3度目となる青森中央学院大学、佐藤淳准教授の公開講座への参加。
今回は、「SIM熊本2030」という対話型自治体経営シミュレーションゲームの体験でした。
以下、告知内容。
【青森中央学院大学佐藤淳研究室公開講座】
『SIM熊本2030(対話型自治体経営シミュレーションゲーム)@青森』体験会
自治体の財政問題が注目される中、行政職員を中心に、財政を考えるきっかけとして全国に広がり始めている対話型自治体経営シミレーションゲーム「SIM」。そのオリジナル版である「SIM熊本2030」の開発者である熊本県庁の和田大志さんをお招きして、青森県内初のSIM体験会を開催します。
「SIM」とは、2030年までに架空の市に迫り来る課題に対し、その市の幹部となって1チーム5〜6人で解決策を探るシミュレーションゲーム。チームでの対話により事業の選択と集中を進め、課題を乗り越え、2030年に市を理想の街に導きます。オリジナル版の熊本からスタートして、現在各地にご当地版が誕生しています。日時:2017年2月25日(土) 13:30~17:30
場所:青森中央学院大学7号館1階フリースペース
講師:熊本県庁 和田大志さん
・「SIM熊本2030」開発者
・早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会
マネ友
対象:地方自治体の財政問題に関心のある、行政職員、地方議員、市民
*初心者の方でも楽しく参加できます。
参加費:無料
1チーム6人で構成されたチームのメンバーは、それぞれが何をしている人なのか素性を明かさぬまま、架空の市の部長に任命され、各部の事業カードと財源が渡されたところからゲームがスタートします。
恐らく今後、各地の自治体が直面であろう人口減少問題や高齢化の問題、そしてそれによって起こる税収減や社会保障費の増大による起こる様々な課題に対してどういった対応をするのかを、1クール当たり25分間でプレイヤーの各部長が知恵を出し合いながら解決への方向を探り、結論まで持って行かなければなりません。更に、課題解決に向けた財源を捻出するために、限られた事業を削減するとともに、それに伴って発生する新たな影響への対応や、住民や議会、場合によっては首長に対する説明責任などを、どのように果たしていくのかを考えます。
そこで納得の得られる説明ができなければ、事業の削減は認められず、公債を発行することとなります。
そして、公債の発行が続いた場合、当然その市は財政破綻した、と見なされてしまいます。つまり、ゲームオーバーということに。
あまり深く考えず、何か面白そうだな、と思って参加してみたのですが、いざ始まるとこれがもう、スリリングというか緊張の連続。「初心者の方でも楽しく参加できます」という触れ込みでしたが、心の底から「楽しい」とは言い難いゲームでした(苦笑)。
実際、かなり熱い議論や丁々発止に近いやり取りを交わす場面もあったりで、これがゲームで本当に良かった…と思う場面にも何度か遭遇しました。
(査定役に回った講師の和田さんに、選択の内容を「糾弾」されている様子(笑)。このポーズをしている時は、思考停止に陥っているか、腑に落ちないことがあったかのどちらかだと思います。)
(皆さん笑っていますが、内心かなりビビっています。腕を組んだまま警戒心を解いていないのが何よりの証拠。)
開始から3時間が経過してようやく明かされたグループメンバーの素性。僕が参加したグループは議員1名、自治体職員3名、学生1名、そして民間人1名というバラエティに富んだ構成でした。
始まった直後はあまりにも唐突な課題への対処に困惑し、チームの中も何となくギクシャクしていた感がありましたが、架空の市(たまたまテーブルの上にジャスミン茶のペットボトルがあった、という理由で「ジャスミン市」と命名)の進むべき方向性が決まった後は、各部長が単なるその場しのぎの思いつきではない知恵と発想を出し合いながら、比較的それ相応の取捨選択ができたのではないかと思っています。(僕が今後の方向性や取組方法を発言したら、「それを紙に書いてください!」と和田さんに咎められました。)
…ただし、発想が飛躍しすぎて「都合の良い解釈」になっていたこともありましたが。
(いたって本気に考えていたんです。こんなに真剣になるとは!)
