日別アーカイブ: 2017-10-25

避難所の運営を少しだけ考える ~「学校安全教室指導者研修」から~


今日は珍しくマジメに仕事めいたお話を。

青森県内にある小学校の管理者を対象とした「学校安全教室指導者研修」が行われ、僭越ながら私、研修のサポートを行ってきました。

折しも、兵庫県明石市で火災が発生、6時間以上も延焼が続き、20軒を超える建物が全焼したとのこと。急遽近所の小学校が避難所として開設されたというニュースを知ったのは、まさにこの投稿の校正を行っている最中でした。

恐らくこのブログをご覧頂いている方の多くは、何か大きな災害等が発生した際に、「避難所に避難する立場」ではあっても、「避難所を運営する立場」になる機会は、よほどのことがなければないことであり、むしろないに越したことはない、といったところでしょうか。(「ない」「ない」の連発ですいません。)

しかし、いざという時には避難者という立場と、避難所を運営する立場では全く状況が異なる他、避難する場所がどこなのかによっては、運営(又はそれをサポート)する立場に回るということが全くないと言い切れない部分があります。

今回は、もしも皆さんが「避難所を運営する立場」になった時に、どういった行動を取るのが適切なのかを少し考えてみたいと思います。…というよりも、僕自身の研修内容の「振り返り」であり「備忘録」です。どうもすいません。

ちなみに、今回は避難所運営のイントロダクションについてターゲットを絞って考える研修となりましたが、あくまでも一般論的なもの。災害の規模や発生した時期、更には場所等によって状況が全く異なるので、「これが正解」というのはなく、ケース・バイ・ケースになると思います。よって、「こういった場合はどうすればいいんでしょうね」と僕に聞かれても、「それは皆さんで考えて下さいね。」という、実につれないお答えしかできないと思いますので、あらかじめご了承下さい。

さて、今回の研修は県の教育委員会が主催したもので、県の防災担当にもサポートをお願いしたいということから職場の数名に声がかかりました。サポートに回った5名は全員、熊本地震の際に震度7を2度観測した益城町内で、避難所運営の支援を行ったメンバー。

多少なりとも学校における避難所運営がどのように行われているのかを、身をもって体感してきたメンバーです。その時の活動記録は、こちら

ちなみに今回の研修内容は、静岡県が作成した避難所運営ゲーム(HUG)を参考にしたとのことでした。

実はこのHUG、いつか経験したいと思いながらも未だに経験したことがないんですよね。別の図上訓練は、何度か経験しているんですが…。

言うまでもなく僕は避難所運営のプロフェッショナルでもなければ、深い造詣や知識も持ち合わせていません。

よって、あくまでも研修をサポートしながら、研修に参加していた皆さんがお話ししていた内容について聞き耳を立て、自分の中で咀嚼した内容にとどまってしまうと思いますが、少しでも皆さんが考えるきっかけになれば幸いです。

それじゃ、ちょっと内容に触れてみましょう。

ここで一つの想定をしたいと思います。(研修の想定とは少し異なっています。)

「○月○日午後1時20分、マグニチュード8.0の地震が発生、××町で震度6強を観測。」

・この日の天気は雨。午後1時の気温は15度。

・××町立△△小学校では、体育館横のプールのフェンスが一部倒壊したが、3階建ての校舎をはじめ、それ以外の被害はなかった。

・発生から5分後には児童300名全員の無事を確認、家族への引渡しも開始。現在150名が2階の教室で待機。

・津波警報が発令されたが、高台にあるため津波到達の可能性はない。

・電気、上下水道は地震の影響で寸断された状態。

・地震の直後から、近隣の住民をはじめ約100名が学校に避難し始めている。

・雨天のため、車で避難してくる人も多い。

・△△小学校内に校長を本部長とする災害対策本部組織を立ち上げ、教員間での情報収集を開始。

・非常用発電装置や仮設トイレ、救援物資などの備蓄機材等は学校にはない。

・保健室はあるが救護所はない。

・自主防災組織はまだ立ち上がっておらず、衛星電話を持った役場職員2名が到着したばかり。

 

さて、この状況を踏まえ、以下の状況に対してどのように対応すべきか、考えてみましょう。

 

(1)避難者が続々と集まっていることも踏まえ、当面の間、小学校を開放することを決定しました。まず、どこを開放しますか。

一義的には「体育館」と考えそうなのですが、体育館の前に開放すべきなのは「校庭」なのだそうです。これは、自家用車で避難してくる人の駐車スペースを提供する、という趣旨から。ちょっと虚を突かれました。

