーが八戸の大会にエントリーしたので、(昨年に引き続き)バスをチャーターし、まとまって会場に向かうことになった。

5月11日早朝5時。弘前市役所前には6名のメンバーが集まっていた。程なく大型バスが到着し、荷物を抱えてバスに乗り込む。
この先、弘前駅前、郊外のショッピングセンター、そして道の駅ひろさきにて他のメンバーをピックアップして、東北道~八戸道経由で八戸市を目指す。

いわば、「大人の遠足」みたいなものだ。

こちらから乗車予定だったメンバー全員が揃い、バスは高速道へと進む。車内は、思った以上に静かだ。そりゃそうだ、恐らく早朝4時前後に起床して、八戸に向かう準備や荷物の最終確認をしていたはず、眠気が襲ってこないワケがない。

…気がつくと僕も、1時間ぐらいうたた寝をしていたようだ。

7時過ぎに八戸道から一般道へ。本八戸駅で最後のメンバー(急遽東京から夜行バスで駆けつけたYSD氏)をピックアップして、一路会場へ向かう。

予想どおり渋滞に巻き込まれ、しかも大型バスを貸し切って会場入りするのは我々ぐらいだったようで、駐車場の整理に当たっていた方たちもどこに駐車スペースを確保するか腐心されたようだ。(係員のご配慮に感謝します。ありがとうございました。)

結局8時過ぎに無事会場入り、ゼッケンナンバーやTシャツの他、協賛企業からのお土産(ちくわやウィンナーなど、食料品が多かったのは嬉しかった!)を受け取り、各自がスタートに向けた準備に取りかかる。

ハーフマラソンのスタートは10時。9時を過ぎた頃には、北西から穏やかな風が吹いているが、日差しがジリジリと照りつけている。恐らく既に20度近くあるのではないだろうか。昨年はヤマセの影響もあってか、寒くて仕方がなかった、ということだったが、今日は一転して暑さとの戦いになりそうだ。

近くにある建物に、同期のM氏と一緒にトイレを借りに行く。
建物から出た時、僕らが着ているTシャツを見て、見ず知らずのおばさん2人が声を掛けてきた。

「弘前の方ですよね?いつも皆さんから元気を頂いております。ありがとうございます!」
「とんでもないです。こちらこそありがとうございます。」

…はて、誰だっけ?…いや、知らない方々だ。
このTシャツを着ているだけで弘前の人だとわかった。恐らく弘前公園RCのFacebookページでもご覧になっているのだろう。
知らず知らずのうちに知名度が高くなっていたことに、ちょっと驚きを隠せなかった。

9時30分頃に各自がバスを後にして、おもむろにスタート地点を目指す。
どれぐらいの人がエントリーしているのかはわからないが、目標タイム別での区分けもなく、かなり緩い感じでスタート地点に人が集まっている。ただ、5日前に走った花巻ハーフマラソンとは人の数が圧倒的に違う。

連戦による疲労感はそれほどでもなかったが、右足首の辺りにちょっと違和感があるような、ないような。
…ま、毎回走り始めるとそれも忘れてしまうので、気にしないようにしよう。

10時号砲。走り始めと同時に、暑さを感じる。給水をしっかり抑えないと、脱水症状に陥ることも懸念される。

入りの1キロは4分29秒。決して速くない人たちも相当数前に並んでいたため、思ったよりペースは上がっていないが、いきなり飛ばしてしまうよりは、この方がよかったのかも知れない。
事前に聞いた話では、5キロぐらいまでは漁港内の道を右へ左へ迷路のように走り回り、八戸市水産科学館マリエントを過ぎた6キロ付近でループ状の坂を一気に駆け上がると、その後海岸線に出た後は、折り返しまで結構アップダウンが続くらしい。しかしそれよりも、折り返して戻ってきた後の15キロ辺りからゴールまで続く、平坦な漁港内の道路が、相当堪えるらしい。

