たけのこマラソン、心地よい汗
第18回平川市たけのこマラソン大会(大会実行委主催)が23日、同市の碇ケ関中学校グラウンドを発着点に行われ、県内外の1090人のランナーが初夏の爽やかな風を受け、緑あふれる山里のコースを快走した。
(平成25年6月23日付けWeb東奥)
夏本番を目前に控えた前半最後の大会。
先週の弘前城リレーマラソンの疲労は既に抜けていたし、右膝そして左ふくらはぎの快復具合もかなり順調で、体調面では何の問題もなかったのですが、今回はどうも自分のモチベーションというかメンタル面が今ひとつだったような気がします。
フルマラソンを何度も完走している選手ですら悲鳴を上げるというこの大会、心得ている人たちは皆、ハーフコースではなく10キロコースにエントリーするのだとか。
ついた別名が「ドMマラソン大会」。
ハーフマラソンのコースは林道のようなところを駆け巡り、コース全体の総高低差は400mを超えるというところが、通常のマラソンというよりはトレッキングに近いということを物語っています。
さて、今回我々弘前公園RCの面々も、男気…いや、ドMっぷりを見せつけようとハーフマラソンにエントリー。
事前にコースの下見をしたメンバーから「心折れた」との話を聞くにつれ、どれだけ凄い(酷い)コースなのか、ますます楽しみは膨らむばかりでした。
…がしかし、ここでトラブル発生。
何と、ランニング時に装着し、距離やスピードを計測していた時計の内部が結露し、大会前日にお払い箱になるという事態に見舞われてしまいました。
どうせ記録が出るはずもないので、ここは時計なしで挑んでみるか…。そう気持ちを切り替えてはみたものの、結果的には、客観的に自分のペースを把握することができないままレースに臨むことになってしまいました。
大会当日。
Oさんの車に同乗させて頂き、会場の碇ヶ関中学校へ。
この日の参加者は全体で約1,100名で、うちハーフコースへのエントリーは男性だけで237名と、これまでで最も多い人数だったそうです。ちなみに昨年は全体の参加者が約800名だったとのことですので、ここ最近のランニング熱を象徴する参加者数の増加と言えるでしょう。
手作り感たっぷりの大会で、葉書で送付された参加受付票のエントリーナンバーは手書き、コースを先導するバイクは地元のライダーと思しき方、しかもタイムの計測はチップではなくストップウォッチ、更にはコースの各所に配置されていたり受付のお手伝いをしているのが地元の中学生と、何か心が温かくなるような、そんな大会だった、のですが…。
コースについては冷血極まりなし。誰がこんなコースを考えたんだろう?と首をかしげたくなるぐらい壮絶なコースでした。
ハーフコースは9時30分にスタートし、弘前公園RCのメンバーも男性陣7名がこのコースに挑みました。
前半はずーっと上り坂。ひたすら上って上って、また上って…の繰り返し。沿道には応援の代わりに木々があるという光景が延々と続き、ようやく7キロ付近で折り返したと思いきや、当然のことながらそこからはひたすら下る、下る…の連続。
時計がないのでどれぐらいのペースで走っていたのかは全くわからないのですが、他のメンバーに言わせれば今回も「前半から突っ込み気味だった」とのことでした。これが後半に響くことに…。
どこをどう走っているのかもわからないまま、ハーフ中間地点付近で10時10分スタートの10キロコースの先頭に追い越されましたが、それは全く気にならず。
しかし、直後の10キロとハーフの分岐点を過ぎた付近で、遂に身体が悲鳴を上げはじめました。
ヘアピンカーブのように右折すると、そこに待ち受けていたのは、またしても上り坂。それも、かなりえげつない上り坂…。
…これで完全に心が折れました。
起伏に富んだコース、とは言いますが、ハッキリ言って実際のコースは、起が続くか伏が続くかいずれかでしかありません。