ただし。

校庭を全面開放するのは危険です。救急車や自衛隊、支援物資の輸送など、「公助」のための車輌が今後やってくると思われます。これらの車輌が駐車できるスペースは、当然動線も含めて確実に確保しておく必要があります。

人間の心理として少しでも入り口の近くに停めたい、という意識が働くものですが、避難者の駐車スペースは、むしろ入り口からちょっと離れた場所に確保する方が賢明なのかも知れません。当然、職員用駐車場を避難者向けに開放することは御法度。学校が再開した際に、立ち行かなくなります。

(2)校舎内で、避難者が立入禁止とすべき場所を考えたいと思います。どこを立入禁止にしますか。

職員室は言うまでもなく立入禁止です。これは、職員室が執務を行う部屋だからという観点ではなく、児童等の個人情報が保管されているからです。そういう趣旨では、事務室や校長室等も、関係者以外立入禁止とすべきでしょう。また、危険物が置かれている可能性のある理科室や燃料保管庫、備品の多い図書室や図工室も同様に立入禁止としました。

そして、非常に心苦しいところではありますが、ライフライン(上下水道)がストップしているということもあり、校内のトイレも立入(使用)禁止に。

避難者が続々と集まっている現状に鑑み、仮設トイレの速やかな設置を、役場職員を通じて強く要請しました。

(3)続々と集まってくる避難者について、何を、どのように把握しますか。

いよいよ体育館を「避難所」として開放することとしました。

その際、避難してきた方には次の情報を必ず「受付」に提示することを求めました。

◎氏名、年齢、住所(居住地区)、連絡先(携帯電話の番号)、血液型、障害の有無、同行者(同行者にも同じ情報を求めています)、避難の方法(車輌の有無)

○家屋の損壊状況(全壊、半壊、一部損壊等)、服用薬及び既往症の有無、緊急の連絡先(避難していない家族等の連絡先)、勤務先、勤務形態(勤務時間、休みの日など)

ただし、避難してきた人全員にその場でこれらの情報全てを聴取するのは困難であったことから、○の内容を含んだ内容については後日「避難者カード」を作成し、備え付けの箱に必ず投函するよう求め、今回は◎のみを求めることとしました。

また、体育館での混乱(不公平感)を避けるため、当面は1人当たり2メートル×2メートルの区画のみ与えることとし、体育館のステージ上は搬入されてくる救援物資の保管と仕分けなどを行うため、関係者以外立入禁止としました。

(4)避難者といっても種々様々ですが、高齢者や乳幼児連れ、障害者の他、「特に配慮を要する避難者」はどういう方が想定されますか。

心身障害者や妊婦さん、LGBTの方には一定の配慮が必要になりますし、観光客がいるかも知れません。また、外国人の避難者がいた場合は、言語はもちろん、宗教上の禁忌事項(食事など)にも配慮が必要となると思われます。

避難所では、お子さんの動向にも配慮が必要となってきます。大人同士であれば見ず知らずの人であってもそれなりに会話ができると思いますが、避難所に連れてこられたお子さんは、知らない大人に囲まれて心細さがどんどん増しているはずです。お子さんの不安感や緊張感を刺激することなく、なるべく年齢の近いお子さん(一番いいのは同級生)に接触させるなど、大人から子供への気遣い、心配りも忘れずに。

…といった内容が研修の中で議論されましたが、これはあくまでも一端であり、いざとなると、これ以外にも想定されないような様々な事案が同時多発的に起こります。一例を挙げると、避難者に紛れた不審者や部外者の侵入をどう防ぐか。こういったことを一人で悶々と考えるのではなく、あらかじめ想定されるケースを皆さんで議論したうえで、相応の運営指針等を策定することも選択肢の一つと考えます。

また、これは何も学校に限ったことではなく、公民館や集会所といったところでも同様のことが言えますので、これを運営する皆さんや地域住民の間であらかじめ議論する機会があってもいいと思います。

そして、自主防災組織やNPOといった支援活動を行う団体や組織とも、万が一に備えてあらかじめ意思の疎通を図っておくことが大切ではないでしょうか。(そういった団体や組織に参画することで、運営に関わる立場となることもあるわけで。)

今回は「避難所を運営する側」の立場から少し考えてみましたが、先に触れたとおり、数々湧き上がる「問い」に対する「これが正解」という答えはないと思います。強いて言えば、「皆さんの命を守るのが使命です」というのが「正解」でしょうか。

最終的に避難所の運営を行うのは学校でも役所でもなく、あくまでも避難者同士で行うことが必要となってきます。逆に「避難する側」の皆さんもこういった認識や心構えをあらかじめ備え持っておくことで、避難所における一定の秩序が計られるかも知れません。

しつこいですが、こういったことは起こらないのが一番なんですけどね。