角松敏生ライブの翌日は、大人の休日俱楽部パス対象エリアの端っこ、下田へ向かうことにしていた。
先のレポートでも触れたとおり、出発前は直前に発生した地震と避けることのできない災害対応、更には台風のダブル接近、ライブ翌朝の余震と葛藤…いろんな感情と想いが渦巻いたが、総じてみるといい旅だった。
■ 薄氷を履むが如し【心地よい疲労感。しかし…】
6月25日の地震そして出発当日のW台風をかいくぐり、最初の目的地である横浜に到着した土曜日の夜は、横浜アリーナで開催された「角松敏生 45周年記念公演」へ。直前までの仕事の緊張を忘れさせてくれる素晴らしい時間であったが、翌朝になっても災害対応の疲れとライブの興奮が入り混じった心地よい疲労感が残っていた。しかし…
■ 6月28日早朝5時半の余震【渦巻く「後ろめたさ」】
28日早朝5時半頃、ベッドの中でスマホがイヤな音を発した。25日の地震の余震が発生、青森県内で最大震度5弱を観測したのだ。横浜市内のホテルでも、わずかな揺れを感じた。心地よい疲労感がイヤな疲労感に変わった。今年の神様はどこまでも冷淡だ。
状況を確認したところ、幸いにも被害はなかったが、職場の仲間たちが再び対応に追われていた。一方で自分は今、災害対応に従事することもなく、私的旅行に出かけようとしている。悶々とした思いと「後ろめたさ」が圧し掛かってきた。でも、ここで思いを断ち切らないと誰も休めなくなる。
複雑な思いを胸に抱いたまま横浜駅から特急「踊り子3号」に乗車、一路伊豆急下田駅へと向かった。伊豆半島は火山島が本州に衝突してできた地形だ。半島全体に温泉が散らばっており、駅に到着するたびに湯けむりが上っているのが見えた。12時12分、伊豆急下田駅に到着すると、今にも雨が降り出しそうな空が広がり、普段なら賑わっているだろう駅前も、観光客は非常にまばらだった。
■ 極上鰻に舌鼓【モヤモヤを吹き飛ばす「小川家」の鰻重】
何とも言えぬ重い空気感を抱えたまま、徒歩で鰻の名店「小川家」へ。
結論から言えば、これまで自分が食してきた鰻の中でも間違いなく3本の指に入る美味しさだった。
運ばれてきたそれを口に運んだ瞬間、香ばしさと芳醇な香りが拡がる。圧倒的な美味しさに五感が満たされ、悶々としていた思いが吹き飛んだ。
店内は座席数が少なく、メニューも「うな重(竹)」に潔く絞り込まれている。
表の看板には「柳川」ともあるが、メニューには存在しない。完全予約制で、訪問する時間に合わせて焼き上げるという。最上級のそれを最高の状態で提供するという、職人のプライドと気質が感じられた。
■ 雨の下田海中水族館への徒歩ルートには危険も
うな重で心身を整えた後は、徒歩で「下田海中水族館」を目指す。
小川家から水族館までは約800mだが、強い雨の中を歩く中、リスクにも気づくこととなった。
1. 一寸先は小路だらけ:下田市内は道幅が狭い道路が入り組む。
2.地図だけではわからないアップダウン:水族館の手前には、結構な上り下りがある。
3. 無歩道の暗いトンネル:手前にトンネルがあるのを確認、中は暗く歩道が整備されていない模様。
雨で視界が悪い中、車との距離も近く、歩くのは正直危険だと感じ、たまたまやってきたバスに1区間だけ乗車した。
水族館に到着した頃には更に雨脚が強くなり、この先の安全も考慮して滞在時間を大幅に短縮。ちょっとだけ楽しみにしていたショーを見る暇もなく、無念の撤退となった。
下田駅~海中水族館はバスが便利。片道230円。天気の良い日はともかく、雨の日や足腰に不安がある方は無理せずバスを利用することをお薦めする。ただし、運行本数が少ないので事前にリサーチを。
■ 大人向けの「ホテル伊豆急」【2種類の温泉で疲労回復、そして地元の海の幸を堪能】
水族館から駅へ(バスで)戻った後は、宿泊先である「ホテル伊豆急」の送迎バスでホテルへ。
雨の徒歩移動で身体も冷え、前夜からの疲れもピークに達していたので、ホテル内の温泉で癒すことに。
このホテルには、敷地内から湧き出る独自の源泉「白浜温泉(弱アルカリ性硫酸塩泉)」と、下田の名湯「蓮台寺温泉(単純温泉)」という2種類の温泉がある。異なる泉質のお湯に交互に浸かりながら、蓄積していた色んな疲れを抜き、そして心身を労わった。
軽く惰眠を貪ったあとは夕食会場へ。決まった料理以外に券が3枚渡され、好きな料理やデザートを3品選べるというシステムになっている。そして、ここで登場した「金目鯛の煮つけ」が絶品だった。これはビールも進むってものです。
更に翌朝の朝食会場では、「鯵の干物」が目の前でパチパチと網焼きにされており、香ばしい香りが漂っていた。これに加え、地元で獲れた新鮮なシラスや、わかめのしゃぶしゃぶなど、下田ならではの海産物も用意されており、朝から大満足の贅沢な食事を堪能することができた。
雨は上がったようだ。旅の最終日に天候が回復するのは今に始まったことではない。
部屋からの景色は今一つであったが、温泉と料理のおかげで良質な滞在時間を過ごすことができた。
伊豆急下田駅から特急「踊り子2号」に乗車し一路東京へ。そこから新幹線を乗り継ぎ、弘前に戻ったのは18時過ぎだった。
■ 旅のまとめ
今回、弘前から伊豆急下田までの移動を支えてくれたのが「大人の休日倶楽部パス」。これを利用したため、弘前から横浜を経由した伊豆急下田までの往復の交通費は一律2万円(※バス代と宿泊費は別)で済んだ。通常運賃と比べたら圧倒的なコスパだった。
直前の震度6強、当日のW台風に滞在中の余震と、本当に紆余曲折あったが、「ダメなら新潟、長野方面へ旅程プランを切り替える」という準備をしていたこともあり、出発さえすれば何とかなるという確信があった。そういう意味では、奇跡的にほぼ全ての行程を予定通り進めることができたというだけでも、非常に満足度の高い旅となった。
出発直前まで神様は冷淡だったが、旅の最後はニヤリと笑ってくれたようだ。
次回は出発の段階から高笑いできますように。
































