日別アーカイブ: 2022-02-08

ブラック・ミュージックがもたらす妄想の世界

懐古主義といわれても仕方がないのだが、50代を過ぎた今も聴いている音楽は、80年代から90年代に掛けての曲がメインだ。つまり、四半世紀以上前の曲に未だに夢中になり、没頭している、ということ。
とりわけ最近は、いわゆる「ブラック・ミュージック」と言われていた音楽を好んで聴いている。
ブラック・コンテンポラリー、R&B、Rap、New Jack Swing…さまざまなジャンルへと派生されていったブラック・ミュージックの数々。

そんな中、最近どっぷりと嵌ってしまったのが、2020年11月から段階的にタワーレコード限定で発売されている「Midnight Love – SMOOTH R&B ESSENTIALS」のシリーズ3部作。ソニー、ワーナー、ユニバーサル、それぞれのレーベルに属していたアーティストの珠玉の名曲が、これでもかと言わんばかりに収録されている。32曲、32曲、48曲なので、計112曲。これだけ収録されていれば、もはや初めて耳にした曲だって気にならないし、逆に新しい発見があったりもするというものだ。
それぞれのアルバムの解説を務めるのは、ブラック・ミュージック研究の第一人者、JAM氏で、歌詞も付されているほか、最新のマスタリングが施された音源となっている(よって、全ての楽曲は一定の音圧で聴くことができる)。

のんべ
のんべ
画像をクリックすると、タワーレコードの各ページへ飛びます。ちなみにタワーレコード限定販売です。

しかし、若かりし頃、何でこんな曲ばかり聴いていたかということを考えてみたが、単なる「大人ムード」への憧れであり、その先にある官能的な世界の妄想に利用していただけだったのかも知れない。早い話が、スケベ心を掻き立てる一助となっていた、ということだろうか。
まだ「大人エレベーター」に乗るほどの段階ではなく、「大人への階段」の踊り場で、独りティッシュ片手にムニャムニャ…例えるならばそんな感じ。
今になって改めてこれらの楽曲を聴いてみると、新鮮な気持ちと当時の(いろんな意味で)モヤモヤした気持ち、感情が複雑に入り交じっていた当時のことを思い出し、ちょっと照れくさくもなる。

当時、FM雑誌に掲載されていた(ちなみに私は、1998年に休刊となった「FM STATION」派でした)チャートを眺めながら、一生懸命カセットテープを編集して(いつやってくるのかもわからない)ドライブに備えていたが、結局そのテープは自室でのBGMと化し、本来の出番を迎えることはなかった、なんてことを思い出した。

いわゆる「一発屋」の方々が多く収録されているのも特徴的で、これもまた当時の音楽業界が群雄割拠の状況だったことを示す一つの象徴なのだろうか、と思ってしまう。ちなみに、私がこよなく愛しているPrinceや、R&Bとは完全に一線を画することとなったMichael Jacksonはこれらの作品に登場しないが、Princeのカバー曲(Do Me Babyが収録されていたり、関連アーティストが数名登場しているのは、ちょっと嬉しい。

更に、このシリーズ第1作目が発表されるちょうど2年前、ユニバーサルミュージックから「NEW JACK SWING the Best Collection」なる3枚組50曲を収録したコンピレーションアルバムが発売されていたことを知る。このジャンルを確立させた人物と言われるGuyのメンバーでもあるプロデューサーのTeddy Riley、そして、歌い手の立場からそのジャンルを確立させていったBobby Brownをはじめ、一世を風靡したアーティストがてんこ盛り。内ジャケットには、収録曲のジャケットカバーが掲載されているのだが、その風貌がまた何とも当時を思い起こさせるいで立ちばかりで、これだけでも結構ニヤリとさせられる。レーベルを越えた日本独自の編集盤となっているほか、初CD化の音源も多数収録されており、これだけでも「買い」の要素は十分。

のんべ
のんべ
こちらはAmazonでも販売。安価なのは、Amazonかな。

個人的には、この4作品があれば、80年代から90年代にかけてのブラック・ミュージックの潮流を結構押さえることができるんじゃないかと思っている。

とはいえ、ラップやクラブミュージック、DJなど様々なジャンルの音楽がこの頃はひしめき合っていたのも事実なので、裏を返せばこんなのは氷山の一角、と言えるのかも知れないが。

昭和の時代に戻るならば、これらはいわゆる懐メロ、ムード歌謡といったジャンルに分類されても不思議ではない。
そして、何よりも強調しておきたいことが一つ。
収録されているアーティストの大半は、「あの人は今」に登場しそうなクラスの方々で占められておりますので、念のため。