これまで幾度となく大会に参加していますが、初めて出場したアップルマラソン10キロコース以来、久し振りに足が完全に止まりました。
ああ、走ることがこんなに辛いなんて…と思ったその時、後ろから走ってきたランナーに声を掛けられます。
「ほれ!ガンバレ、足出せ、走るんだ!負けるな!」
悔しいんだけど、汗が出すぎて涙も出てきません。
何とか上りきろうと足を前に出しますが、先に進んでいきません。結局少し上った後、また足が止まって歩き出しました。
沿道で声援を送るおばあちゃん曰く「まだまだ上るよ、ほれガンバレ。」と、実に辛辣な応援(ちなみに沿道で声援を送っていたのは、どこもかしこもみんなおばあちゃんでした)。
「ウェーイ!!」
その時背後から聞こえてきた聞き慣れた声。
一緒にエントリーしていたTくんでした。
「このコース、超楽しい♪」
Tくんは、嬉々とした声を上げながら、軽い足取りで僕を追い抜いて行きました。
彼に何とか食らいつこうと、そこからしばらく距離を置きつつ彼の背中を追っていきます。
しかしながら、17キロ地点を過ぎて、彼の背中が徐々に遠くなるのがわかりました。既に平場に戻って来ていましたが、今度は川原の向かい風が、行く手を阻みます。
悔しさというよりも、自分に対する腹立たしさが沸々と。
ゴール手前にある古懸地区に入ろうとした地点で、誘導員が左の方を指していました。
左に折れると、またしても現れた上り坂…。
嗚呼。一体どれだけ坂があるんだこのコースは。
まるで胸にスピーカーでもついたかのように、心臓の鼓動がバクバクと大きな音を立てています。
乱れる呼吸。思わずここで3度目の歩行。
残り3キロを切ってもなお、こんな苦しい思いをさせられるなんて…。
もはやドMだ何だと笑い飛ばす気力すら残っていませんでした。
残り2キロを過ぎ、眼下にはゴールとなる中学校の建物が見えてきました。
嗚呼、もうこれで坂を上る必要はないんだ…。
残り1キロを切ったあたりで、前日の朝練で一緒になった、中学時代の同期のOくんから声援を送られます。ちなみにOくんは全体の6位だったとか…。
中学校のグラウンドに入った途端に蘇ってきた、道中での自分の不甲斐なさを今一度振り返りながら、結局1時間48分30秒でゴール。
自己ベストより10分以上タイムが開きました。これはこれで想定の範囲内ではありましたが、結果を見た瞬間、この差を縮めることができるよう、もっと「強い」ランナーになりたい。そう思いました。
ただ、ゴールしてから提供された「たけのこ汁」が実に美味く、そして、その後浸かった温泉のお湯が実に優しく、そういう点では本当に心が癒されました。コースはハードだけど、とても温かい大会です。
コースの下見をしなかったため、レース展開を事前にイメージできなかったこと、そして、レース中のタイムを把握することができなかったことなど、いろいろ反省すべき点があります(というか今回は、反省の弁しか出てきません)。正直言って、かなり悔しいです。不甲斐ないです。
ただ、自分自身の中の弱点が多少見えたような気がしますし、ここ最近何となく立ちはだかっていたような気がしていた「壁」がなんなのかも、朧気ながらわかったような気がします。
このままだと10月のアップルマラソンは、いよいよフルマラソンにエントリーすることになるかも知れません。しかし、これでは全然ダメ。エントリーする資格すらないということを痛感させられました。
その前にクリアすべきこれらの課題を一つ一つ乗り越えるためにも、これからまた練習に励まなければ、と感じました。
今はまだあのコースを再び走ろうという気にはなりませんが、「完走=完全に走りきる」ことができなかったという点においては、どうやら林道の中に落とし物をしてしまったようです。心技体を完全な状態にして、来年また、その落とし物を拾いに行きたいと思います。
僕にとって初めて口にした碇ヶ関のタケノコは、ちょっと固くてほろ苦かったです…。