日別アーカイブ: 2015-11-13

デジタル社会の中で見つけた「共感」

最近思うことがある。
ありとあらゆるものが電子化されている昨今、媒体ツールの統一化は図れないものなのだろうか、と。

交通系ICカードと呼ばれるSuicaやPasmoなどは、相互利用サービスがかなり進んでおり、一つのアプリを登録しておけば全国各地で利用できるということで汎用性が高い一方、電子マネーについてはそれぞれの母体の思惑が見え隠れしていて、かなり複雑な構図となっている。(例えば7ではWが使えないとか、コンビニでも利用できる電子マネーが異なるとか。)

まあ、こればかりは競争原理の働くこの社会にあって、一本化などということを考えること自体がナンセンスなのだろうけれど、何でもかんでもアプリにしてインストールすればいいというものでもなく、利用頻度によってカードとアプリをうまく使い分けしなければならないな、なんてことを思った次第。

電子マネーはさておき、もう一つ何とかならないかな、と思っているのがいわゆる電子書籍。インターネット通販大手のA社もR社もそれぞれ電子書籍を読み込むための独自のリーダーを提供しているほか、それ以外にも電子書籍用のリーダーアプリが色々出されているが、相互の互換性がない電子書籍がたくさんあるようだ。

最近、出版業界では不況が続いているだとか、本が売れずに困っているだとか、関係者の皆さまはお嘆きのようだが、実は、発行部数は年々増加の傾向を辿っている。その一方で売上げが低下しているという現状を、どう評価すればいいだろうか。

僕は思う。要するに出版業界が、「売れない書籍」を発刊し続けているだけの話ではないだろうか。

僕は学生時代から新書を好んで読んでいたけれど、最近では読む気も失せるような軽々しい「新書」が増え過ぎている。ウソだと思うなら書店に足を運んでみて、「新書」コーナーを覗いてみればいい。「よくもまあこんな内容で新書にして発刊するものだな」と思わず目を疑うようなタイトルの書籍が、時々平積みになって置かれているから。正直申し上げて、そんな書籍こそ、紙ではなく電子書籍化すべきなのではないかと思う。

先程申し上げた発行部数の増加に関し、集計上は電子書籍が含まれていないため、恐らくとてつもない数の「書籍」が毎年発刊され続けていることになるのだろう。

CDが売れないと先鞭をつけた音楽業界も、抜本的な構造の変化に気づいているかどうかは知らないが、CCCDの発売やレンタルへの締め付けなど色々やらかしておきながら、未だにCDの売上げ向上に躍起になっているようにも見て取れる。いや、それを全否定するつもりは毛頭ない。ただ、デジタルミュージックが席巻する今日、質感が失われたデジタル化の波は、何とは言えないがゴミにもならないようなチープな生産物を、これから先も吐き出し続けて行くのだろうか。そしてその後塵を拝していることに、出版業界は気づいているのだろうか。(一時期話題になった「自炊」なんていうのは、出版業界と購読者のギャップを示した最たるもののような気がするのですが。)

プリンスは今年のグラミー賞の壇上でこんなメッセージを残した。
Albums, Remember Those? Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter.
アルバムって知っているか?アルバムは大事だ。本や黒人の命のように、アルバムは大事なんだ。

もっとマテリアルな、質的な部分を大切にしよう。黒人の命同様、書籍やアルバム(CD)は軽々しく扱われるものではないという彼のメッセージは、深い含蓄のある発言として話題になった。

…なーんていつになくちょっとマジメ論調で書き綴ってみたが、そんなデジタル社会の中で、面白い電子書籍を発見。って、オラもどっちだんずや。

いや、またランニング関係のネタで申し訳ない。日本経済新聞の記者が御自身のランニング体験を綴った「ランナー集まれ」という書籍。
不定期コラムとしてHPにも掲載されており、ご覧になった方も多いのではないかと思う。ところが、A社のKストアでは配信されておらず、たまたまインストールされていた別のリーダーアプリ内で販売されているのを発見、折しも1,000円分の無料クーポンがあったということで、続編として配信されているシリーズ3までをまとめて購入、電車の中で読み耽っている。

何が面白いかというと、著者自身がランナーであること(ただしエリートランナーとかではなく、サブ3.5ランナー)、そして、大会に出場する際のその目線や分析が、何となく僕自身がレースを終えた後に投稿する内容と似ていて、同じ匂いを感じること(ただし、走行距離や持ちタイム、そのストイックさは、僕とは格段に違います。)。なので、例えばレース中に起きたトラブルやレースの後の心境など、まさに「あーわかるわかる!」といった内容で、「ランナーたるものこうするべき。ああするべき。」といった、いわば「先駆者」による指南書的な内容とは全く異なる。

惜しむらくは、無駄に画像が多いこと。しかもたった1行で改頁された後にその画像が出てくるものだから、ちょっとゲンナリしてくる。更によく見ると、何度も同じ画像を使い回しているようにも見える。

それでも、著者が国内外のマラソン大会、更には100キロマラソンに出場した際のことなど、記述されている内容はまさに「ランナーあるある」といったものなので、内容が気になる方は、まずはWeb上から「ランナー集まれ」で検索、日本経済新聞のコラムを読まれることをお勧めします。というか、それを読み続けていれば、別に電子書籍を購入する必要はないと思うんだけどね…。

ということで、明日の移動の新幹線でのお供が決定しました。

ランナー集まれ 40代記者、マラソンに挑む