日別アーカイブ: 2016-08-01

7月30日、あおつなトークショー in 青森

人口減が続く青森県にあって、県外から青森へのUターン(あるいはJターン、Iターンなど)を考えている人にとって重要となる一つが「仕事」のこと。
7月30日に、これまで東京でイベントを開催してきた「あおつな」による、青森での初イベントが開催されました。その名も、「あおつなトークショーin青森」。
テーマは「青森での仕事、あなたはどんな働き方を選びますか」。

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トークショーの前のイントロダクションでは、青森県内で人口減少が続いていることの他、青森で働くということについて、以下の4つの類型が示されました。
(1)就社(タイミングが合えばというメリット、収入の問題、真にやりたい仕事なのかというデメリット)
(2)家業継承(順応性が高いというメリット、将来への不安や真にやりたい仕事なのかというデメリット)
(3)起業(やりたい仕事、格好良いというメリット、ゼロからのスタートというデメリット)
(4)個人M&A(ベースがあり、自分の成長が企業の成長に繋がるというメリット、マッチングがうまくいくかというデメリット)

そして、これを踏まえて、青森で働くこと、心構えなどについて、4人の「よげしゃべリスト」、いわゆるパネリストの皆さんがそれぞれの持論を披露しました。

「よげしゃべリスト」は、青森市に本社を置く(株)ページワンCEOの木村譲さん、東津軽郡外ヶ浜町にあるホテル竜飛常務取締役の杣谷徹也さん、下北郡風間浦村にある(有)村口産業代表取締役社長の村口要太郎さん、そして東津軽郡今別町にある(有)袰月海宝代表の小倉龍毅さん。
進行は、あおつな実行委員会代表の神直文さん。

話を聞きながらバーッとメモを書いていたのですが、途中から話を聞くことに夢中になってしまい、メモがおざなりになってしまいました。すいません。以下、殴り書きメモ。

・辺境であろうとも魅力があれば、若い人でも住み着く。(うるさい人がいなければ、という条件付きで。)
・神奈川県横須賀市の例。人口減少が激しく、限界集落もできはじめている。(横須賀でも、という驚き。)
・普通にコミュニケーションが取れれば、そんなに失敗はしないはず。失敗するのは目線が下がり、エスケープゾーンを作る時。(自信がないことの現れ?)
・最近は、「知識」が「情報」とすり替わっている。(「知識」は自ら学び得るもの、「情報」は学ばずとも外から得られるものという意。知識を身に付ける意識が低下している?)
・他人から指図を受けて動くのではなく、自ら考え、動くこと。楽しいのは明らかに後者。
・首都圏をはじめとする都市部と青森との決定的な違いは、時間軸、サイクルの違い。(首都圏は早く、青森は遅い。青森の人は最初、サイクルの速さについて行けない。)
・時間の有効活用。(仕事のオン・オフの切り替えで家族も幸せになる。)
・地元に戻った時に何でも相談できる友人、知人が絶対に必要。
・地元に戻って自分がどうしたいのか、何をしたいのか(しなければならないのか)という立ち位置を考える。
・地元を守るという意識を持っているか。(地元というよりも、田舎に行けば行くほど、「墓」に対する意識が強く、「墓を守る」ことが求められる、という意)
・地縁や血縁、知人からの紹介で中途採用する人は、大体結果を残せない。(結局ドロップアウトする人も多いらしい)
・親離れした子どもをなびかせたければ、夫婦仲良くすること。
※この他、ハローワークに求人案内を出すかどうかは意見が割れた。

僕はこれまでの45年間をずーっと青森県内(しかも40年以上を弘前市)で過ごしているので、一度「外」に出てから「地元」に戻るという感覚がわからないのが実情。しかし、そこに居続けたからこそ知っている「地元」で日々刻々と起きていることを、時々帰郷するみんなに教えてあげられればいいのかな、と思っています。

外から見た青森がどんな感じなのかは、正直言って僕には良くわかりません。「井の中の蛙大海を知らず」といいますが、そういう点では僕は「帰る感覚を知らない蛙」です。ただ、例えそれが「井の中」であろうとも、僕にとっては「ホームグラウンド」であり「都」だと思っています。

トークショーの後の質疑応答で「数年前に久しぶりに地元に戻って、こんなにいいところだったんだ、ということを改めて発信したいけど、どうすればいいでしょうか。」みたいなことを話していた人がいたんだけど、ちょっと違和感を覚えたのです。

外から地元に戻ってきた時に、具体的に何がいいと思ったのか、ということを聞きたかったですね。反論するわけではないですが、人によって価値観が違うので、誰かが「いい」と感じたことが我々にとっては「当たり前」のことなのかも知れないし、逆にこちらが「当たり前」と思っていることがむしろ良くない、足かせになるようなことなのであれば、それはそれで正確に発信しないと、これから本気でUターン、Iターンを考えている人達に対して何か「いいところばかり見せようとして、やましいことを隠している」と捉えられる可能性がありますからね。そういう点では、「いい」ということだけを発信するって、凄く難しい。

「じゃあ青森(地元)の何がいいのよ?」といきなり聞かれても、多分僕、答えがパッと出てこないと思うし。

45歳を超えた我々同世代の中でも、帰郷を考え始めている人達がちらほら出ていることを知っています。地元に残した親御さんのことだったり、いわゆる家業後継のことだったり、それこそ「墓」のことだったり。

都会の良さがある一方で、田舎の良さもあるはず。
でも、その中での一番のネックは、まさに冒頭で出ていた青森で「働く」ということだと思うのです。今の立場をキープしたまま地元に戻れるならば本望ですが、実際はそれを捨てて戻ってくるケースの方が多いのかな。

これまで僕の周りでは、実際にUターンして来て、例えば家業を継いだり、自分の力で起業したり、あるいは資格を取って就社した人がいますし、その中で自分のスケールや影響力をどんどん大きくしていっている人もいます。
今でも帰郷を考えている人から「青森で何か仕事ある?」と聞かれることがたまにありますが、有効求人倍率が1倍をずっと超えた状態が続いていますから、仕事はあるのです。むしろ問題は、仕事の有無ではなく、その仕事に対するご自身の適性や、帰郷することによって失うかも知れない、例えば今の生活環境や社会的立場・水準など、そういった色んな犠牲を受け入れる覚悟なのでしょうかねぇ。
だから、よげしゃべリストの皆さんのお話を聞きながら、青森に帰っても仕事がない、ということではなく、どういう仕事をしたいのか、あるいはどういう仕事であれば自分はやれるのか、それは待遇や労働条件もあるでしょうし、最後は自分自身にどういう折り合いをつけて、どこまで腹をくくって(覚悟を決めて)仕事を見つけるのか、ということに尽きるのかなあ、と思いました。きっと僕らが気づいていないだけで、ビジネスチャンスも実はたくさん転がっているんだろうな。

もっとも、当事者にしてみれば口でああだこうだと論ずるほど簡単なものではなく、もっと深い事情があるのでしょうから、小さい井の中でチャポチャポ泳いでいて、帰る感覚を知らない蛙の僕なんかが気安く言えるような立場じゃないんですけどね…。