言い訳を ゴール手前で 考える - のりを
原稿用紙約12枚の世界へようこそ。今日もだらだら長文、スタートです。
—
前々から話していることではありますが、僕にとって「弘前・白神アップルマラソン」は、生まれて初めてフルマラソンを完走した大会であり、地元開催の大会ということで、地元を盛り上げるという意味での御恩返しの場と位置づけています。これは、亡父が生前アップルマラソンの運営側に関与していたことも一端にあります。まあ、早い話が違った形で父と同じように大会に協力したい、という思いがあります。
今回は2年ぶりのペースランナー、それも4時間。やる以上はちゃんと役割を果たさなければならないという思いから、大会3日前からアルコールを抜き、2日前からカフェインを抜いていたはずなのに、前日の昼にうっかりランチでコーヒーを飲んで後悔するなど、普段の大会とは違う緊張感に包まれていました。
ちゃんとペースを保って走りきることができるだろうか。途中で挫折しないだろうか。果たして、どれぐらいのランナーの背中を後押しすることができるだろうか…。
普段、4時間を切って走るのは当たり前なんだから、4時間なんて楽勝でしょう、とおっしゃる方もいます。
しかし、逆に普段走り慣れないペースで、しかも一定のペースを保ったまま42.195キロを走るのって、正直かなりキツイものなのです。
遡って、大会前日は仕事のため普段通りの始動。朝練に参加できず、6時30分過ぎの電車で青森へ向かい、そこから車でむつ市へ。夕方16時30分前には弘前市へトンボ返り、17時からの前夜祭へ参加。
ペースランナーの紹介も兼ねてコースの見どころ、留意点などについて一言ずつコメントを求められ、15キロ地点のコースが若干変更となり、折り返し地点が少し遠くなったことをお話しさせて頂きました。
その後、憧れのランナーでもある吉田香織選手と念願の記念撮影。
「明日、頑張ってくださいね!」
キラキラした表情で声を掛けてくださる吉田さん。
「じ、じ、自己ベスト目指してが、が、頑張ります!」 (←仕事を忘れている)
迎えた大会当日は、絵に描いたような晴天。暑くなることを確信。
7時30分には会場に到着、準備を始めます。
直前に急遽用意されたヘリウム入りの風船を背中に付け、集合写真を撮影したあと、いよいよスタート地点へ。
「目標:4時間」のラインに並び、後ろを振り返り、「よろしくお願いします。」と挨拶。
その後、周囲にいる人たちに聞こえるように、大体5分40秒前後のペースで走ること、最後は我々の前を走って欲しいことなどを伝え、勢い余って「頑張るぞ!」と声を上げたら「おー!」と気勢が返ってきました。みんな気合い充分です。
9時にスタートし、入りの1キロからほぼ5分40秒と安定したペースを刻んでいきます。オバラさんが後方から支援に回り、僕の隣にはカズヤさんがいて、3人のペースランナーで一団を引っ張っていく感じ。5キロ手前の給水ポイントで係員がビックリするぐらいでしたので、相当数の一団になっていたようです。
しかし、この辺りから我慢できなくなり、我々の先へ前へと進む人が徐々に出始めます。
(頼むから、あとでうちらに拾われないことを願います…。)
ランナーの背中を見ながら心の中で念じつつ、ポイントではコースの注意点を伝えます。下りで飛ばさない、緩い上りだけど我慢して、給水ポイント近いよ…などなど。この間カズヤさんは、1キロ毎のラップタイムを私に伝えてくるのですが、距離表示の場所が若干ずれているところもあり、正確なタイムを取るのが難しかったです。
それでも、中間地点までのラップを見ると、多少ペースの誤差があったとはいえ、概ねターゲットのペースで進んでいたようです。折り返しを終えて先行する仲間のランナーを見るとテンションが上がってペースも上がるのですが、そこはちゃんとカズヤさんと牽制しながら、ペースを抑えます。折り返しで後方からくるオバラさんとの距離がどれぐらい空いているかを計りながら、西目屋村の中間地点通過は、わずか30秒のアドバンテージ。