3キロ通過。13分40秒ぐらいだった。この辺りまではほとんど団子状態でランナーが走っており、前のランナーを追い越すために右へ左へ進路を変えなければならず、無駄に距離を稼いでいることにちょっと憤りを感じていた。

やがて正面にうみねこの生息地である蕪島が見えてくると、最初の給水所があった。
確か給水ポイントが5か所しかないため、しっかり給水しないといけない、そのことばかり考えていたのだが、何せ給水に慣れていない人たち(恐らくレース経験が少ない人たち)もたくさん走っていたため、ペースダウンを余儀なくされる。何とかコップを手にしたものの、自分の思い通りに給水ができたのは、結局1か所だけだった。

…やがてマリエントが右手に見え始める。スタッフと思しき人たちが、何やら大声で選手に声援を送っているが、あまり耳に入ってこない。
この時点でキロ何分のペースで走っているか、ほとんど意識していなかった。ラップを刻む音が時計から聞こえても、時計には目もくれず、淡々と前に脚を運ぶ。ループ状の坂を上りきると、再び上り坂が待ち受ける。この二つの坂で脚に来た人も少なからずいたようだ。

鮫角灯台を通り過ぎると、左手に海岸線が見えてくる。この一帯は昨年5月、三陸復興国立公園に指定された地域だ。
7キロ過ぎの2か所目の給水所。たまたま前を走っていた大柄な男性が、紙コップを掴んだ途端、ピタリと脚を止めた。
そのまま通り過ぎるとばかり思っていたので、思いきり後ろからぶつかりそうになり、思わず声を荒げてしまった。
紙コップを片手に追い抜いた背後から「す、すいません。」と声が聞こえた。

…いかんいかん。もっと心に余裕を持って走らないと。

聞いていたとおり細かなアップダウンが続いているが、約17年ぶりに見た海岸線の美しさに見とれながら走っていたので、さほど気にはならなかった。

久慈へ向かう八戸線の列車が駆け抜けていく。列車は数回汽笛を鳴らし、車内からはたくさんの人が我々に向かって手を振っている。何だかその光景が微笑ましくもあり、嬉しくもあり…。

やがて9キロ付近で、結局この日女子ハーフマラソンの部で7位入賞を果たしたB嬢に追いつき、並走しながら二言三言会話を交わす。ふと時計に目をやると、4分30秒のペースで走っている。
お互いの健闘を誓いながら、B嬢の前に出た。更にその前には、YSD氏の姿が。実はスタート時点からYSD氏の背中は見えていたのだが、9キロを過ぎた辺りからその背中が徐々に大きくなっていることを確信した。

「ああ、多分追いつくな…。」

白バイに先導されたトップの選手とすれ違い、しばらくすると同じ「No Apple,No Life」のシャツを着たメンバー数名ともすれ違う。言葉を交わすこともなく、互いにサムアップ。

やがて折り返し地点が近づく。この手前でYSD氏の背後にピタリとついた。折り返すと、仲間たちが続々とやってくる。無言のままサムアップを続ける。

程なく現れた第3給水所では、YSD氏の前を走っていたランナーが給水にもたつき、YSD氏もそれに巻き込まれた。
まただ…と思いつつ、スッとYSD氏の前に出た。

しかしここでのペースアップはせず、アップダウンの流れに身を任せる。向かい風が追い風に変わり、今度は右手に太平洋の青い海原が広がっている。岩に打ち付ける波しぶきが実に豪快だ。

この間、何人かの人に追い抜かれたのは覚えているが、何人を追い抜いたかはわからない。折り返し後の復路に入ってから僕を追い抜いたのは10名前後しかいなかったはずだ。

今日のレースは最低でもイーブン、あわよくばネガティヴスプリット、そして、ゴール前で心折れずにしっかりペースアップをすること。これを目標にしていたが、今のところ順調に走れている気がする。暑いことに変わりはないが、喉の渇きもないし、脚の痛みも気にならない。

