日別アーカイブ: 2009-05-07

「わさお」と呼ばれている秋田犬

鰺ヶ沢町に、「ぶさかわいい」と言われているちょっと人気の犬がいるというので、ドライブのついでに見てきた。

その名は、「わさお」という。メレ子さんという関西の方が名付けたらしい。

「わさお」は普段、菊谷商店という鰺ヶ沢名物イカ焼きを販売する店にいる。
菊谷商店にはその昔、フラミンゴが現れたことがあった。この店、どうも「おかしな生き物」を集める力を持っているらしい(笑)。
菊谷商店の前の道路は、元々夕暮れ時は特に混雑する通りなのだが、GW中ともあって混雑は一層激しさを増していて、さらに「わさお」を見るために多くの車がイカ焼き屋の前に停まっていた。
ちょうど僕らが到着した時間は、「わさお」が散歩を終えて帰ってきた時間だったらしく、飼い主の菊谷のオバちゃんが「わさお」を連れて帰ってきた。


わさおに群がる人たち。「わさお」はそれに臆することもなく、菊谷のオバちゃんに引かれるがままに、多分、急に人気が出たことにより急造したと思われる柵の中へと収まった。
柵の中の「わさお」は、なんだか寂しそうに日本海を眺めていた。


夕方にもかかわらず、10人以上の老若男女が、一目でいいので「わさお」を見ようと集まっていた。
菊谷のオバちゃんが小声で「今日ダバ、ホントに疲れでまったじゃ」と呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。オバちゃんも表面上はニコニコしているが、本当は疲労困憊なのかも知れない。
犬の生態を知っている人なら常識かもしれないが、犬は普段、大体半日以上を睡眠に費やす。
こんなに人気が出なければ「わさお」も、のんびり潮風を受けながら昼寝をするという、ある意味羨ましい平穏な日々を過ごしていたことだろう。
一気に全国区に名を知られるようになった「わさお」は、寝る間も惜しんで見知らぬ人に愛想を振りまいている。

このブームは、多摩川に出没したタマちゃんの時に似ている。そのうち「わさお」の歌なんていうのも出るかもしれない。
だから、ある程度時間が経てば、きっとブームも一段落することだろう。みんなが忘れた頃に、「わさお」にもう一度会いたいと思った。

「わさお」の表情から汲むことはできないが、自分の周りの環境がガラリと変わった今のこの「わさお」人気は、「わさお」にとっても、相当なストレスになっているだろう。柵の中に同居するチビ(別名「ダンディ」と名付けられた)も、はた迷惑そうな顔をしながら、わさおの小屋に入っていった(おいおい)。





でも、「わさお」のホントの名前は「レオ」という。
「オバちゃん、ホントはわさおじゃなくてレオなんだよね。」
たまたま隣にいた菊谷のオバちゃんに小声で話しかけると、ニヤニヤしながら小さく頷いた。
今日「わさお」を見に来た人たちの中で、彼を「レオ」だと呼ぶ人は、誰もいなかった。

帰り際も、子供たちが、「わさお!わさお!」と呼んでいた。
いわば客寄せパンダになっている「わさお」。菊谷商店の商売には好影響を与えているのかもしれないが、少なくとも隣のイカ焼き屋は、閑古鳥が鳴いているような雰囲気だった。

好奇心から「わさお」を見に行ったが、「わさお」と呼ばれる「レオ」にストレスを与える一助になってしまったのかな、なんてことを考えたら、ちょっと切ない気持ちになってしまった。

でも「わさお」君、鰺ヶ沢町の盛り上げ役、もう少しだけがんばってください。