ここでカズヤさんに先導をお願いし、やや距離を置きながら、底上げに回ることにしました。
しかし、ここで僕にピタリと付いていたランナーにそのことを伝えるのを忘れたため、突然ペースダウンしたり、かと思うと一気にペースを上げたり急に立ち止まったりする僕の走りに、かなり戸惑った人もいたようです。本当に申し訳ありませんでした。
28キロまでは下り基調なのでペースが上がるのはやむを得ないことと思っていましたが、旧道へと左折するポイントで、一人のランナーが倒れているのを確認。近くで声援を送る方が困った表情で電話をしようとしていたため、見るに見かねて一度足を止めました。まずはその方の状況を確認したところ、反応は返ってきますし、自力で起き上がることも何とか大丈夫みたいです。どうやら熱中症と思しき症状のようだったため、少しでも日陰に移動することを勧め、声援を送る方が持参していた水を頂くよう指示し、再びコースへ。
この間、ロスは30秒もなかったと思いますが、再びペースを上げてランナーを鼓舞し、先を走るカズヤさんの風船を確認。
(風船って結構目立つんだな…。)
29キロ過ぎまで緩い下りが続いていたため、再び上りに差し掛かるポイントで立ち止まり、駆け抜けるランナーへ「ここ、踏ん張りどころ!バス停まで我慢!」と声を掛けます。
しかし実はこの時、自分の身体の中に異変が発生。
(うう…これ、最後までおしっこ我慢できないな。)
前半の向かい風で少し身体を冷やし、折り返した後の追い風で暑さを感じるという環境の中、身体のコントロールがうまくできなかったようです。
30キロの給水ポイントでこっそり風船を隠してコースから離脱、仮設トイレへ駆け込みます。ここで、知り合いのランナー数名と遭遇し、ここでリタイアする旨を耳にしました。
(やっぱり今日、きついんだ…)
昨年も暑くて苦しい大会でしたが、今年もそれに匹敵するぐらい大変な状況でした。そりゃそうだ、この時期の予想最高気温が26度って、ちょっと暑過ぎです。大体、数日前は最高気温が15度を下回って暖房に火を入れたぐらいなんですから。
予想していたことではありましたが、31キロを過ぎた辺りで、僕に付いてくるランナーはほとんどいなくなりました。
ここからは、落ちてくるランナーを「拾っていく」(ハッパを掛ける)作業。
「お願いします、引っ張ってください…。」という方が、数名。中には足が攣ってしまい、緊張状態が切れた(走る気力が萎えた)と思しきランナーも。併走するランナーの表情を伺いながら、ちょっと呼吸が苦しそうだな、注意力が散漫になっているな、走りに集中できていないな、歩きたがっているな、といった感じで、周囲の状況を見ていました。
そんな中、36キロ付近で前を走る一人のランナーをロックオン。時計を何度も気にしながら、明らかに注意力が散漫になっていて、でも4時間以内にゴールしたい!と、もがき苦しんでいるランナーは、ヒロミさん。弘前公園RCのメンバーですが、人知れず練習熱心な彼女とはいえ、まさかここまで頑張って走るとは、正直思ってもいませんでした。(ヒロミさんごめんなさい。)
スゥッと横に付いた際に、一言二言声を掛けます。何も考えるな。時計も見るな。そして、背中を追いかけてきて、と。
こちらが声を発すると返事をしたくなるのが人の常。しかしここは走りに集中して欲しいということもあり、手だけで合図を送ります。
「ペースちょっと上げます、下げます。そのまま抑えて。」
そのまましばらくヒロミさんと数名を牽引。残り3キロと4キロを間違えるという凡ミスをやらかした後、時計を見たら、思ったほど余裕がないことに気がつきました。
下手をすると自分自身も4時間に間に合わなくなると思い、ちょっとだけペースを上げました。風も強く吹き付けてきます。ヒロミさんの姿が後方に少し離れたことは、すぐにわかりました。
(頼む…今の心を切らさないでください…。)
多少ペースを乱しつつも、周囲に大声を張り上げます。
「まだ大丈夫ですから、ここで自分を信じて!」
…これって、自分自身に対する鼓舞だったのかも知れません。
