【前篇から続く】
膠着状態が続いた中盤を端折り、レースは一気に後半へと進みます。(というか、中盤の記憶があまりないのです。)
6キロ過ぎから何となくまとまった5名の集団は、互いに引っ張り、引っ張られながら既に約10キロを一緒に走っていました。一度バラバラになりかけていた17キロの給水地点、またここでグループが団子状態になります。
スポンジを一つ手にしたところ、二つ取ってしまいました。ちょうど前にSくんがいたので、横にスッと出ておもむろに「はい」と手を差し出すと、驚いたような表情で「お!どうも…。」
ここでギアを一つ入れ直し、Sくんの前に。6キロ付近からずっと僕が後ろについてきていたとは思っていなかったらしく、小声で「すげえな…」と呟く声が聞こえました。いや、凄くないんです。ここまで来られたのは、あなたのおかげなのですよ。
例のランナーは相変わらず一人だけ賑やかというか、うるさいランを続けていましたが、この給水でピタリと後ろにつかれることとなりました。申し訳ないけれど、背後でホントうるさい。こうなると彼に惑わされることなく自分の気持ちを保つためのメンタルトレーニングをしているような状況。しかし、さすがに我慢できなくなり、わざと左右へ大きくぶれた後にペースを落とし、白糠町ランナーと並走する彼を前へと送り出します。
最後の難関、18キロから西へと進む2キロ弱の直線は、周囲に何もなく、誰もいない試練の区間。予想通り強い向かい風となり、何度も心折れそうになりながら前に進むことだけを考えます。先行しているのは彼を含む3人。食らいつこうにも脚が前に出ず、徐々に距離を離されていくのがわかります。しかし、ここで心折れては今までの走りが全て無になります。もう一度気合いを入れ直し、我慢我慢、耐えろ耐えろと口にしながら、金木町内へと右折しました。
一気に声援を送る人の数が増えるこの通りで、先行していた3人から、彼がまたズルズルと落ちてきました。
しかしここまで来たら、一緒に走ってきたという連帯感のようなものが芽生えていました。毎回スルーと決めている20キロの給水所で横に並んだ時、彼にハッパを掛けます。
「さあ、あと1キロ!頑張れ頑張れ!まだ行けるだろ!」
「はぁ、はぁ…キツい!」
「さあ、行くぞほら!」
何だか彼のペーサーをやっているような気分になってきました。
…しかし、それなりに余裕を持ってペースを上げながら先行する僕(と思っていたのは間違いで、実は全然ペースが上がっていなかった)に必死に食らいつくも、とうとう脚が売り切れたらしく、背後から聞こえてくる「はぁ、はぁ、キツい!」というその声がどんどん小さくなっていきました。
こちらはラストスパートとばかりにゴールの金木小学校へ向けての最後の力走。間もなく、今回残念ながらDNSとなったSさん、そしてKさんの姿が視界に飛び込み、思わずサングラスを外して笑顔に。
「また自己新更新、行けるんじゃないですか!」
「残り100メートル!ガンバガンバ!」
一つ一つの声援を最後の励みにしながら、ゴールへ。電光掲示板には01:25の文字が飛び込んできました。
「おおお!1時間25分台!ベスト更新だ!」
思わず笑みがこぼれます。
両手を掲げながら、ゴール!
1時間25分49秒。つい先日、5月14日に仙台で弾き出した自己ベストから2分以上の短縮!
ドリンクを手に駆け寄ってきたのは、毎年度運営のお手伝いをしている高校時代の同級生だったNちゃん。
「凄い凄い!お疲れさま!」
「ありがとう!」と思わず握手。
「…あ、すぐ後ろからSも来るから!」
ふと振り返ると、例のランナーがゴール。
詰め寄って「あのさ…」と苦言を呈する前に、先方が疲労困憊の表情で近づいて来ました。思わず「お疲れさま。ナイスラン!」と言葉が飛び出しました。
だって、抜きつ抜かれつここまで一緒に走ってきた同志だから…。
「はぁ、はぁ…最後、声を掛けてくれてありがとうございました!オレ、実は5年ぶり2回目のハーフで、走れるか不安で不安で…皆さんについたおかげで、ここまで来ることができました。本当にありがとうございました!」
それを聞いて納得。苦言が喉の奥へと引っ込んで行きました。
ポンポンと肩を叩きながら、
「いい走りだったよ!ホントお疲れさま!」
と一言。
…しかし、2度目のハーフマラソンでこのタイム。どんだけポテンシャル高いんでしょう。
その直後にSくんがゴール。
途中まで引っ張ってくれたお礼を短く伝え、握手を交わします。
完走証を受け取り、荷物受け取り場所の体育館へと向かっていた時に、今度はSくんの兄、Kさんと遭遇。
「お疲れさまでした!」
「お疲れさま!随分速かったんじゃない?」
「はい、おかげさまで25分台…。」
「おお!凄い!…でもさ、やっぱり距離短くなかった?」
「…え?」
GPS時計を改めて見ると、今走ってきたところの距離表示は20.8キロ。ハーフマラソンには300メートル足りていません。
何だ、これじゃあ25分台も糠喜びじゃないか…。
とはいえ、今後の一つの目安になることは紛れもない事実なので、これはこれで喜びを噛み締めようと思います。
苦しむような暑さに見舞われた前回とは打って変わって今回、曇り空という気候にも恵まれて(個人的には)非常に走りやすかったです。
何よりも、18キロまでは4分10秒を切るペースでほぼ一定に走ることができたことが収穫。
しかしその一方で、18キロから風の影響とはいえ一気にペースダウンしたのは猛反省しなければならない点。
うむ…心が折れかけたのは事実だったし。
途中に新たに設けられた折り返しは、何とも中途半端な感じがあったのも事実。結局昨年から100メートル程度距離が伸びただけでした。まあ、これはまた今後何らかの形で解消されていくことでしょう。でも、病み上がりだった昨年の記録から10分タイムを縮め、これまでのこのコースの持ちタイムから、距離が少し伸びても5分タイムを縮めたことは、それなりに評価してもいいですよね。
ただ、これに満足することなく、また明確な目標を打ち立てることもできそうです。その目標が何なのかは、今は心に留めておきたいと思います。
…あ、そうそう。ちょっとグロいお話を。
実はスタート前から、左足の指にチクチクと突き刺すような痛みが走っていたんです。
走り終えて靴を脱いだらビックリ!
何とソックスに血糊がベットリ!
何事かとユックリ靴下を脱ぐと…
何と、左脚中指に薬指の爪がザックリ刺さっていたのでした..。
とほほ…これじゃ痛いワケだ…。
今回の教訓。
足の指の爪は、事前にこまめにチェックしましょう。
※走っている時の写真を撮影して下さったYさん、Nちゃんに感謝します。本当にありがとうございました!
【終わり】