先日、青森県庁を来年度以降に受験しようと考えている方々を対象としたセミナーが開催されました。
採用試験の概要説明のあと、各部局のブースでの業務説明や、若手職員の体験談などを皆さんにお話しする、というもので、売り手市場が囁かれる中、100名程度の募集に対して90名の申込があり、当日は80名近い方々が参加したそうです。
うちの局のブースも設けらることになっていたため、僕が業務説明を行う方向で準備を進めながら、体験談を語ってくれる若手職員の選定に苦慮していました。というのも、ちょうど同じ時間帯に職員研修が行われることとなっていて、若手職員はみんなそちらに出席することとなっていたから。
結局、業務説明の後に行われる体験談についても僕が担当することに。他のどの部局を見ても「若手職員」が顔を揃える中、勤続25年目、46歳の「若手職員」が体験談を語る…想像しただけでも一種異様な光景だな、と自虐的になっていました。だって、「若手」じゃなくて、完全に親御世代じゃないですか。
会場は一番大きな会議室。しかしここに設置されたブースは3つのみで、他の部局のブースは違うフロアに設置されました。同じような格好をした学生さんが、担当者による採用試験の概要説明に耳を傾けている中、マスコミ数社がカメラを回していました。約30分間にわたる説明が終わると、お目当てのブースめがけて一斉に移動を開始します。
今回、各部局ブースの説明は計4回にわたって行われるのですが、うちの局のブースは2回目、3回目のみの説明となっており、準備はこれから。ちょうどうちの局との対面にある観光局のブースは1回目からの説明だったため、たくさんの方々(30名前後?)が背中を向けて始まるのを待っています。程なく、担当者による説明が始まりました。その模様を横目で見つつ耳を傾けながら、準備を開始します。
1回当たりの時間は40分。10分の移動、休憩時間を挟んで再度40分間、という流れ。業務説明で15分、体験談で15分、残りの10分を質疑応答やフリートークに充てればいいかな、と思っていたのですが…。
同じ会場内に3つあるブースのうち、前述のとおり第1回目から稼働しているのは1つのブースのみでしたが、あっという間に40分が経過しました。説明が終わると同時に、一斉に席を立つ参加者の皆さん。しかし、誰一人として当方のブースに足を向ける人はいません。果たして人が集まるのかな?事前の申込みの時点では9名の学生とその他の1名、計10名がうちのブースへの参加を希望している、とのこと。
一抹の不安がよぎる中、2回目の開始5分ぐらい前から1人、2人と集まり始め、開始直前、気がついたら8名の方が僕の前に座っていました。
さて、それでは始めますか…。
あ、これはスライドの一部なんですが…。
この日のためにパワーポイントで作成したスライドを流しつつ、参加者の皆さんの顔色、表情を見ながら業務内容を説明していきます。自分で作った説明原稿なのに何度も噛みつつも、説明自体は全く苦にならず。
緊張を和ませるため、合間でニヤリとするようなスライドを挟みつつ、約20分で説明を終了。…あれ?想定していたより5分長いぞ。
「続いて若手職員による体験談なのですが…」
参加者の皆さんは、若手職員がどこにいるのかキョロキョロ。
「すいません、私が若手職員の代わりなんです。ごめんなさい。」
一瞬困惑する参加者の中に加わり、対面式に並べた椅子を円型に並べるよう指示。並べられた椅子に僕も座り、参加者と膝をつき合わせるような格好で話を始めました。
参加者の顔はぼかしていますが、皆さん本当に真剣です。だから、こちらも真剣です。
- 参加者の皆さんが生まれる前から今の仕事に就いていること。
- これまで5つの部局を渡り歩いていること。
- 元々公務員志望ではなかったこと。
- 大学3年の時に第一志望の民間企業の面接に失敗したのが公務員を目指す転機となったこと。
- 問題集1冊のみしか勉強しなかったこと。
- 2か所を掛け持ちで受験したこと。
- その時既に、民間企業1社から内定をもらっていたこと。
- ・思いがけず2つとも一次で合格したこと。
- 2次で1つに絞ったこと。
- 採用試験に合格が決まった後に、民間企業へ内定辞退の詫びに出向いたこと。
- その民間企業が、わずか数年後に倒産したこと。
- いざ仕事に就いてみると、これまでの業務は相手あっての業務が大半だったこと。
- 話を理解してもらえず苦労することも多かったこと。
- 相手のことを理解しようと、同じ方向にベクトルを向けることを考えるようになったこと。
- お役所仕事は種々様々であること。
- 役人も型通りではない一方、誰もが百戦錬磨ではないこと。
- 先輩の「真似」を疑うことが時には必要なこと。
- 「慣れ」は自分の足下を掬うこともあり得ること。
- 公務員という枠にとらわれず構築された人間関係は、自分の大きな財産となっていること。
- 公務員の仕事に安定を求めない方がいいこと。
- むしろ船酔いしそうなぐらいの荒波が待ち受けていること。
- 夢や理想は一朝一夕で叶うものではないし、簡単に手には入らないこと。
- 目標を一つ一つクリアすることで、夢や理想に近づいていくこと。
- だから、すぐに投げ出して欲しくないこと。
ざっと羅列するとこんな感じでしょうか。これまでのキャリアを振り返りながら、自分は今まで何をしてきたんだろう、というおさらいにもなって、説明する側なのに何か楽しかったです。
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ある程度整理した原稿にアドリブも加えつつ、何とか15分で話をまとめたのですが、フリートークの時間が5分もないではありませんか!
それでも幾つか質問があったので、僕がわかる、答えられる範囲で回答に応じ、結局予定された時間を2分ほどオーバーして終了。
でも、参加された皆さんがニコニコしながら「ありがとうございました!」と言いながら席を離れていったので、そんなに悪くはなかったのでしょう、か…。
10分後に再開された2巡目の参加者は4名。少なっ!と思うなかれ。当初申込みのあった10名より2人増えているじゃないですか!
先に隣のブースで話を聞いたという方が参加しており、恐らく急遽参加してきたんじゃないか、と推測。2巡目も全くスタイルを変えずに説明を行ったのですが、後で担当者に聞いたところ、参加者と車座になって話をしていたのは、このブース以外なかったようです。
いや、対面形式も悪くないのですが、参加者と少しでも距離感を縮めるというか、役人の雰囲気を少しでも掴んで欲しい、そう思っただけの話なのですが…。
こういうものって、当然スピーカーによって内容もやり方も全然違うと思います。お堅くやろうと思えばいくらでもできますが、学生さんはそれを望んでいるでしょうか。
僕としては、参加してくる学生さんがこの日、何を知りたくてやってきたのか、そのことを意識した発表に努めたつもり。でも、正直言って参考になったかどうかはわかりません。参加された皆さんの感じ方もそれぞれ異なって当然、中には「何だこの内容は」と思った人がいるかも知れません。いや、むしろそういう方がいた方がいいんです。こちらとしては今回の内容で満足しているわけではないので、そういった意見等を踏まえ、またブラッシュアップしていけばいいんだから。
ただ、一つだけ言えること。
実のところ、学生さんに向けた資料を作成し、お話をしていく中でこちらも色々勉強になったし、参考にもなりました。こういう機会を得られたことに感謝です。
今回セミナーへ参加された方には一人でも多く受験して頂き、一人でも多くの方に我が社へ入庁していただければ本望です。