日別アーカイブ: 2017-02-17

やはり警鐘は鳴らされた。-マラソン人口の減少、大会の飽和状態を懸念する

僕のフルマラソン歴も今年で5年目に突入。全国各地でマラソン大会が開催される中、これまで14のレースに出場した。北海道3回、田沢湖3回、さいたま国際2回、勝田1回、NAHA1回、そして地元の弘前・白神アップル4回。これに北東北3県で開催されたハーフマラソンへの出場歴も加えると、結構な数の「遠征」をしていることになる。ただし、北海道・東北を除く大会となると、その遠征も4度にとどまる。生まれて初めて「弘前・白神アップルマラソン」でフルマラソンに出場した年を除くと、北海道と田沢湖は毎年出場しており、それ以外に大体1年に1度のペースで他県でのレースを組み入れている計算になる。
しかし、大会に出場した翌日に仕事を休んだのは、NAHAマラソンに出場した時の1度だけ。大会を終えた日曜日のうちに青森へ戻ることが、物理的に困難だったからだ。(その気になって戻ろうと思えば戻れたのだけれど、せっかく沖縄まで足を運んだのだから、一日ぐらい楽しませて欲しい、そう思っただけのこと。)
何もこれは僕に限ったことではなく、ある意味ランナーの「意地」みたいなものなのかも知れない。
職場内で僕がマラソンを趣味としていることは周知の事実。だからこそ大会の翌日は、絶対に疲労感や痛いという素振りを見せないようにしている。まるで何事もなかったかのように平然と過ごすという、とてつもなく些細で、そしてとてつもなく小さな「意地」。

フルマラソン5年目ということは、弘前公園ランニングクラブの一員として練習に参加するようになってから、6年目に突入することになる。最初は10名に満たない程度で練習をしていたのが、気がつくと200人以上、しかもクラブの理念に「賛同」するランナーは全国各地にいるし、弘前市内でもかなり認知度の高いランニングクラブとなっていることは、紛れもない事実だ。
うちのクラブは、会費もなければ名簿もない、ある意味出入りの自由なクラブ。だから変な話だけど、クラブのトレードマークともなっている「No Apple,No Life」の文字が胸に刻まれたピンク色のTシャツ欲しさにクラブにやってくる人がいるのも事実。我々がバックアップしている「弘前・白神アップルマラソン」の開催時期が近づくと急に練習の参加者が増え、大会が終わった途端に一気に参加者が減る、ということを毎年繰り返している。

確かに前述の通り、うちのクラブでも一度だけ参加して姿を見なくなった人がたくさんいる…ような気がする。しかし実は、渡り鳥のように毎年限られた期間、つまりアップルマラソンの直前だけ練習に参加しているだけなのかも知れない。その一方で、残念ながら走ることを止めてしまった人がいることも、知っている。早起きしてまで練習について行けない、故障した、そもそも身体に合わない、楽しくない…人それぞれ色んな事情があるだろうし、それを諫めてまで「また一緒に走りましょうよ!」なんて誘うことは、口が裂けても言ってはならないことだ。

僕らみたいにランニングにドップリとはまり込んでしまう人もいれば、年に一度の大会をお祭り気分で楽しめればいい、という考えを持っている人もいることだろう。別に、年がら年中走り続けなければならない、というルールはどこにもない。だから、「趣味はランニングです。」と言っているからといって、必ずしも毎日走り込んでいるわけではないだろうし(実際僕だってずっと走っているわけではない)、中には自転車や水泳、トレッキングなど、複合的に身体を動かすことを趣味とする中で、その手段の一つとしてランニングを取り入れている人もいることだろう。1千万人近くいると言われる市民ランナー、色んな人がいて当然なのである。

ご存じのとおり、東京マラソンが注目を浴びた2006年頃から、日本のランナー人口は急激に増えた。ランニングがブームとなり、トレンドとなり、そしてファッションとなり、皇居の周りはランナー渋滞が起きるほど。その中で、マナーを守らない(知らない)一部のランナーが現れたことで、ランニングは社会問題としても捉えられるようになった。
しかしブームというのは恐ろしいもので、昨年辺りからランナー人口は減少傾向にあるらしい。

先日、日本経済新聞に興味深い記事が掲載されていた。
ランナー置き去り 市民マラソン、バブル崩壊
(無料会員登録で全文を読むことができます。)

何か、懸念していたことが現実に起こりつつあるんだな、ということを目の当たりにしたような気分。
記事の内容を端的にまとめると、ランナー人口が減少しつつあるのに依然として各地で誘致するマラソン大会が増えていること、結果として参加者が減少、歴史ある大会が静かに幕を下ろしていること、高額な参加費であるにもかかわらず、運営が全く行き届いていない大会があること、他方、自治体の予算に一切頼らず参加者を増やしている大会があること…。

