Prince / ORIGINALS #prince


門外不出だとばかり思っていた、奇跡の作品集が発売された。Princeの好き嫌いは昔ほどではないにせよ顕著に現れるが、え?これもPrince作った作品なの?という新たな再評価に繋がる可能性も孕んでいるぞ。

ということで、本日はそんなPrinceの新作に関するレビュー、いや、レビューはその筋の皆さんにお任せして、個人的な所感。

ちなみにこの作品、発売前から試聴会が行われていたし、噂では、リークされた音源が発売前にネット上で出回ったりしたらしい?が、蓋を開けるとMadonnaの新作「MADAME X」よりも売れている、とか。さらに、このタイミングでStingやBruce Springsteenといった、80年代のヒットチャートを賑わせたアーティストが相次いで新作を発表したことも、ちょっと嬉しいのだ。

振り返ってみると、正規のものではない未発表の作品が「海賊盤」として市場に出回っていることを知ったのも、「お蔵入り」という言葉を何となく使うようになったのも、昭和が幕を閉じようとしていた頃で、全てはPrinceがきっかけだった。
実際、ブート盤の聖地と言われた西新宿の小さなレコード店を巡ってみたり、実際に非正規のよろしくない作品を購入してみたり。そういえば、通信販売で購入した初めてかつ唯一の海賊盤は、雑誌「rockin’on」に広告が掲載されていた「Black Album」だった。

5000円前後で購入しただろうか。送られてきた商品を見て、息を呑んだ。

ペイズリーパークのエンボス模様か不規則に打刻された真っ黒なジャケット。
黒く塗られたディスクには、明朝体の文字をワープロで打ち込んだようなオレンジ色の文字が打たれていた。Made in GERMANY、そしてなぜかWarner Recordsの文字。確か、品番も書かれていた記憶がある。そして、For Promotional Use Onlyだったかは忘れたが、わざわざ油性マジックで見え消しされる手の込みようだった。
その後も、レコードでしか世に出ていない12インチの音源をCDにまとめたものや、スタジオで録音されたと思しきデモ音源をメインとした数種類の海賊盤を購入したが、作品によって当たり外れのムラが大きく、ほとんど興味が沸かなくなってしまった。

Prince自らがネット上で未発表曲の配信を開始したり、海賊盤そのものへの批判が高まるようになったのも、その要因だったかも知れない。本人が旅立ってから、数多あると言われる未発表曲の行方に注目が集まった。

考えてみると、その後に未発表曲がベスト盤に収録されたり、廃盤となった作品が再発されたりしてきたが、他者への提供曲がアルバムという形でまとめられて世に出されたのは、本作が初めてということになる。

既に海賊盤で出回っていた曲があったのかも知れないが、少なくとも僕は、ほぼ全ての楽曲を今回初めて耳にした。
多分本人が存命であれば、きっとこういった作品が日の目を見ることはなかっただろう。
THE TIME, SHEILA E., Mazaratiといったペイズリー・パークレーベルのアーティストをはじめ、もっともPrinceらしさが影を潜めていると個人的には思っている、THE BANGLESへの提供曲まで収録されている。
他アーティストへ提供した楽曲のセルフカバー、という位置付けとも取れるが、むしろデモ音源をマスタリングしたもの、と考えた方が良いのだろうか。


(ジャケットと同じデザインのポストカードが同梱されていた)

いずれにせよ、こういう未発表曲に光が当たることはファンとして嬉しいけれど、しつこいようだが本人が存命だったら、こんな作品を発表することはあっただろうか、いや、多分なかっただろうな…と考えると、ちょっと複雑な気持ちになる。

実のところ、他人へ提供した他の楽曲は、既に海賊盤で聴いたことがあるし、今回収録されたものとバージョン違い(ボーカルが違う、など)も聴いている。日本人で唯一プロデュースされた、青森県出身の女性ボーカリストへの提供曲のデモ音源も聴いたことがある。

だから、最初にこの作品を聴いたときに、何だかそんな海賊盤を聴いているような居心地の悪さ、申し訳なさみたいなものを感じてしまった。
もちろん、この作品自体はとても貴重な内容であり、Princeの歴史の一端を探ることのできるものだということは全く否定の余地がない。
しかし、こういう作品を聴いてしまったがために、申し訳なさと同時に次なる疑問と期待が渦巻いてしまったのだ。

つまり、こういうことだ。
彼が(変名で)プロデュースしたTHE TIMEの曲が2曲収録されているが、それって2曲にとどまらないよね。多分、全ての楽曲において、Princeバージョンが存在するのでは、ということだ。そしてそれは、他のアーティスト然り。

