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宮本浩次の行く先は。 #縦横無尽


※本日の投稿は敬称略です。あしからず。
2021年10月13日、宮本浩次のニューアルバム「縦横無尽」が発売された。

2019年から始まった宮本のソロ活動。2020年3月には初のソロアルバムとなる「宮本、独歩。」が、11月には女性アーティストの曲ばかりをカバーしたアルバム「Romance」が発売され、2020年において最も活躍したアーティストの一人といってもいいぐらい、精力的な活動が見られた。

この間、エレファントカシマシの名はすっかり影を潜め、宮本の評価は上がるばかり。時として奇行のようにも受け取られそうな宮本の一挙手一投足が、もしも計算ずくでのことだったとしたら恐ろしい。

それはともかく、エレファントカシマシがどのタイミングで再始動するのかが非常に気になるところではあるが、他のメンバーは、宮本のソロ活動にあたり裏方の如く動き回っているらしく、時々その様子が宮本自身のインスタグラムに投稿されているのが微笑ましい。

さて、ソロとして初めての作品となった「宮本、独歩。」は、ソロデビューしてからの活動の集大成のような形の作品となっていたため、てっきり「一過性」のものなのだと思っていた。しかし、プロデューサー小林武史は手を緩めることなく、「宮本、独歩。」を超える売り上げと話題を呼んだ「Romance」、そして今回の「縦横無尽」へと繋げていった。

しかも、それぞれの作品が、いうなれば三者三様のカラーを打ち出しているのは、流石。

「宮本、独歩。」は、「Hi-STANDARD」のギタリスト横山健をフューチャーした「Do You Remember?」のインパクトが強烈過ぎるし。「冬の花」「ハレルヤ」「going my way」「昇る太陽」など、宮本が絶唱する、という印象が強かった。ロックというよりも、パンクにも近い勢い。けれども繊細という、最初のソロアルバムにしてベスト盤といってもいいぐらい、素晴らしい作品だった。

続いて発表された「Romance」は、昭和から平成の時代において華々しい活躍を見せた女性アーティストのカバー集だったが、これが宮本の歌唱力の凄さを見せつけることとなったといっても過言ではないだろう。エレファントカシマシのフロントマンというよりも、宮本浩次というソロアーティストとしての名声を一気に上げた感じ。作品のクオリティも相当高かったので、これまで宮本浩次、エレファントカシマシを知らなかった人たちでも手に取った人は相当多かったんじゃないかと思う。

これでソロ活動は終了、エレファントカシマシの活動へ向けてへシフト…と思ったら、宮本のソロ活動はこれでは終わらなかった。

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プリンスが語る平和的革命 「Welcome 2 America」 #prince #w2a


プリンスがこの世を旅立って5年が経過。
依然としてプリンスロスに陥っている人も多数いる中、何と「新譜」が発売されることがアナウンスされた。海賊盤のようなデモテープ起こしや、過去の未発表曲の寄せ集めなどではなく、正真正銘の「新譜」だという。
2010年に制作されながらお蔵入りとなったそのアルバムのタイトルは、「Welcome 2 America」(W2A) 。11年という月日が流れて、突如スポットライトが当てられることとなった。

プリンスが手掛け、この世に公式に発表されていない楽曲の数は数万曲とも言われており、今回のアルバムがほんの氷山の一角に過ぎないのは事実だが、それでも、これまで聞いたこともない作品が発表されたことは、素直に嬉しい。そして、過去のアルバムのリマスター盤に収録された、未発表作品集とはまた異なる趣、当時の世相や心境を強く反映したような楽曲で構成されている点、しかもそれが、今日においてもなお響いてくるということもまた、何とも心をくすぐる。