とうとう残り1キロとなりましたが、結局ペースランナー3人がまとまる気配はありませんでした。
そして、最後の坂を登り切ったところで、一度落ちかけたヒロミさんをはじめ、何人かが僕の背中を追ってくるのを確認。残り時間を確認し、多少時間に余裕があるのを確認した上でペースを下げ、残り500m。こちらも必死でかなりテンションが上がっていましたので、多分「ラスト!ラスト!」とか「4時間、行ける!行ける!」とか声を張り上げていたような気がするのですが、あまり覚えていません。(翌日になって声が枯れていたのは、それが原因だったようです。)
残り150mでようやくカズヤさんと合流、数名をゴールへと先に送り出し、ランナーを鼓舞しながら自分もゴールへ。
(ゴール後。テンション上がっています。)
タイムは3時間59分59秒。計ったようなタイムでしょう?そりゃそうです、計って走っていたんですから。
これにて今年もお役御免。無事サブ4を達成した仲間のランナー(もちろんヒロミさんも)と握手を交わし、ペースランナー同士でハイタッチ。
(オバラさん曰く「お遊戯」)
数名のランナーからは「お陰でサブ4達成できました!ありがとうございました!」と声を掛けて頂きました。
少しは大会の盛り上げに協力できたかな?
それにしても今回は、何だか本当に大変でした。2年ぶりのペースランナーということで、ちょっと気負っていたところもあったかも知れません。
ということで、今回の反省点を幾つか。
・個人的には、ほぼイーブンのペースで走るつもりだったのですが、折り返してから周囲に何も伝えることなく突然ペースを乱し、ランナーの皆さんにとっては全くもって迷惑なことをしてしまったと猛省しています。
・30キロ地点、まさかの尿意で一時離脱。ちょうど給水所で皆さんが足を止めたのを見計らってのこととはいえ、最後まで役割を果たせるように、事前に準備すべきでした。
・全般を通じて、あまり声を出せなかったような気がします。元気づけるはずが、途中から経過の時間ばかりを気にすることとなり、大したアドバイスもできずじまいでした。
・暑さや足の痛みなどで離脱したペースランナーもいましたが、そこは仲間で補完し合いました。
・一方で、事前にペースランナー同士でちゃんと打合せしておくべきでした。大会中に発生した予期せぬ「トラブル」も、こういった意思疎通が欠けていたからこそ起きてしまったのだと思います。
・正直、我々の中にも「もう3度目だから」という慢心があったような気がします。そんな心の隙を突かれたというか、綻びが一気に露呈した感じ。役割の重要性を改めて全員で認識すべきだったな、と。
・ただその「トラブル」、たった一人のペースランナーの暴走は、我々も制御することができませんでした。一緒に走っていた他のペースランナーが、「速過ぎる」と何度もお伝えしたのだそうですよ。だから申し訳ないけれど、この話にはこれ以上触れたくありません。ペースランナーは14人だった、ということにしようと思います。皆さん、すいませんがこちらでの抗議は一切受け付けません。
今回のことを機に、来年以降のペースランナーをどうするか、という議論があるかも知れません。せっかくここまで築き上げたのに…。
しかし、個人的にこの役割だけは、何としても続けて欲しいと思いますし、またペースランナーを務める機会を頂けるのであれば、幸甚の至りです。
改めて、第15回弘前・白神アップルマラソンに参加された皆様、本当にお疲れさまでした。
あの暑さの中で果敢にチャレンジし、しっかりと結果を出した皆さんはもちろん、残念ながら不本意な結果に終わった皆さんにも、最大級の賛辞と拍手を送りたいと思います。
思い通りに行かないのがマラソン。だからマラソンは面白いんですよね。
会場で「ブログ、楽しみにしています!」と声を掛けてくださったランナーの皆さんにも感謝です。ありがとうございます。(実はこれが一番ビックリした。)
もしよろしければ、来年もまた弘前にいらしてください。心よりお待ちしております!
皆さん、ナイスランでした!!