日別アーカイブ: 2014-09-14

岩木山にはやはり畏怖の念を抱かざるを得ない。

今日は、「チャレンジヒルクライム岩木山ランニング大会2014」に参加してきました。
毎年6月に青森県の名峰岩木山で行われる自転車レース「チャレンジヒルクライム岩木山」。
昨年はプレイベントとして自転車だけではなくランニングも開催されたのですが、今年はそのランニングが正式開催となりました。

115名の男女から参加申込みがあり、今日早朝から100名を超える人たちが、普段は歩行者の通行が認められていない岩木山スカイラインを駆け抜けました。

…いや、駆け抜けたというよりは、這い上がった、といった方がいいのかな、特に僕の場合は。

スタートの標高は450m。フィニッシュ地点の標高は1247m。高低差は何と、797m。あのドMマラソンと呼んでいる平川市の「たけのこマラソン」ですらアップダウンで総標高差400mちょっとなのに、こちらはひたすら上って上って上り続けて約800mという、超ドMマラソン!

早朝3時50分。岩木山スカイラインを目指して自宅を出発!月明かりが眩しい代わりに、人影も車もほとんどおらず…。
岩木山の方角を見ると、雲がかかっているのか、朧気ながらの姿しか見えないという状態。

いつもならばランニングで走っている道路を、車で走り抜ける何とも言えぬ違和感を感じながら、いよいよ岩木山神社が近づいてきた時、パラパラと雨が零れてきました。しかし、百沢地区を抜け、受付のある嶽温泉郷が近づくにつれ、どんどん雨脚が強くなっていきます。

ムムム…この雨、やれんのか?

4時20分頃、スカイライン入り口隣にある駐車場に到着。既にたくさんの車が停まっていますが、運転席にいる方々は、僕と一緒で降り止まない雨の気配を憂いているのがわかりました。
スマートホンを取り出し、降雨レーダーを見ると…

どうやら通り雨のような雨雲がちょうど通過しているらしく、4時40分以降は全く雲のない状態となる予想図となっていました。もう少し待てば雨も上がると踏み、しばらく車内でボーッとしていると、次第に雨脚が弱まり、程なく、ほとんど雨が止んだのがわかりました。

今だ。行ける。
車から降り、約1キロ離れた嶽温泉郷へ。もちろん周囲はまだ真っ暗ですが、これもウォーミングアップと考えたら、気になることはありませんでした。

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受付会場に到着すると、そこには見慣れた顔がたくさんいました。モヒカン兄貴ことHさんや委員長のKSKさんの他、弘前公園RCのメンバーや絶倫魂のメンバーがスタッフとして参加していました。
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受付を済ませ、車に手荷物を預けます。小さなデイパックの中にパンパンに詰め込んだのは、防寒着をはじめとする着替え。AくんOさん、よろしくお願いします。

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5時になると徐々に周囲も明るくなってきました。選手が一堂に会してミーティングスタート。Hさんの挨拶、そしてKSK実行委員長からの注意事項伝達、蛮カラ応援団Sさんから選手へのエールが送られ、ミーティング終了。もう、雨の心配は全く必要ないみたいです。

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どこがスタート地点なのかハッキリとはよくわからないのですが、選手の方々が嶽温泉郷公衆トイレの前に集まり始めました。

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「スタート10分前」のアナウンス。
そんなに緊張感はないのですが、この先に待ち受ける69のカーブをどれだけ走りきることができるのか、かなり不安が高まってきました。
足の疲れは残っていませんでしたが、まだ完全に風邪が抜けきった状態ではありません。しかも昨晩、ちょっとした事情であまり眠れなかったという…。
まあ、記録会じゃないし、とりあえず無事8合目まで着けばいいかな、とその時は思っていたのですが…。
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(偶然にも背後に、後にゴールまで抜きつ抜かれつ並走するMさんとYさんが。入賞おめでとう!)

「スタート20秒前」
心なしか急に緊張感が高まります。練習の延長と割り切れば良かったのに、この時ばかりはなぜか違うことを考えていました。

「スタート!」
軽トラックが先導し、一斉に選手が走り出します。
…とここで、僕は致命的なミスを犯します。
嶽温泉郷からスカイライン入り口あたりまでは、緩やかな下りがしばらく続くのですが、何を思ったのか僕は、ここでスピードを上げてしまったのです。(あとで確認したら、キロ4分15秒から30秒台で走っていたらしく。)

下りのあとに待ち受ける緩い上り坂。そこを右折すると、いよいよ岩木山スカイラインがスタート。
前方には、遙か遠くを走る軽トラックと、それに続くランナーの列。そして、長く先の見えない上り坂…。
まるで迷宮への入り口のように、岩木山が口を開けて待っている、そんな雰囲気。
ふと見上げると、果てしなく上まで続く山肌に、昇り龍が這うようなスカイラインのカーブがへばりついています。

