今日のネタはウソだらけ、噓八百が全くのデタラメならば、嘘六百ぐらい。今晩は空想に満ちた投稿です。あらかじめご了承を。
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11月24日は11月最後の金曜日。クリスマスにハロウィンと、他国の行事をあたかも自国の行事のようにパクるのが大好きな日本人が次に目を付けたのが、ブラックフライデー。ちなみに今日は、政府が提唱するプレミアムフライデーでもある。
ここで改めてブラックフライデー、そしてプレミアムフライデーが何なのかを確認しよう。
ブラックフライデー:アメリカ合衆国で感謝祭(11月の第4木曜日)翌日の金曜日のこと。クリスマス・セールが始まり、小売店が大きく黒字になることからこう呼ばれる。
プレミアムフライデー:2017年に日本国政府と経済界が提唱した個人消費喚起キャンペーン。略称はプレ金。プレミアムフライデーにセールやキャンペーンを実施している企業のうち、来店者増加は約7割で売り上げ増加は5割越えであり、イベントとして当初の目的である消費の拡大には貢献している。
ブラックフライデーは、米国において感謝祭の翌日ということで始まったクリスマス・セール。これに対しプレミアムフライデーは、日本の政府主導で始まったものである。
今年からプレミアムフライデーを提唱する政府、与党は、ブラックフライデーが席巻する事態を黙認するわけにはいかなかった。そこで突如登場したのが、政府が直接交渉し、三顧の礼で迎え入れたという強烈なキャラクターだった。
遅まきながらの「ピコ太郎」ブームに便乗しようという魂胆が見え見えだが、既にピコ太郎がブームを過ぎていることに気付いていないあたりが、さすが政府といったところだろうか。
その名も「アソ太郎」。
黒いソフト帽を被り、黒づくめの衣装という華やかさの欠片も感じられないその風貌は、一見すると麻生太郎副総理にも似ている。派手な金色の衣装で全身を包んだピコ太郎とは全く異質の、こちらもかなり風変わりとも言える雰囲気である。そして、プレミアム感が感じられないその姿は、むしろブラックフライデーのキャラクター、といったところだろうか。
会見場に現れたアソ太郎氏は、いつになくまばらな記者席を一瞥すると、ふんぞり返るように椅子に座り、浪曲師のような濁声で自己紹介を始めた。
「アイ、アム、あ、アソ太郎。」
口を斜め30度にひん曲げながら、本人曰く「流暢な」英語での自己紹介にご満悦の表情を浮かべるアソ太郎氏。
誰も質問しないのを見かねた記者が、切り出した。
- 今回プレミアムフライデーのキャラクターに就任した経緯を教えて下さい。
「うむ…大体だな、ブロックだかブラックだかよくわからんけど、そういう黒船みたいな風習を日本に勝手に持ち込むなんぞ考えられないのだよ。大体にして、キミはこの状況をどう思う。」
- ということは、ブラックフライデーには反対、と?
「だから、人の話をよく聞けっつうんだ。お前さん、どこの記者だ?」
(いや、ちゃんと聞いているんですけど…)
「日本人には日本人の気概があると思うんだな。それを…あれだよ、あのー…だから…まあ、つまりだな…ザ・日本を取り戻したいわけだ。うん。」
- …かなり歯切れが悪いようにも聞こえるのですが、それは政府としての方針なのでしょうか。
「ば、バカなこと言うんじゃないよ!オレは別に政府の人間じゃねえんだから。」
- でも日本の景気底上げに繋がれば、それはいいことですよね。
「日本は既に十分なぐらい景気回復してるじゃねえか。これもアベノミクスの成果だ。大体だな、日本の経済は、経済を知らない連中が煽っているだけなんだよ。」
- お、お言葉を返すようですが、そこまで言って大丈夫ですか?
「だから…一番の問題は、今日この場にいるのが、何をしに来たのかわからない連中ばっかりだってことだ。」
- ところで、サイバーマンデーってご存じですか?
「…えっ?(沈黙のあと、小声で)何それ。」
- サイバーマンデー…なんですけど。
「あ、あ、あ、そう…(ニヤニヤ)。ところでアソ太郎の話はどうした?いいのか?ん?じゃ、会見終わり。」
こちらからの質問にはほとんど何も答えることなく、一方的に持論を展開した挙げ句、明らかに狼狽しながら会見場を後にしたアソ太郎氏。
しかし程なくして、動画によるメッセージが一方的に送られてきた。誰がこちらの連絡先を教えたのかはわからない。
動画を再生すると、いきなり「BPFD」なるタイトルが現れた。どうやらプレミアムフライデーのプロモーションビデオらしい。
黒い背景に、黒い衣装で佇むアソ太郎。まるで脂ぎった顔だけが浮き出しているようで気味が悪い。
程なく、聞き覚えのあるリズムが流れてきた。ピコ太郎の「PPAP」とは異なる、スローテンポのリズムに合わせ、アソ太郎がおもむろに唄い出す。
…がしかし、よく聞くと原曲は「PPAP」そのもので、回転数を遅くしているだけのようにも聞こえる。そしてなぜか手には、2種類の缶ビールを持っている。
「アイ、ハブ、ア、ブラック…」
「アイ、ハブ、ア、プレミアム…」
…嫌な予感がした。
腰ではなく口角をクネクネと捻りながら、ラップ調のリズムで歌を続けようとするが、カメラの後ろに貼り出されたとおぼしきカンペの文字が小さすぎて見えないのか、全くリズムに合っていない。
そして、嫌な予感は的中した。おもむろに二つの缶ビールを、一つのグラスに注いだ。
「ブラック・プレミアム・フライ・デー」
やっぱりパクッた…。
口角の捻りの角度が45度を超える。まさにしたり顔で決めゼリフを吐く。
「BPFD」
グラスに入ったビールを飲み干すと、おもむろに手を振り、そして腰を振り、口角を緩めまくるアソ太郎。まさに浪曲レベルである。これはさすがにトランプ大統領の孫も真似しないだろう。
今回の一件で、政府としても景気浮揚対策に力を入れていることはよくわかった。
ただ、経済対策にテコを入れる政府自らが民間の手法を模倣するとは驚いた。
前武雄市長の樋渡啓祐氏が「TPP」ならぬ「TTP」という言葉を提唱していることは、一部の自治体関係者の間では知られた話。※TTP=徹底的(TT)にパクる(P)。
がしかし日本国内を見ると、景気対策も地域おこしも模倣、パクリが横行し、TTPの挙げ句みんなコケているじゃないですか。
だって、そもそもブラックフライデーを提唱する大手小売店が全国各地の郊外にタケノコみたいなショッピングモールを作ってさ、それを他が真似てさ、その結果昔からの商店街がさ…。…あ、いくら何でもこれは言い過ぎか。
さてさてこの先、日本はパクラーまっしぐらになるのだろうか。もちろんパクチー好きの集団ではない。パクリ天国、という意味だ。ブラックフライデーにはじまり、そのうちサイバーマンデーだって国内を席巻するかも知れない。某国がネズミの国や我が国のアニメキャラクターを真似たことを嘲笑していられなくなるぞ。
もっとも、ブラックフライデーの「ブラック」が小売店の黒字を表すということを知った途端、うちは赤字覚悟なんだよ、と「レッド○○デー」をぶち上げるところが、絶対出てきそうな気がするんですが…。
…ところで、サイバーマンデーって一体何なんですか?
(当然のことながら今日のネタは、フィクションです。)