日別アーカイブ: 2009-01-09

派遣労働と出稼ぎ労働


先日、総務政務官が年越し派遣村(そもそもこの言い方にも違和感がある)に集まった人たちについて、「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まってきているのか」とを発したことについて騒動になった。結局本人が発言を撤回し、収拾を図ろうとしたが、一度口から出てしまったものを撤回することは、そう容易いことではないようだ。

職を失い、家を失った派遣労働者たちにとって、年越し派遣村は数少ない拠り所であったのだが、本当にそのような派遣労働者だけが集まっていたのかといえば、
総務政務官の言うとおりちょっと疑問なところもある。もはやホームレスであることを生業としている人たちや、騒動に便乗したエセ派遣労働者も多く含まれていたことだろう。

かつて津軽地方では、冬期間になると関東や中部、関西地方への出稼ぎ労働者が多数いた。今でこそ労働の需要と供給のバランスから、出稼ぎ労働者の数は激減しているようだが、昨今の派遣労働の仕組みは、短期集中雇用という点では、出稼ぎ労働者の雇用形態ときわめて近いような気がする。というか、出稼ぎ労働に変わって登場した一つの労働体系が、派遣労働なのだと思う。

両者が異なるのは、出稼ぎ労働者は春になると地元に戻り、リンゴの受粉や田植えに精を出すが、今の派遣労働者には戻る場所がないし戻るお金もない、ということだろうか。そしてもう一つ大きく異なる点は、出稼ぎ労働者は肉体労働に精を出し、多額の収入を得ることができたが、今の派遣労働者はその日暮らし程度の収入しか得られないということだろう。
ただ、出稼ぎ労働については、儲けたいという思いから出稼ぎに行くのではなく、家族を養うため、生活を守るための手段だったはずだ。要するに出稼ぎも一つの生業だったということだ。一方の派遣労働に目を向けてみると、その雇用形態や労働者の生活状況を見る限りでは、生業と呼ぶにはほど遠いような気がする。

ところであの政務官の発言は、本当に失言だったのだろうか。
このことを巡ってはネット上でも多くの議論が飛び交っているようで、タバコを燻らしながら炊き出しに向かう派遣労働者(なのかホントに?)の姿が放映されていたこともあり、政務官の失言(発言)を支持する声も多いようだ。

確かに、彼らが本来の意味からするところの「失業者」なのかといえば違うような気がする。
失業とは、仕事を失うことおよび働く意思も能力もあるのに仕事に就けない状態を指す。(出典:Wikipedia)

政務官が言わんとしたことは、「仕事を失ったのに働く意志もなく年越し派遣村に集まっているような連中は、失業者とは言えないし、生きるための自立心をしっかりと持ってほしい。」ということなのだろう。本質的に「失業」の意味を捉えるならば、今回の政務官の発言は必ずしも「失言」ではないような気がする。ただ、残念ながらマスコミは、断片的な部分を報道するが、全体像を報道しない。なので、派遣村でタバコを燻らしながら炊き出しに群がる人も職探しをしない人もごく少数だったのかもしれないが、そういったマイノリティばかりに注目が集まってしまった結果、「何もしない派遣労働者め…」的な敵対心を抱かれてしまったことにも、本気で職探しをしている派遣労働者にとっては歯痒いところではないだろうか。

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