日別アーカイブ: 2012-11-22

10年前、2002年11月21日、札幌での出来事。

てっきりなくなっていたと思っていたデータが、以前利用していたサーバーにまだ残っていました。

今からちょうど10年前、札幌での出来事。一生忘れられない出来事。
当時書き上げていた修士論文より読み応えがあると思っています(笑)。


11月21日(木)。緊張と興奮からよく眠れぬまま、その日の朝を迎えた。天気予報は「雨のち雪」。天気図の狭まった等圧線が西高東低の天気を示している。風が強いため、濃霧による欠航ということはなさそうだ。これから青森空港へ向かい、空路札幌入りする。外に出ると、やや強めの雨が降っていた。弘前から10時15分発の空港連絡バスに乗り、一路青森空港へ。空港へ近づくにつれ、雨は大粒の雪に変わっていた。

11時15分ごろ空港へ到着すると、出発ロビーには人が溢れ返っていた。この光景、東北新幹線が八戸まで延伸してもほとんど変わらないのではないだろうか。青森から新千歳へ向かう便は、新千歳からの折り返しとなる便なのだが、到着が遅れたため12時15分離陸の予定が、12時20分になるというアナウンスが流れる。「何てこった…」。はやる気持ちを抑えきれず、手荷物検査場へ急ぐ。

「キンコ~ン」。

お約束のように金属探知機が鳴る。僕が飛行機を利用する3度に1度はかならず反応が出るのだ。「恐れ入ります。時計、カギなどお持ちでありませんか?」思わず「金ならここに」と股間に指差ししそうになる。こんなところで冗談言ってる場合じゃない。とにかく急いでいるのだ。

結局ベルトが原因とわかり、無罪放免。搭乗待合室から外をみると、降り出した雪がどんどんあたりを白くしていくのがわかる。「やばいなぁ。離陸できるのかなぁ」一抹の不安が頭をよぎる。「お待たせしました。札幌便ご搭乗の方は2番ゲートへお進みください」ゲートをくぐり、機内へ向かう。ふと外を見ると、物凄い数の除雪車が出動中。

「いやな予感…」

やはり僕の嫌な予感は的中した。2500メートルの滑走路に一気に積もった雪を除雪する作業のため、離陸が12時45分頃になるという。機内は、7割方席が埋まっていた。気がつくと、僕の足は小刻みに貧乏ゆすりを続けていた。

そして12時45分、「時間どおりに」離陸―

新千歳空港までの所要時間は離陸から約30分少々である。この日、僕の悪い予感はことごとく的中。天気が悪いので揺れるだろうと思っていたら、着陸体制に入ったとたんガガガガァと激しい揺れに見舞われる。あとは無事着陸することを願うしかない…と思ったら、あっけなく滑走路に滑り込んだ。まさかバス移動では…と思ったら、予想通り飛行機は直接ターミナルに向かわず、バスで移動する羽目となった。「ま、しょうがないか…」

とりあえず到着した旨を札幌在住のD君に携帯電話で伝える。ここから札幌までは、JRを利用する。聞くと現在15分間隔の運行。時計を見ると、次の出発まで5分を切っている。ここでの15分はあまりに痛いと考えた僕は、なりふりかまわず新千歳空港駅へ向かうエスカレーターを駆け下りた。2分前に無事乗車、ラッキーなことに一人がけの座席を発見し座る。あとは、札幌に到着するのを待つばかりだ。

35分後札幌駅到着。出迎えてくれたのは一面の銀世界だった。路面は早くも凍結状態で、すっかり冬の装いである。僕が宿泊したのは札幌駅前にあるTホテル。12月14日で諸事情により閉館のこのホテル、インターネットで偶然5,000円であることを見つけ、即決したホテルである。とはいえ実は札幌のホテル事情はかなり良好で、ここより安くて新しいホテルがあるのを知ったのは、帰宅してからだった。

シングルなのにツインの部屋を用意してもらい、少しくつろぐ。前日、ちゃんと眠れなかったために睡魔に襲われるが、D君との待ち合わせ時間が迫っていたために部屋をあとにする。外気がキンキンに冷えることを「しばれる」というのだが、札幌はバッチリ「しばれ」ていた。

D君と合流し、北海道厚生年金へ向かう。ボジョレーヌーボー解禁日ということで、時間潰しのためにとD君がボジョレーを持ってきてくれたのだが、結局最後まで飲む機会はなかった。いや正確に言うと、2人とも約10年ぶりに彼のライブを堪能できるとあって、クールを装ってはいるものの内心バックバクで、それどころではなかったのかもしれない。

約20分近く歩いたのだろうか。まもなく厚生年金到着、と思ったその時、ふと目をやると、厚生年金の隣にあるホテルRの裏口に、「リムジン(もちろんキャデラック)」が停まっていた。ひょ、ひょっとして?と思わず二人とも足を止める。と、助手席に黒人(あとでPrinceのボディガードであることを知った)を乗せたそのリムジンはこちらに向かってゆっくり動き出し、ホテルの支配人や社員の方々が深々と頭を下げる。「こ、これってPrince乗ってるのか…?」と思ったその時、黒のスモークガラスの向こう側に、明らかに「彼」と思われる姿が。「お、おぉぉぉ!!」と思わず奇声を発する二人。意味もなく手など振ってみるが、全く反応はない。本当にすぐそこまでの距離なのに、なぜか信号で停止したりして、意外とゆっくりしたスピードで進んでいるため、すぐに追いつく。しかし、何もできない二人。結局そのまま、隣の厚生年金裏口にゆっくりとリムジンが消えていった。

15時30分頃厚生年金に到着すると、約30名ほどのNPGMC会員が既に列を作っていた。さすがに会場外では風邪をひいてしまうという配慮からか、既にロビーで待つ段取りが整えられていた。名前を告げ、封筒を貰う。ふと脇には、都はるみや角松敏生、さらにはワハハ本舗の公演ポスターが貼られていた。こういう会場でPrinceがライブを行うということに関しては、二つの考えが浮かぶ。一つは、観客動員が落ち込んだために、致し方なく会場を狭くしたこと。もう一つは、敢えて狭い会場にすることで、ファンとの距離を縮めること。実は来日前まで僕は、前者の考え方だったのであるが、東京での各公演、浜松での公演内容を知るうちに、Princeは明らかに後者の考えを持って公演に臨んでいることを確信していた。座席表に目をやり人数を数え、自分の座席がどのあたりになるのかを計算。これから起こる10年ぶりの再会に心躍らせながら、静かにその時を待つ。

スタッフの事前説明によると、ステージ上椅子が並べられてあるので、順番に座ってもらい、そこでサウンドチェックを楽しんでもらうということ、ステージ上からメンバーが下がるまで、椅子を立たないで欲しいということなど、いくつかの注意が与えられる。そして16時30分頃、突如ホールのドアが開く。順番に入場