日別アーカイブ: 2017-02-03

伯父を訪ねて百五十里(中篇) - 第65回勝田全国マラソン


前篇に続き、今回も勝田全国マラソンのお話。今日は「中篇」と称して、スタートから38キロ付近までを駆け抜けます。…まあ、実質の本編ですな。

(フィニッシュゲートを前に自撮り。この自信なさげな顔が全ての不安を物語っています。)

いよいよ10時30分、スタートの号砲と花火が打ち鳴らされました。わずか9メートルの車道に大勢のランナーが集まっているため、当然大混雑は想定の範囲内でした。しかし、号砲から約1分後にスタートラインを踏むと、その先は思いのほかスムーズに歩を進めることができました。

スタートしてすぐ、「マカナエさん、頑張って!」という声が聞こえました。振り返ると、翌週開催される「別府大分毎日マラソン」の調整のために、この日は10キロに出場予定のナオエさん。

「おお!行ってきます!」

ランナーで混雑する商店街を右折すると、勝田駅前から東に向かう5キロ地点付近までの道路は、しばらく片側二車線の車道が全面開放(ただし往路のみで、かなり進むと左車線を走るようサインあり)となっているため急に道幅が広くなり、一気にランナーがばらけます。この先もう一度右折があるので、日差しの当たりやすい左車線ではなく、敢えて右車線を走ります。人数からすると圧倒的に左車線を走るランナーが多いようです。よく見ると、あー、確かに不届き者がちらほらと。走って行くうちに、D,E,Fといったランナーがどんどん前方から現れるのです。そして、大体こういうランナーの中には右へフラフラ左へフラフラと何をしたいのかワケのわからない走りをし始める輩が出てきます。ハッキリ言って邪魔だし目障り!まあ、こんな不届き者どもにいちいち腹を立てても仕方がないし、彼らの相手をしている余裕はありません。1分1秒でも時間が削れるよう、せいぜい頑張って下さい。…そんな連中を嘲笑うかのように横目でチラリと見やりながら、ペースを少しずつ上げていきます。

…こういうことはあまり言いたくないんですけれど、ほんの一握りの不届き者、すなわちマナーやルールを守らない人の自分本位ともいえる行動が、何の関係もない他のランナーに多大なる迷惑を与えているということだけは、ちゃんと認識して下さいねホントに。

さて私、この日はノースリーブのインナーと半袖のTシャツにアームウォーマー、ショートパンツとゲイター(コンプレッション)というスタイル。この他キャップではなくバンダナにサングラス、そしてレースでは初となる手袋という出で立ち。シューズは、前回のさいたま国際マラソンで足裏に痛みを発症したadidasのTakumi Ren Boost2ですが、今回は中敷きを変えてみました。もちろん、前回の失敗を踏まえ、シューレースはしっかりと結んでいます。

なるべく何も考えず、無心に近い状態で走っていたので、実はあまり道中の記憶がありません。大会本部が用意した給水ポイント以外にもたくさん給水ポイントがあったこと、15キロを過ぎた辺りから応援が一気に多くなったこと、一人のランナーとしばらく併走を続けたこと…それぐらいでしょうか。

しかしその中でも、「キモ」と睨んでいたポイントをどう走ったのかだけは、しっかりと覚えています。
7キロ付近、鋭角の交差点を左折、それまでの南下から北上へと向きを変えた途端、予想どおり冷たい風、それも結構な向かい風が吹きつけてきました。
いわゆる風除けになりそうなランナーを探せばいいのか?それとも、ペース的にちょうど良さそうな集団についていけばいいのか?…しかし、いずれも適当なランナーが見つからず、ひたすら自分のペースで淡々と走り続けていました。向かい風ではありましたが、ペースをかき乱すほどの強風ではなかったのがせめてもの幸い。あとは、太陽の光があまり差し込んでこなかったことも幸い。この区間だけでどれぐらいの人を抜いたかはわかりません。(ちなみにあとで公式サイトの「応援navi」で順位を見てみると、スタート時点で2094番、ゴールの時は1046番だったようなので、トータルでは1,000人ちょっとのランナーを追い抜いたことに。)

呼吸は比較的落ち着いており、オーバーペースになっているというわけでもありませんでした。一つ目の紅白の鉄塔で10キロ、二つ目の紅白の鉄塔が見えてきたら15キロ。YouTubeで事前に確認していたコースの内容はしっかりと頭にすり込まれていました。
でも、この通りで一番厄介だったのは路面の轍。大型車もたくさん走る幹線道路だからなのでしょうか、タイヤ痕に合わせて舗装に大きな溝のようなうねりができているのです。それを避けるため、歩道寄りの端の方を走ってみたり、車道の真ん中を走ってみたり、どこを走るかちょっと悩みました。ただ、あまりフラフラすると他のランナーの迷惑になるので、前半はなるべく歩道寄り(結果的に他のランナーが風除けになった)、後半は車道のど真ん中を走っていました。