再びループ状の坂を下ったところから、いよいよペースアップを開始。
…ところが程なく、後発の10キロマラソンの折り返し地点で、10キロを走る人たちの波に揉まれることとなった。ペースアップしようにも、まるでスタート地点を彷彿させるぐらいの人、人、人で、思うようにペースが上がらないのがわかる。(実際、上げかけたペースがまた元に戻っていたようだ。)
しかしこの時点でどれぐらいのタイムで走っているのかは、全くわからなかったし、知ろうとも思わなかった。むしろ、時計を意識することで変に緊張するのを避けたかったのだ。

結局、スタート時と同じく右へ左へと進路を変えなければならなくなり、またしても距離もタイムもロスをしていることにイライラが募る。更に、急に路面が荒れている臨港道路(これがまたホントに酷い凸凹だった)に差し掛かった時に、右足底に水ぶくれができていることを確信、急に足裏から痛みがジンジンと伝わってくる。

それでも何とかモチベーションだけは維持したまま、ひたすら走り続ける。
モチベーションを維持できているのは、周囲を走る10キロマラソンの人たちを追い抜いているということ。そして、その中に紛れているA,Bから始まるゼッケンナンバーの人たち(ハーフマラソンを走る人たち)を追い抜いているということ。

僕を追い抜いていく人は、一人もいなくなった。あとは前を走っている人たちをひたすら抜いて抜いて抜きまくる。
気分はすっかり高速ランナーだった。(前述のとおり実際はほとんどペースが上がっていなかったのだけど。)

ようやくスタート地点のゲートが見えてきた。しかしゴールはそこから更に向こうにある。
沿道で応援する人の数が急に増えているのがわかる。道幅も一気に広くなり、ようやく雑踏を抜け出した、そんな気分になる。
この辺りを走っている10キロランナー(恐らく記録よりも完走を目指している方の方が多かったのではないだろうか)を、難なくひょいひょいと抜き去る。それがまた、妙に気持ちいいのだ。
左手前方に、一緒にバスに乗ってきたSさんが「マカナエさん、ラストラスト!」と叫ぶ姿を確認。Sさんも同じハーフを走っていたが、相当前を走っていたので、きっと入賞なんかしちゃったんではないだろうか…。
そんなことを思いながら左手を軽く上げ、いよいよラストスパート。
ゴールラインが見える。
右側にはタイムを示す電光掲示板が見え、ここでようやく95分台でゴールすることがわかった。

1時間35分29秒。

5日前の花巻ハーフマラソンで出したPBには1分20秒及ばなかったが、この暑さの中でよく心折れずに走り切りました!と、自分を称える。(いや、誰もいなかったんです。称えてくれる人が。笑)
そもそもこのレースではPBを出すことを目標としていなかったので、むしろこれだけのタイムでゴールできたことに驚きすら覚えた。

スタートからしばらく続いた団子状態、給水所でのトラブル、そして16キロ付近からしばらく続いた平坦な道での雑踏…。タイムが伸びなかったことを言い訳するための要素はたくさんあるが、なによりも、GW3連戦と銘打って出た4/29山田記念、5/6花巻ハーフ、そして今回と、いずれも36分台、34分台、35分台とコンスタントにタイムをまとめたこと、いずれのレースもネガティヴスプリットで走れたことは、ちょっと自信になったかも知れない。しかも後半の2レースは、2年前に初めてハーフマラソンを走った時のPBを越えている。

まあ、何度も言ってますけどね、僕の目標はハーフマラソンで記録を伸ばすことじゃなくて、昨年より進化することなので。

…ということで5月の大会はこれでおしまい。
次回は6月8日、五所川原市の「走れメロスマラソン」です!

(この後も喜怒哀楽色んなことのあった「大人の遠足」ですが、珍道中の内容は割愛します。許してケロ。)

20140511八戸うみねこ