明日、急遽休みをいただいて運転免許の更新に出向くことにした。
一応これでも優良講習、というか職業柄、それ以外の講習は許されないんだけど。ということで、今回の免許更新で再び5年間の有効期間が与えられる。
今の免許証は5年前に更新したものだが、当時の顔写真とあまり相違ないと思っているのは、僕だけかも知れない。
普通自動車免許を取得したのが、平成元年7月。それ以来、(一応)無事故無違反を25年間。そして、何度目か忘れたが再び免許更新の時期を迎えた。
今回は、妻が卒業した小学校のあった場所に新しくできた弘前地区運転免許センターでの免許更新となる。
ちなみにさきほど(一応)と記したが、運転免許証の裏に何か書かれたことは、ない。れっきとした無違反である。
一方、無事故とは言うが、対人対物がないだけの話、自損事故は数回やらかしている。
そういえば昔は(今も?)「ハンドルを握ると性格が変わるよね。」とよく言われていた。結構粗暴、無謀な運転をしていたらしい。
自宅の前の県道を、我が物顔で何重にも広がってチンタラチンタラ走る中学生の自転車の車列を見て、カッと頭に血が上り、その連中に気を取られながら後退したら、自宅横にあった電信柱に激突したり、電柱から伸びる支線に気づかず、助手席側の側面を思い切りこすったり、T字路の交差点を右折する際に、左からやってきた自転車に気を取られて、運転席側のサイドミラーを電信柱にぶつけて折ったり…。
こうやってみると、電信柱がどんだけ好きなんだ?って感じなんだけど、車は痛い思いをしたものの、(一応)身体は無傷だった。
…で、またまた(一応)と記したが、一つとんでもない自損事故をやらかしたことがある。もう10年以上前の話。ちなみにこちらは、電信柱は関係なし。
その頃僕は、日本海に面した鰺ヶ沢町にある職場に勤務していて、毎日弘前の自宅から岩木山麓に沿うように車を走らせていた。
冬場は雪が多く、運転には慎重にならざるを得なかったのだが、その日は天気もよく、ちょっと油断していたらしい。
いつもの広域農道は除雪車が入った形跡がなく、轍の上に新雪がうっすらと積もっていた。道は比較的広く、急カーブなどもないので、走りやすいと言えば走りやすい。ただ、アップダウンが非常に多く、対向車には常に気を遣わなければならなかった。
朝の通勤時間帯は大体走っている車が同じだ。僕のように弘前市内から同じ方面に向かう人たち。同じ職場の人だったり、学校の先生だったり。
その日も普通に車を走らせていたのだが、ちょっと油断したらハンドルを取られた。
うわっ!と思いハンドルを切ろうとしたら、車はツツーッとハンドルを切った方向とは逆方向に滑っている。まずい!と思ったその時、車は轍を外れ、車道の横の小高い丘へ進み始めた!運悪く下り坂。路面が凍結していて、ブレーキも効かない。
まずい!と思ったその時、僕がハンドルを握るその車は、哀れそのままぐんぐん小高い丘へと向かって進み、何と横転…。
その瞬間、色んなことが走馬燈のように駆け巡り、スローモーションのごとく車がゆっくりと横倒しになっていく。助手席側のミラーがポキィィィンン…とエコー音を響かせながら(と勝手に思っていただけ)折れていくのが見えた。
そして何を思ったのか僕は、横転の瞬間、助手席に置いていた弁当の入った袋を、咄嗟に握っていた(笑)。
轍のできた雪道を時速50キロぐらいで走行していた時の、過信が招いた自損事故。
ルパン三世よろしく横転した運転席側のドアを開け、よっこらしょと車から降りる。
前後を走っていた車の人たちが、驚いたように駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫か?怪我は?」
「ハイ、全然大丈夫です。」
車を降りた僕の手にはなぜか弁当の入った袋。僕自身はホントに無傷なのだ。
とはいえ実はかなり動揺していたが、それを悟られないように冷静を装っている自分がいるのがわかった。
「あの…すいません。一緒に車を起こしてもらっても、いいですか?」
「…はい?」
きょとんとする他のドライバー。
何を思ったのか僕は、横転した軽自動車を元に戻して欲しいと言い出したのだ。
「えっ?あっ、ああ…いいよ。」
僕を含め、男性4人ぐらいもいただろうか。
横転していた車をヨイショッと起こす。軽自動車だったのが不幸中の幸い、バウンドしながら、車は元の「四つ足」の体制を立て直した。ただし、向いている方向が職場とは反対方向ではあったが。
「ありがとうございました!もう大丈夫ですから。」
「ホントに大丈夫か?」
「ほら…。」
といってエンジンを掛ける僕。何事もなかったかのようにブルンと小さなエンジン音を上げる車。よかった…。
「あ、ホントだ。じゃ、気を付けてな。」
ドライバーの方々がそれぞれの車に戻り、再び通勤へと戻る。それに対して、深々と頭を下げる僕。
転がっていたサイドミラーを手に、何を思ったのか僕も、そのまま何食わぬ顔で通勤の途に就いた。
…が、さすがに職場に着いてから動揺を抑えきれず、結局午後から休みをいただき、まっすぐお世話になっている取扱店へ。
事故の起きた状況を説明すると、「よく無事だったね!」と驚かれた。僕自身は大したことがないと思っていたけど、どうやらそうではなかったようだ。
後で聞いたところによると、あの時保険が適用になったのでよかったものの、修理費用として30万円以上かかったらしい。
今でこそ笑い話にはなっているが、もしも保険が適用にならなかったら…と思うと、ホントに恐ろしい。
調子に乗ると足下を掬われるという、典型的な自損事故だった。
あの後も数回、ちょこちょことやらかしてはいるが、今のところ大事に至っていないのは、たまたま運がよかっただけのことなのかも知れない。