嗚呼、やっちまった!と思った時には既に時遅し。
徐々にペースを抑えにかかった時点で、急に足腰に錘をぶら下げたような怠さを感じました。

この調子で69のカーブを上り切るのは、絶対に無理だな…。
約2キロ地点で、料金所を通過。カーブはまだ始まったばかりです。
当たり前のことだけど、ずっと上り坂。平坦なところは一つもなし!
やがて重力に逆らい続けて上り続けていたことで、腰とケツに違和感を覚え始めます。

来た来た…前回の北海道もそうやって理由を付けて歩いたんだよね。全然変わってないじゃん。何やってんの?何のためにこの大会にエントリーしたの?

自分自身を罵倒しながら鼓舞しますが、鼓動は激しくなるわ腰がどんどん重くなるわ、早くも最初の限界(それも低い低い限界)に到達したらしく、遂に19個目のカーブのあたりで一度歩くことにしました。

まあ、歩いてもゴールには着くだろうな。でも、この腰どうする?歩きながら背中や腰を伸ばしているうちに、背後から声が聞こえてきました。

Tキャプテンと、今日も魚の被り物をしたIくんでした。

「どうした?大丈夫?」
「…ちょっと、腰のあたりが…。」
「そうか、無理するなよ。」
「うん…」

小さく返事をして二人の背中を見つめます。
するとTキャプテンがキッとこちらを見て言い放ちました。
「勇気ある棄権も、アリだぞ。」

この言葉に、ハッとさせられました。何を俺は一人で弛んでいるんだ?苦しいのは他の人も一緒なのに?
急に足腰の錘が外れたかのように、足が前に出るようになりました。

そうだ、これでいいんだ。しばらく二人を追走していたら、給水所までやってきました。

いい。ここまで足を運べたことでも充分。徐々に遠くなる二人の背中を見ていると、今度は背後から女性参加者であるMさんが登場。
力強い走りをしていますが、やはりかなり足に来ているようで、僕に声を掛けて追い越したあと、その走りが歩みに変わりました。すると今度はもう一人の女性参加者、Yさんも登場。結局彼女たちを鼓舞し、彼女たちに鼓舞されながら、歩いては走り、歩いては走り…をずーっと繰り返します。

49カーブ目を通過。
「あと20。歩いて走って繰り返せば、ゴールに着く!」
自分に言い聞かせるように、大声を上げます。
そういえば給水所のあたりで、遠くから男の人の声が聞こえたような気がしたのですが、どうやらそれは気のせいではなく、ゴール付近から選手たちを鼓舞し、声援を送る声だったようで、その声が徐々に近づいてきているのがわかりました。
時折見える眼下の世界が、僕らがこれまで上ってきた高さがどれぐらいであるかを物語っていました。
考えてみるとこの高低差って、スカイツリーより高いんだよね。それを上ってるんだもんね。
気がつくとカーブも60を超えており、いよいよカウントダウンのところまでやってきました。

「あと2つ、カーブ2つだぞ!」

ふと上を見上げると、こちらに向かって声援を送るスタッフの姿が。

最後ぐらい、笑ってゴールしよう!KSK委員長も話していたこの言葉を思い出し、ふっと口元を緩めたら、何とかゴールできる嬉しさがふつふつとこみ上げてきました。

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(Hさん、ありがとうございます!)

そして、既にゴールしていたTキャプテンとIくんの姿が目に入ってきました。
「ありがとう!」と声を掛けてハイタッチ。
結局先行するMさんを追いかけ、後方から追いかけてくるYさんに押し上げられるように、「71番!」と自分のゼッケン番号を叫びながらようやくゴール!
1時間11分42秒、61位という微妙というか散々というか、何とも言えない結果ではありましたが、帰りのバスの車中から外を眺めながら、ここを自分の足で走って歩いて上りきったことに今日の意義はあるんだ…と自分に言い聞かせてました。

本当に、恐らく今までで辛く苦しいコースでした。でも、途中で緑を見て、そして風の音を聞いて癒されたり、急に冷たくなった8合目付近で驚いたり、苦しい中にも楽しい大会でした。

何よりも、沿道の声援がほとんどない中で、スタッフの皆さんが声を掛けてくれたり、選手同士で鼓舞し合ったり、何かこう、うまく言えないんですけど、8合目を目指すという一体感というか、やり遂げたあとの達成感というか、そういった感動が実は結構ハンパなく押し寄せて来まして、あ…きっとまた来年も来るんだろうな、と思った次第です。

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選手の皆さん、お疲れさまでした。スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

この足跡は、ある意味今年一番の宝物になりそうです。

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