今から30年以上も前、弘前市中心部にある土手町といえば、弘前が商業の町であることを誇示するかのように店が建ち並び、土日ともなれば、歩道にはすれ違うのもやっとなぐらい人が押しかけていた。いわば津軽地方随一の繁華街だった。幼かった僕にとって、土手町に出かけるというのはちょっとしたステータスであり、その時で一番いい格好をして出かける、そんな一大イベントだった。
やがて時は流れ、車社会が到来。郊外には金太郎飴を切り分けたようなショッピングモールが乱立、人々の流れは市中心部から遠のいていった。
ある人の話。
土手町を歩いていたところ、県外客から「すいません、弘前の繁華街はどこですか?」と聞かれたそうだ。何とその人は、「すいません、私も県外から来たものですから…。」と言葉を濁し、その場を逃げるように後にしたそうだ。
これが現実なのだろうか。頑張ろうとすればするほどもがき苦しみ、そして津軽固有の希少種であるアシフパリが現れる…。
まさに栄枯盛衰。土手町からも一つ、二つと店舗が消え、やがて車社会を象徴するように、楔を打ち込んだような幅の広い道路が町を分断、電線地中化により雪よけとなっていたアーケードは損なわれ、利便性を追求した代償として、土手町は更に空洞化が進むこととなった。
弘前市土手町にある弘前中央食品市場。
他聞に漏れずここも、かつては各地からやって来た人たちで溢れかえっていた。多くの人たちが行き交い、賑やかな声が飛び交う市場だった。
やがて時代は過ぎ、市場内は空き店舗が目立つようになった。気を吐いているのは入り口横にある「大学いも」の店。
中を進むと、果たしてこの人たちはモノを売る気があるのか?と疑いたくなるほど覇気がなく、言い方は悪いが、ただモノを並べているだけ、と思いたくなる光景が目に広がることもしばしばだった。
そんな中、この弘前中央食品市場の空きスペースを利用した新たな取組が9月からスタートする。
それが、「ボヌール」だ。
仕掛け人の高橋氏。実は、僕の妻の妹のご主人。早い話が義妹の旦那さん、ということになる。
高橋氏は、弘前を良くしたい、もっと活気ある町に戻したいという思いが人一倍強く(少なくとも僕の比ではない)、その思いが結実し、今回この「ボヌール」を立ち上げたというわけだ。
基本的には野菜と魚を販売する店。これではどこにでもある店だが、客層をある程度絞ったり、ちょっと他の店にはない仕掛けがあるらしい。それはまた、高橋氏の口から徐々に明らかになっていくことだろう。
ブログも立ち上がったようだ。
http://bonheur-uradote.tumblr.com/
個人的には今の郊外型店舗の乱立という流れはいずれ収束し、やがてまた原点回帰していくのではないか、つまり、中心商店街へ再び流れが戻ってくる日が来るのではないかと勝手に思っている。
理由は、高齢化社会の到来により、家の近所で買い物を済ませたいと思う人たちが増えることが予想されるからだ。
取って代わるモノとしてはコンビニエンスストアがあるが、それだって今の時代、(少なくとも弘前では)徐々に淘汰されつつあることを鑑みると、ほぼ頭打ちに近い状態なのだろう。
となれば、昔のような対面販売や小売りが、意外とまた再評価される時期が来るのではないか。
そんな中、土手町再生の起爆剤となるかもしれないボヌールの今後の展開に、陰ながら期待そして応援したいと思う。高橋君、ブログの更新はマメにね(笑)。
皆様、どうぞボヌールをご支援下さるよう、よろしくお願いします。