ジャスミン市の基幹産業をどう発展させ、その中で高齢化社会や少子化といった課題にどう対応していくか、そのためにどういった自治体運営を進めて行くべきか。限られた時間の中で限られた選択をしなければならないという、非常に緊張感あふれる状況の中、かなりピリピリした空気が流れました。これはこのゲームを実体験してみないと、なかなか伝わりにくいと思いますが、私、ゲームの途中で何度思考が停止状態に陥ったことか。というか、最初から偏った思考(実はずっと、「市民の命を守る」という考えに固執していました)を抱き続けていたために、同じチームの皆さんには色々ご迷惑をお掛けしてしまったかも知れません。
我々の業界には「縦割り」という言葉が蔓延っていますが、まさにこの「縦割り」を排除するとともに、縦横斜めに丸く四角くく…いや、縦横無尽というか四次元的な発想を展開しないと、説明責任は果たせないのだな、ということを強く感じました。
(「ジャスミン市」の進むべき方向性が固まりつつある中、ようやくみんなのベクトルも同じ方向に。)
しかし、これほど緊張感を強いられるとは思ってもみなかったことなので、終わる頃にはすっかり疲労困憊でした。
肉体的な疲労ではなく、精神的というか、頭脳の疲労。
(2030年における「ジャスミン市」のあるべき姿を議論中。)
13時30分から17時30分までの間に挟んだ休憩はわずか15分のみで、参加された皆さんがこぞって「脳に汗をかいた」と感想を漏らしていたのを拝見しながら、まさに的を射た適切な表現だと思いました。
頭脳が疲労を覚えるという状態に陥ることも、久しくなかったことでした。裏を返せば、これまではそれだけ「のほほん」とした日々を過ごしていたのかも知れません。
正直、この体験が終わった直後は、あまりの疲労感に「SIM熊本2030」のことなど考えたくもないし振り返りたくないと考えていましたが、こうやって改めて振り返ってみた時に、もし、もう一度違う立場(部長)として、違うメンバーでこれに取り組んだ時は、どういった結論が導き出されるのだろうか、などということを考えてしまいました。
つまり、「これが正解」という答えがないゲームなんですね。
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2030年問題、すなわち超高齢化社会の到来は、日本国内どの自治体にも起こりうる大きな問題であり、この問題に対してどう手を打っていくのかは、一つの自治体だけで済まされる話ではないのかも知れません。
しかしながら青森県は既に人口が130万人を割り込むという現実に直面しており、今後、様々な分野への影響が起こることは敢えてここで言うまでもないことだと思います。
その中において、どういった取捨選択をしながら自治体運営をしていくか、イメージだけではなく具体化しながら進めて行かなければならない、そういう時期がもうやってきているんだということを改めて感じた次第。
話が少し脱線します。
実はこの日の夜、頭が疲労困憊の状態ではありましたが、平川市の某氏からの誘いで、ほとんど初見といってもいい顔ぶれ(1~2度会っている方が大半)が集結した飲み会へ足を運びました。(…そして二次会の途中から記憶を落としました。Instagramにアップしましたが、なぜか自分の影の写真を撮影していたみたいです。)
そこに、とある高等学校の先生が同席されていたので、以前から悶々と考えていることを一つお話ししました。端的、ではないのですが、こういうことです。
青森県でも少子高齢化が進んでいるとはいうものの、実はその「少子」を、県として活かし切れていないのではないか。つまり、本県の学生や生徒の中には優秀な能力や才能(以下「能力」とだけ言います。)を持つ人たちが数多いるというのに、県(行政側)はその人たちの能力を見過ごしたまま、その能力の県外への流出を食い止めるための手段を全くといっていいほど講じていないのではないか。
さて、この能力を県全体で活かすためにはどうしたらいいでしょう。
その能力を活かすだけの、それに見合った雇用の場がないといった問題もあるかも知れません。
でも、そもそもそういった情報がそれぞれの立場で共有されていないということの方が、実は問題なのではないかと思ったのです。
これぞまさに縦割りの弊害。
公務員志望の学生・生徒が自治体職員や教員と交流する場は時々見かけますが、自治体職員と教員の皆さんが交流する場って、実はあまりないような気がするのです。
多分、そこで得られる情報は双方にとって結構有益なのではないか、と。そういう交流の場を設けることによって、双方のニーズを次の施策や政策に反映させていく、というきっかけにならないかなあ、と朧気ながら考えている次第です。
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最後に。
体験しないとわからない、やってみないとわからないということはたくさんありますが、本県初開催となった「SIM熊本2030」の体験会、頭の中をこねくり返して硬直化していた思考を柔軟にする、という点において、非常に有意義な時間であったことは間違いありません。告知にもあったとおり、各地域版が派生して誕生しているとのことですので、本県の各自治体でも取組が一気に加速化するかも知れません。微力ではありますが、何らかの形でその取組に携わることができるのならば本望ですが、だったら自分でやれよ、と言われるのがオチなので口を慎みます。
一番心に響いたのは、「対立」を「対話」で乗り越える、という言葉。端から「否定」するのではなく、まずは「理解」する努力を怠らない。胸に秘めておこうと思います。
参加された皆さん、大変お疲れさまでした。ギリギリになってからの参加申込みを快く受け入れて下さった佐藤准教授にも、この場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。