そんなこんなで間もなく13キロ付近からの急な下り坂、そしてその後に急な上り坂が待ち受けます。そこを抜けると15キロ地点を通過し、左折して西の方角に向かうので、向かい風から多少の追い風に変わるはず。
そしていよいよやってきた13キロ付近の長い急な下り坂でふと斜め左の方に目をやると、背後にどうやら僕を風除けにしてきたらしいランナーがいることに気がつきました。いやいや、別にいいんですよ。それだけ僕のペースは安定しているんだから、という自画自賛。しかし、長い下り坂を終えた時点で、わざとペースを落としました。僕の歩調に合わせて一瞬ペースを落としかけるも、あれ?というような感じでこちらをチラリと見ながら横をすり抜けるそのランナーさん。ハイ、今度は僕の風除けになって下さいね。その後も、「前に出て欲しいなあ」と言いたげな感じでチラチラとこちらに視線を送ってきます。思った以上にダラダラと続く上り坂、ここで若干ペースが落ちたのは明らかでしたが、上半身に意識を集中させ、なるべく脚を使わないことだけを意識していました。

ようやく長い上り坂が終わり15キロを通過、間もなく左折。少し前を走るそのランナーさんがちょっとだけペースを上げたのがわかりました。僕が風除けになっていた向かい風の区間は終わったので、申し訳ないけど今度はしばらく僕のペースランナーになってもらいましょう。
つかず離れずの微妙な距離感を保ちつつ、時々僕が前に出たり、逆にその方が前に出たり。お互い無言のまま、二人で引っ張り合いながら走っているような感じ。しばらくして中間地点を通過。1時間36分台。ううむ、後半の落ち込みを考えると、これでは3時間15分も怪しいかも知れない…。

結局そのまま25キロ手前まで、ずっとその方と併走を続けていました。左足の裏側が徐々に痛くなってきていたので、ペースが少しずつ落ちていたのは何となくわかっていましたが、この方のおかげもあって大体イーブンペースで引っ張ってこられた感じ。この間、色んな声援やエイドがあったとうっすら記憶があるのですが、走ることに集中していたのか、ほとんど覚えていません。そして、再び進路を東に向けると、やはり向かい風が吹いてきました。程なく25キロのアップダウン(なかなかの勾配がある常磐線の跨線橋)が現れ、ここで僕が若干ペースを上げたところで、それまで併走を続けてきたその方と離れ、一人旅が始まりました。…いや、一人旅とはいうものの、周囲には色んなランナーがいるので、一人ではないですけどね。

いよいよ、最後の「キモ」と考えていた27キロ付近からの右折左折が続く区間へと入ると、再び強い向かい風が吹いてきます。しかし、何度も右折と左折を繰り返し、その都度風向きが変わるため、途中からはどの方角に向けて走っているのかわからない感じ。頭の中に叩き込んでいたはずのマップも完全にグチャグチャとなり、両足裏もだいぶジンジンと痛んできました。そして、いつもであればこういうことをきっかけとして、30~35キロを過ぎてから大失速というパターンに陥るのですが、この日はまだ余力がありました。がしかし、35キロ手前でまたイヤらしいアップダウンの連続。これだと「さいたま国際」と大して変わりないじゃないか!平坦で記録が出やすいなんて、誰が言ったんだ?
ちなみに、30キロから35キロまでの5キロで、一気に1分近く(1キロ換算で10秒前後)ペースが落ちていたようです。

ようやく右折左折そしてアップダウンの連続が終わり、35キロ地点の手前で右折、向かい風から若干追い風気味の南下が始まりました。背中に風を感じたその時、何かのスイッチが入ったような感覚に陥りました。落としていたギアを入れ直したような感じ。この頃になると雲が少しずつ消え、晴れ間も覗くようになりました。肌寒さは感じられず、これは走っていて気持ちいい…と考えるようにしよう。どれぐらいのペースで走っているのかは全く時計を見ていないのでわからなかったのですが、あとで確認すると、35キロから40キロまでの5キロでは、逆に50秒近くペースが回復していたようです。
ところが38キロ過ぎ、残り約4,000メートルとなった辺りから、今度は脳が悪さをし始めます。

「ここまで頑張ったんだから、そろそろ歩いてもいいんじゃないの?うまくまとめれば、誰も何も言わないと思うんだけどな…。」

脚が痙攣する気配は全くありませんでしたが、いつもの葛藤が始まりました。正直、歩きたい。でも、早くゴールしたい…。一体どっちだ?いや、どっちもだ!

無心のつもりだった心の中でもブレが生じ始め、いよいよ限界が近づいてきたようです。悶々としながら交差点を再び右折し、いよいよ勝田駅からの大通りへと再びやってきました…と、その時!

「あれ?Appleって書いてるんじゃない?」
「あーっ!いたー!頑張れーっ!!」
(続く)