表面張力ギリギリに水の張ったコップに、
1円玉を一枚ずつ、そっと落としていく。
水が溢れないよう、そっと落としていく。
でも、誰かが5円玉を一枚落とした。
他の誰かが100円玉を一枚落とした。
他の誰かが500円玉を一枚落とした。
コップの水は、その都度溢れた。
やがてコップは硬貨で一杯になった。
コップの中の硬貨欲しさに、
誰かがコップをひっくり返した。
コップの中の僅かな水は全て空になった。
硬貨も全てなくなった。
これでいいんだ。きっと。
でも僕は、コップの水を元に戻す術を知らない。
空のコップは、僕の涙で一杯になった。
そしてまた僕は、コップに1円玉をそっと落としていく。
黙々と。淡々と。