日別アーカイブ: 2006-06-15

コップ


表面張力ギリギリに水の張ったコップに、

1円玉を一枚ずつ、そっと落としていく。

水が溢れないよう、そっと落としていく。

でも、誰かが5円玉を一枚落とした。

他の誰かが100円玉を一枚落とした。

他の誰かが500円玉を一枚落とした。

コップの水は、その都度溢れた。

やがてコップは硬貨で一杯になった。

コップの中の硬貨欲しさに、

誰かがコップをひっくり返した。

コップの中の僅かな水は全て空になった。

硬貨も全てなくなった。

これでいいんだ。きっと。

でも僕は、コップの水を元に戻す術を知らない。

空のコップは、僕の涙で一杯になった。

そしてまた僕は、コップに1円玉をそっと落としていく。

黙々と。淡々と。