この記事で槍玉に挙げられていたのは、「さいたま国際マラソン」。
まだ2回しか開催されていない歴史の浅いこの大会、「女子マラソンの選考大会」であった「横浜国際女子マラソン」の後釜として開催されていて、僕も2度出場している。2回目の開催にしてコースを変更し、制限時間を4時間から6時間に拡大、参加人数が5千人から1万6千人に急増した結果、「給食がない」「ボランティアが圧倒的に足りない」などの問題が発生したとのこと。何よりも、参加費が国内で最高値である1万5千円だということも、批判を浴びる一因になっていることは紛れもない事実だ。要するに、高額な割には費用対効果が全くといっていいほどない大会だからこそ、批判が殺到しているのだろう。まだ手探り状態での大会運営、長い目で見守ってあげようよ…という気持ちもちょっとだけあるにはあるのだけれど。

まず、そもそも横浜国際女子マラソンが「財政難」を理由に幕を下ろしたのに、さいたま国際マラソンに変わったからといって急にスポンサーが増えるはずがないのだ。まして東京五輪が近づく中で、今のところこの大会からは一度も国際大会の代表を輩出できていない。選考レースであるにもかかわらず、だ。これらも含めて、完全な見込み違いが運営側には渦巻いていることだろう。(ちなみに同じ日本経済新聞ですが、「ランナー集まれ」の吉田誠一編集委員が、手短に、かつ辛辣にこの大会を批判しています。)
まあ、ここでさいたま国際マラソンを批判するのは今日の趣旨とは違うのでこれぐらいにしておくが、それでも多分今年もさいたまを走っちゃうんだろうな、きっと。

何よりも、同じ日に各地でマラソン大会が開催されること、そしてそれが10月から12月にかけて毎週のように繰り広げられていることで、大会参加者が分散していることは明らかなのだけれど、その上でランナー人口が減少し、大会が増えるというのは、例えるならば人口減少地域にコンビニが乱立していくのと似ている。…いや、本質的には違うのかも知れないが、要するに既に少なくなったパイの奪い合い状態になりつつあるということだ。

毎週各地のフルマラソンに出場できる気力、体力、そして何よりも財力があれば話は別だが、僕個人としては、青森県から他都道府県の大会に出場するとなると、ある程度の取捨選択が必要になる。
現時点においても既に、5月に開催される「いわて奥州きらめきマラソン」、そして10月に開催される「東北・みやぎ復興マラソン」と、東北地方だけでも二つフルマラソンの大会が新設されることが決まっている。しかもこの大会、二つとも日本陸連公認大会・公認レースを申請しているのだとか。(更に「東北・みやぎ復興マラソン」、ウェーブスタートを取り入れるんだってさ!)

ただ…興味が全くないわけではないけれど、今のところどちらの大会にも参加する予定はなし。

一つ大きな問題なのは、10月に初めて開催される「東北・みやぎ復興マラソン」と同日に開催されるのが、地元で開催される「弘前・白神アップルマラソン」だということ。例年通りであればこの日は、全国ランニング大会100撰にも選出されている「山形まるごとマラソン」も開催されることとなっており、この日、東北地方だけで3つの大会が開催されることとなる。
下手をすれば「東北・みやぎ復興マラソン」が全国ランニング大会100撰に選出される可能性だって否定できないわけだし、そうなると、現時点では100撰に漏れるであろう「アップルマラソン」の存在価値がますます下がっていくことは必至。

実は弘前・白神アップルマラソンの今後についてはこれまで何度も警鐘を鳴らしており、その中でもこれら二つの大会との競合について危機感を持っている。
「「弘前・白神アップルマラソン」の行く末を 【再度】 考える」(2016年12月10日付け投稿

アップルマラソンに関しては、来年以降の大会の見直しを検討し始めるらしいけれど、今年は間違いなく参加者が激減すると断言しよう。特に、県外からのランナーの数は極端に減りそうな気が…。
となるとむしろ今は、どれぐらいまで参加者が落ち込んでしまうのかに興味があるぐらい。

参加者が減った → 予算が足りなくなった → 参加料を上げた → 更に参加者が減った → …

という「負のスパイラル」に陥る前に手を打たないと、青森県内唯一のフルマラソンの大会を開催することができなくなってしまいますよ、ホントに。開催直前の中止で大きな問題となった荒川マラソンや、参加者が集まりすぎて中止になった伊豆マラソンは別として、逆に参加者が少なすぎて中止になった日光ハイウェイマラソンとか、既に開催を見送らざるを得ない状況に追い込まれている大会が出てきているのですよ。

こうやって見ると、「東北風土マラソン&フェスティバル」のような、フランスのメドックマラソンを模したような個性的な大会にするのか、それとも、シリアスランナー向けの大会にするのか。大会が飽和状態になっている中で、アップルマラソンの運営も過渡期を迎えていることは間違いありませんな。

公認レースにもしない、他の大会が開催されようとも内容を変えるつもりがない…というならば、いっそのこと、ホントのお祭りみたいにしてしまった方がいいのかも知れないね。どうせ人数が減るんだったら、いっそのこと「弘前市りんご公園」を主会場にすればいいんじゃない?とか考えてみたり。

…でもね、やっぱり僕は、弘前・白神アップルマラソンを盛り上げるために微力ではあるけれどずっとお手伝いしますよ。どれだけ参加者が減ろうとも、ゴールを迎えるランナーの皆さんに「お帰りなさい!お疲れさま!」って、これからも声を掛け続けたいと思います。