日別アーカイブ: 2011-02-04

(財)日本相撲協会と公益法人化

ここに来て、財団法人日本相撲協会が再び大きく揺れている。暴行、大麻、野球賭博に続き、これまでも噂されてきた八百長疑惑で決定的な証拠が出たため、春場所の開催にまで影響を及ぼしそうな勢いだ。

ところで、日本相撲協会は「公益財団法人」への移行を目指している。
制度改正により、平成20年11月末時点で存立していた財団法人・社団法人は、「特例民法法人」という扱いになり、平成25年11月末までに「公益法人」あるいは「一般法人」のいずれかへの移行手続をしなければならず、もしこの手続が為されなかった場合は、法人は自動的に解散、ということになる。財団法人である日本相撲協会は、税制優遇等の恩恵を受けることができる「公益財団法人」を目指している。仮に「一般財団法人」への移行となった場合は、ある程度自由な活動が認められる一方、収益や基金の運用利息などが課税対象となる(つまり一般企業とあまり変わらない)。

公益法人への移行に向けては、内閣府に設置されている「公益認定等委員会」に諮問され、委員会は申請内容を審議し、定款の変更の案が公益法人法並びにこれらに基づく命令の規定に適合しており、かつ公益法人認定法第5号各号に掲げる基準に適合していること、認定法第6条の欠格事由に該当しないこと、そして旧主務官庁の監督上の命令に違反していないことが認められれば、認定基準に適合している旨の答申を行い、それを踏まえ、行政庁が申請法人についての認定処分を行うものとなっている(ちなみにこの組織のトップは蓮舫大臣)。

どんな認定基準があるかというと、

一  公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること。
二  公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること。
三  その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。
四  その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。ただし、公益法人に対し、当該公益法人が行う公益目的事業のために寄附その他の特別の利益を与える行為を行う場合は、この限りでない。
五  投機的な取引、高利の融資その他の事業であって、公益法人の社会的信用を維持する上でふさわしくないものとして政令で定めるもの又は公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある事業を行わないものであること。

…などなど、全部で18項目が法律には列挙されている。

そこで一つ大きな鍵を握るのが、旧主務官庁たる文科省ということになる。文科省は日本相撲協会に対し、財団法人としての資格取消もちらつかせているが、現在の監督官庁という立場にあることから、大なたを振りかざす権限を有している。つまり文科省が監督上の命令を発し、日本相撲協会がそれに従わなければ、その時点で公益財団法人への道は、事実上閉ざされるということになるのだ。
日本相撲協会に対しては、文科省も監督官庁としてこれまで立入検査等を行ってきているはずなのだが、さすがに八百長までは監督の範疇ではなかった、ということだろうか。

しかし笑えたのは、ネット上での意識調査で、今回の八百長疑惑がどれほどの驚きを与えたかというお題があったのだが、半数以上の人が「全く驚かない」と回答していたことだった。裏を返せば、何を今更…といったことなのだろう。

放駒理事長は八百長メール疑惑が発覚した当初、「これまでなかったことであり…」と苦々しい表情を浮かべながら発言をしていたが、これだって見ていても、確かに何だか興醒めするような内容だった。むしろ「すいません、実はやっていました!」と認めた方がスッキリしたのだろうか。

今回は一部の人たちの関与が発覚したが、彼らの思いつきで八百長が始まったとも考えにくいところもあり、やはり古くから慣習的に行われていた、と見るのが当たり前のような気がする。
まぁそうなれば相撲そのものがいわゆる「ガチンコ勝負」ではなく、一部の取組については最初からシナリオのある出来レースだった、ということにもなりかねない。しかし、指南役とされている力士については事細かな取組指導をしていたようで、考えようによっては凄い脚本家のような気も…。

相撲の八百長そのものが何故悪いことなのか、と疑問を呈する声も少なくない。実際、7勝7敗で千秋楽に臨んだ力士が、既に勝ち越している力士を豪快に投げ倒し、なんでその相撲を今まで取れなかったんだろう、というシーンを見たことがある人もいるのではないだろうか。八百長がファンへの裏切りだ、と怒りの声を上げる人もいるが、問題はそこに金銭授受があったということなのだろう。

以前、八百長を告発した週刊誌を相手取り訴訟を起こし、多額の賠償金を受け取っていた日本相撲協会。その賠償金の一部が、八百長相撲の原資になっていたのかも知れないと思えば、笑うに笑えない。

今回名前の挙がった力士の中で少なくとも野球賭博で謹慎処分を受けた者については、調査が明らかになった時点で、より厳罰に処されるべきだろう。
「日本相撲協会」がもはや外人力士を多数抱える「世界相撲協会」となっている昨今、財団法人であり続け、国の恩恵を受けることは、もはや時代にそぐわないということだろうか。

この際、ここは膿を出し切った後に、思い切って協会自ら財団法人を返上するぐらいの気概をもった方がよいのかも知れない。相撲道で飯を食ってきた人たちだけで物事を考えたところで、それ以上の話が出るはずがない。いくら外部委員を入れても最後にはその意見に耳を貸さないのだから、もはや手の打ちようがない。

なので、このあたりで神事としての大相撲を返上し、女人禁制解除となった土俵上では、両国が生んだ女性相撲アイドル「RGK48」のステージに始まり(というか女人禁制といいながら、委託業者の清掃のオバちゃんが土俵の上を箒で掃いていたという話を聞いたことがあるんだけど)、取組前には、出場力士によるボール投げならぬ塩の入った「厄除け袋」投げ。
これまで福祉相撲や巡業で行っていた初っ切り、相撲甚句ももちろん披露し、毎日が「エンターテイメント」化。取組のマンネリ化を解消するため、相部屋対決も当たり前に行う他、怪我を減らすために15日間のうち幕下以下の力士よりちょっと多い9日程度の星取で優勝を決定する
こととして、取組のない各国の力士はそれぞれ母国料理を振る舞う茶屋を開設。
大相撲春場所ではなく、大相撲春のショー!それはそれで楽しそうだけど。…って、不謹慎ですかね。

あ…公益法人化の話と全然ずれちゃいましたね。すいません。