更に、前述のとおり他のアーティストへの提供曲が海賊盤で出回っていたということは…ねえ。
そう思ったら、ひょっとしたらこれから更に世に出てくるかも知れないPrinceの楽曲に、どんな期待をしたらいいのだろうか、と考えてしまった。

いっそのこと、「Crystal Ball」のような、コンセプトも何もない、雑多なんだけれど何だか凄い!という作品が出ることを期待すれば良いのだろうか。今回の「ORIGINALS」の続編、更にはデラックス盤なんていうことにはあまり期待しないようにしよう。

事実、廃盤となってしまった作品を再発するだけでも、我々ファンにとっては事件なのだから。


Prince / His Majesty’s Pop Life 入手顛末記 #prince


今年4月18日のレコードストア・デイ(奇しくも亡父の誕生日だった)で発売された作品のひとつが、Princeの幻のカセットテープと言われる「ヴェルサーチ・エクスペリエンス」だった。国内盤が発表されたこともあり、ファンの間ではにわかに話題となった。(その時の記事はこちら

他方、Princeのもう一つの作品が発売されることは知られていたが、あまり話題に上ることがなかったのが、2枚組の12インチレコード「His Majesty’s Pop Life」。

1985年に日本国内のみで発売されたという激レアアイテムで、中古市場では5万円を超える価格で取引されていたらしい。

内容に関しては今更説明するまでもないのかも知れないが、少しだけ。

Princeの名を全世界に知らしめることとなった「Purple Rain」の次作として発表された「Around The World In a Day」から、「Pop Life」や「Paisley Park」「Raspberry Beret」のリミックスバージョンをはじめ、過去の作品からの楽曲も収録されているという変則的な作品となっている。

2枚のレコードが45回転と33・1/3回転という異なる組み合わせになっているのも風変わりではあるが、ライナーノーツを担当した吉岡正晴氏によるプリンス年表が付いているというのも、国内盤っぽいところ。

そもそも1985年の時点ではようやく聞き齧りする程度だったし、そんな作品が発表されていたことも知らなかった。高額で取引されている時点で全く興味はなかったのだが、その貴重な作品が再発売される(全世界で14000セット?)となると、実際どんなものなのか手に取ってみたくなってきた。

僕は決してコレクターではないのだけれど、最近再発売された彼の他の作品よりも、僕が14才の時、つまりPrinceに対して単なる嫌悪感しか抱いていなかった頃、いや、正しくは嫌悪感から好感、もとい興味本位に変わってきた、まさに過渡期の頃の作品がどんなものだったのか、当時の飽くなき興味が呼び覚まされるかのごとく、日に日にそれを手にしたいという思いが強くなっていった。一つの作品、モノとしてのそれを。
しかし、国内盤も発売された幻のカセットテープとは異なり、輸入盤でしか手に入れることのできないそれに対する反応は今一つで、果たして簡単に手に入れることができるのか、正直よくわからなかった。

発売直後にネットの情報を読み漁ってみたが、店舗に置いてある数もそれほど多いものではないらしく、事実、レコードストア・デイが終わった1週間後には、「売り切れ」「取扱不可」が続々現れ、中には高値を付けて販売するような店舗も出始めていたし(それすらも「売り切れ」だった)、数は少ないが、オークションにも出品が見受けられるようになった。
やはり手に取ることは難しいのだろうか…。

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Prince / ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス (THE VERSACE EXPERIENCE : PRELUDE 2 GOLD)


昔、弘前市の中心市街地に、Tというレコード屋さんがあった。
中学2年の時だっただろうか、同級生と初めてその店に入った。
恥ずかしながら、当時各地に林立し始めたレンタル屋さんと間違えたのだ。

そういう店ではない、ちょっと違うと気づくのに時間は要しなかった。しかし、世間知らずの青みがかったクソガキにとって、その時目の当たりにしたレコードやカセットテープは、垂涎の的となった。

ちょうどその店舗の向かいには、小さな電器屋さんがあった。今は学習塾になっているところだ。その2階にも、レコードや音楽カセットが置かれていた。そういったアイテムを買う余裕すらなかったクソガキは、FMラジオから流れる音を録音するため、いわゆる生テープと呼ばれる46分、時には60分のノーマルやハイポジ(メタルを使いこなす機材がない)を物色しながら、店の棚に並ぶレコードやカセットテープに手を伸ばし、色んな思いを馳せていた。そしてあの時、一度手にしつつも購入することなく棚に戻したレコードやカセットの数々は、今でもその感触や重みが鮮明に蘇ってくる。