ところで、まず最初に思ったことは、なぜこのアルバムがお蔵入りすることになったのか、ということだった。流れからすると、2010年に発表した「20Ten」の次に発売されるかも知れなかったアルバム、ということになるが、プリンスが前作を踏襲した続編的なアルバムを制作することはこれまで一度も見たことがないので、「W2A」も「20Ten」とは全く異なる趣意で制作されたものだろう。ただ、「20Ten」にあったいい意味での軽妙さ(悪い意味でのチープ感)は影を潜め、全く異なる印象を抱く作品だ。
そこで考えたのは、このアルバムが社会的なメッセージをかなり強く打ち出したものとなったため、さまざまな影響(新たな敵を作るかも知れないリスク)を考慮し、お蔵入りにしたのではないか、ということ。あるいは単に、一気に台頭した音楽のデジタル化や、寡占が進む市場や社会に辟易してのことなのかも知れないが、真実は誰にもわからない。(プリンス自身が今は早過ぎると判断した結果、お蔵入りとなった、という説もあるが。)

プリンスは以前からインターネットやGoogle、Apple社などに対する批判を強くしていたが、このアルバムが制作された前後の頃と思しきインタビューでは、批判と皮肉を一層強めている。そして、この頃の音楽市場にうんざりしたプリンスは、レコーディングをしばらく自粛することにした、とも語っている。実際、「20Ten」の次にアルバムが発表されるまで、4年の月日を要することとなった。デジタル化に迎合し始めたレコード会社や音楽業界に対して、とことん嫌気が差したのかもしれない。

そういえば「20Ten」も当初は、レコード会社を通じたものではなく、紙媒体である新聞の付録として世に放たれたんだっけ。(ライブツアーの宣伝に一役買ったのも事実だが。)

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JAM & LEWIS VOLUME ONE #jamandlewis #おすすめアルバム 



今は昔。

80年代から90年代にかけて、名うてのプロデューサーがしのぎを削る時期があった。

歴史を紐解くと、80年代前半にマイケル・ジャクソンのプロデュースや「We Are The World」を手掛けたことで知られるクインシー・ジョーンズ、80年代中盤はいわゆるユーロビートの牽引役となったPWLレーベルのストック・エイトキン・ウォーターマン、そして音楽市場における栄枯盛衰の典型的なカテゴリーとも言えるニュージャックスウィングの火付け役となったテディ・ライリー、猫も杓子も大物も小物もみんなが縋ったベイビーフェイス、そして、裏稼業の如く別名義でのプロデュースにより、密かにヒット曲を出し続けていたプリンスなどなど。

今回紹介するジャム& ルイスも、80年代前半、プリンスによって手掛けられたバンド、ザ・タイムの一員として参加していたジミー・ジャムとテリー・ルイスの二人によるプロデュースコンビ。
プリンスの傘下で活動していた時期はそれほど長くはなく、自らのレーベルを立ち上げてプロデュース業に力を入れていた頃、ザ・タイムの公演に参加することができず、バンドを解雇となった話はプリンスファンの間では既知の事実。その後プリンスは映画「パープル・レイン」の大ヒットにより、名実ともにトップミュージシャンとなるが、ジャム&ルイスはこの映画に出演していない。
がしかし、ジャネット・ジャクソンのアルバム「コントロール」を全面プロデュース、大ヒットを収めたことで「時の人」となり、続く「リズムネイション1814」でもヒットを記録、他のミュージシャンのプロデュースを手掛けることとなった。

個人的に一番驚いたのはジョージ・マイケルのアルバム「FAITH」に収録されていた「Monkey」が、5曲目のシングルとして発表された時だった。アルバムの中では、猿の鳴き声から始まるそれほど派手さのない楽曲だったのが、シングルではジャム&ルイスによる大胆なアレンジが施され、ダンサブルかつキャッチーなサウンドに生まれ変わっていたのだ。

ジャム&ルイスも参加したザ・タイムが1990年に発表したアルバム「Pandemonium」は、プリンスのレーベルである「ペイズリーパーク」レーベルから世に出された。かなりジャム&ルイスの色が濃いと感じられるこの作品ではあるが、プリンスとジャム&ルイスが交わることは、結局その後なかったようだ。

ジャム&ルイスの活動としては、90年代後半になると活況を見ることはなくなったが、1999年には宇多田ヒカルの楽曲を手掛けたほか、2007年に発表されたチャカ・カーンのアルバム「FUNK THIS」を全面プロデュース、第50回グラミー賞では最優秀R&Bアルバムを受賞するなど、地道に存在感を示していた。

さて、前置きがだいぶ長くなってしまったが、そんなジャム&ルイスが先日初めてアルバムを発表した。

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