景気底打ち宣言 7カ月ぶり「悪化」削除 政府月例報告
(6月18日8時4分配信 産経新聞)与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は17日の関係閣僚会議に6月の月例経済報告を提出した。景気の基調判断を「厳しい状況にあるものの、一部に持ち直しの動きがみられる」と2カ月連続で上方修正した。昨秋以降の景気悪化の原因となった生産や輸出の持ち直しが顕著になっており、7カ月ぶりに基調判断から「悪化」の表現が消えた。与謝野経財相は会見で「景気は底を打ったと強く推定できる」と述べ、景気の底打ちを事実上宣言した。
政府が底打ちと判断したのは、民間企業の在庫調整が急速に進み、生産活動を示す鉱工業生産指数が2カ月連続で前月比プラスとなったほか、中国景気の持ち直しもあって輸出も急速に改善したためだ。平成19年11月に始まった今回の景気後退局面は、20年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)以降、急激に悪化したが、約1年半で大きな転換点を迎えた。
個別項目では5月に「下げどまりつつある」としていた生産、輸出が「持ち直し」「持ち直しの動き」にそれぞれ上方修正。定額給付金やエコカー減税など政府の景気対策も一定の効果をあげたとみられ、個人消費も「緩やかに減少」から「一部に下げ止まりの兆し」に上方修正した。
ただ、雇用情勢は「急速に悪化」との見解を変えず、設備投資や住宅建設は「大幅に減少」に下方修正した。雇用などの一段の下ぶれを懸念し、「底打ちはしたが、回復とはいえない」(内閣府幹部)と先行きに慎重な見方を崩していない。
上を見るとキリがないし、下を覗くと底がない、それが今の日本経済だと思う。しかし、政府はこのタイミングで景気の底打ちを「敢えて」宣言した。
タイトルだけ見ると、景気が好転したような印象を受けるが、決してそういうことではない。
海に浮かんでいた船が沈没し、海底まで沈んでしばらくした後、ようやくその船を引き上げる段階に来た、というだけの話であって、船を引き上げるためのワイヤーも老朽化が進んでいるため、持ち堪えられるかわからない。ひょっとしたらワイヤーが切れて、更に深い海底まで沈んでいく可能性だってある。
いくら底を打ったと喜んでも、今の景気動向とは所詮そんな状態なのだろう。
正直、景気の底打ちを宣言するにはまだ早すぎたような気がする。あるいはまた例のごとく、東名阪に限っては、事態が好転したということだろうか。
少なくとも僕の周りでは、ここ最近景気が上向いてきたと感じている人はいないようだ(景気が上向いてきたと感じる方、是非コメントをお願いします)。
では、なぜこのタイミングで底打ちを宣言したか。
要するに、これまで政府が行ってきた経済対策が、ここに来て一定の効果を生み出しているんだというPRを、解散総選挙の前に打って出たいということなのだろう。選挙対策用に景気の底打ちを喧伝することで、これまでやってきたことが正論だったということを主張したい、という思惑も見え隠れしている。
まあ、与党にしてみれば何かと攻勢に出るための「ネタ」、つまり「売り」のポイントに欠いているだけに、何でもいいので明るい話題を提供したいということなのだろう。
本当に景気が回復したといえるのは、船を海面まで引き上げた後、船の修繕も終わり、再び出航できる状態になってからである。しかし、青森県内に至っては、どうもまだ船が沈んでいる途中のように思えてならない。
底を打っただけであって、決して経済が回復基調にあるわけではないということ、そしてその時期は、決してすぐに訪れるわけではないということを、肝に銘じなければならない。
余談ではあるが、平成5年6月、当時の船田元経済企画庁長官が景気の底打ちを宣言したところ、急激な円高と冷夏により、その後宣言を撤回せざるを得なかった、ということがあった。
本県では依然オホーツク高気圧の勢力が弱まらず、6月とは思えないほど肌寒い日が続いているような気がするのだが、果たして…。