時は流れ、カセットが衰退、CDが席巻するようになった。一時期MDやDATといった新たな媒体も台頭したが、デジタル化が進むとともに、音楽はハードを手にして楽しむのではなく、ソフトとして提供される音源を楽しむ時代に変わっていった。

Albums, Remember Those? Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter.
アルバムって覚えているかい?アルバムはまだ大事なものだ。本のように、黒人の命のように、アルバムはまだ大事なものなんだ。

今から4年前、2015年2月のグラミー賞でプレゼンターを務めたプリンスのこの発言は、世界の音楽業界を皮肉り、そして米国社会が抱える特有の問題を際立たせることとなり、示唆に富んだ発言だとして注目を浴びた。

残念ながらプリンスは、それから1年2か月後にこの世に別れを告げたが、それからの音楽状況を見ると、あの時の警鐘に呼応するような潮流が生まれつつあり、まるでそれを見透かしたような発言だったんだな、と改めて感じている。

事実ここ最近、レコードに対する再評価がめざましい。

デジタル音楽ではなく、マテリアルとしてのアルバムを手にしたときの興奮、例えば購入したレコードをジャケットから引き出す時の緊張感や、ライナーノーツや歌詞カードを引っ張り出した時の、あの時の感動を、皆さんは覚えていますか?

昨今の、音楽の重みが損なわれた感覚と言えばいいのだろうか、一リスナーとして批判を覚悟でいうならば、言葉に乗せて風景や感情を伝えるのではなく、音楽が単なるBGMになりつつあるのが実態だと思いませんか。だから歌詞カードもいらないような、心に全く響いてこない音楽が幅を利かせているのが現状だとは思いませんか。

さて、冒頭で出てきたレコード屋さんは、店舗を移転したあと、店の名前をJと変えた。高校生になった僕はよく店に足を運び、当時弘前市では珍しかった輸入盤のレコードにも手を伸ばした。幾つかは小遣いを叩いて購入したし、その中には、プリンスの覆面バンドだった「MADHOUSE」の「8」もあった。(あろうことか、10年近く経った頃に、購入したレコードのほとんどを棄損するという、泣くに泣けない出来事に襲われたんだけどな。)

ちなみにJというのは、弘前の音楽愛好家では知らない人はいない、尊師Sさんが店長を務めていた店で、その頃から若造の僕ともプリンスの話で花を咲かせていた。
その後Jは残念ながらなくなったが、Sさんが営む隠れ家のようなバーを時々訪問し、プリンス談義に花を咲かせている。

さて、これまでレコードやカセット、と言ってきたが、実のところこれまで音楽カセットを購入したことは1度としてなかった。

ただし、プリンスのアルバム(CD)をオフィシャルサイトから購入した際に、サンプラーのカセットが1本、プロモーション用のカセットが1本、それぞれ同梱されていて、今も僕の大切なアイテムになっている。

そんな中、今年に入ってプリンスの過去に出回った貴重なカセット「ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス」 を数量限定で発売する、というアナウンスが流れた。ちなみにこの作品、1995年に500本のみ配布された超レア物で、毎年開催される「レコードストア・デイ」に合わせで発売されることになったという。ちなみに海外では、日本国内のみで数量限定で出回った2枚組の12インチ「His Majesty’s Pop Life」も発売するというではないか。

正直、後者の作品に対する食指が動きまくったのだが、国内では発売予定なしということで、ひとまず日が経ってから後悔しないように、確実な方法でカセットを購入した。
弘前市内にもレコードストア・デイに参加している店舗があり、最初はそこに足を運ぼうと思ったが、入荷の有無の確認しようと電話しても繋がらず、結局諦めた。

しかし、やはりマテリアルとして手にしてみると、その音に対する愛着がガラリと変わる。
残念ながら限定のポストカードを手に入れることはできなかったが、初めて購入した音楽カセットは何だか神々しく、開封するのも躊躇われるぐらいだった。
…これですよ、この感覚。

カセットをくるむ包装セロファンの上部に貼られたこのシールですら捨てるのがもったいない感覚、わかりますかね?

ちなみにプリンスの過去の作品については、廃盤となって入手困難だった作品の再発が相次いでいて、ファンを喜ばせつつ懐を泣かせ続けるという状況が続いている。

4月21日は衝撃のニュースが全世界を駆け巡ってから3年目となる。

さて、これからもまた違った意味で、私たちファンに衝撃をもたらし続けるのだろうか。もっとも、生前の彼には散々驚かされてきたから、この先何が発表されても、あまり驚かない…つもりだけどね。