日別アーカイブ: 2019-08-29

忘れ物を探す旅(後編) #北海道マラソン2019

皆さま、ダラダラと申し訳ございません。勝手にこしらえた3部作、これにて完結です。

中編から続く】

沿道からは、小さな子どもたちがランナーに向かって手を伸ばしている。試しに手を差し出すと、チョンとタッチしてくるのかと思いきや、力強く手を叩いてきた。
それが何だか、「お前さ、もっと頑張れよ。」と言われているような気がして…。

また子どもが「がんばれ、がんばれー」と大声で叫びながら手を出している。
再び手を差し出してみると、やはり力強くポンと手のひらを叩かれた。

この悪天候の中、ランナーのために鼓舞する小さな姿。自分の不甲斐なさと申し訳なさがジワジワこみ上げてきた。
もっとちゃんと走らなきゃ。

もはや気力は完全に失せかけていたが、それならば…と再び駆け出してみる。
面白いように周囲のランナーをごぼう抜きするだけの余力が、まだ有り余っていた。もったいない!
走る距離はたった1km、いや、500mかも知れないが、ダラダラ歩くよりはいいだろう。

35km地点を過ぎたあたり、歩き始めた直後に奇妙な一団が横を通り過ぎていった。関係者二人が付き添うランナー。
沿道からの声援ですぐにそれが誰なのかわかった。

「山中教授、頑張って!」

IPS細胞でノーベル賞を受賞した、山中伸弥教授とその関係者の一団だった。後ろには、コバンザメのように一般ランナーが追随している。

なんと!…でも、ちょっとついて行ってみよう。再びペースを上げて集団の横につく。

ちらりと一瞥すると、教授は辛そうだが、足取りがしっかりしている。少し前に出て時計を見ると、概ねキロ5分のペースで走っているようだ。つかず離れずの距離を保ちながら数キロ、この集団と一緒に走った。…が、37km付近の給水ポイントで姿を見失った。

残り4キロ、いよいよ北大の敷地へと入っていく。もはやタイムなんてどうでも良くなっていた。

「走るのやめて、そっちの芝生に寝転がりたいわ!」
「あはは!あともうちょっとだから頑張ってね!」

沿道の人たちに愛嬌を振りまきながら、ゴールを目指す。

残り1キロ、声援を送るHさんの姿を発見。が、Hさんはこちらに全く気付いていない。
近づいて「どうも!」と声をかけると、「あー!あーっ!撮影間に合わないっ!」と叫ぶ。
思わずその場に立ち止まり、喜色満面でポーズ。

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