日別アーカイブ: 2009-07-21

世襲批判をかわす公募

gremz 砂漠化
衆院が解散し、いよいよ8月30日の投開票に向けて動き始めた。
ということで、衆院選公示前の最後の政治ネタにしたい。

日曜日の地元新聞は、自民党の税制会長で党第二派閥のドン、衆院青森一区の津島雄二議員が不出馬の意向を固めたという記事一色で飾られていた。

もう何年も前のことなのですっかり記憶から薄れているのだが、父の生前、何があったのかは忘れたけれど、一度津島氏が我が家にやってきて、父の後援会幹部を前に弁をふるったのを見たことがある。しかしその後、父は自民党の政治に嫌気がさして党員を脱退し、以降無党派の風来坊を貫いた。

津島氏は、見かけは温厚っぽいけど、メロスではなかった。やっていることは結局シラクスの暴君ディオニスと一緒だった。最後の最後は自分の政治生命も「斜陽」を迎え、迷走。いっそのこと、私は政治家としては「人間失格」でした、ぐらい放言してほしかった。

義父の太宰治も草葉の陰で「こんなはずじゃなかったのに」って泣いてるかも。

青森市長選で自ら陣頭指揮を執り、党を挙げて支援した候補が大差で破れたことを考えると、この時点で求心力の低下が露呈したことは否めず、仮に衆院選に出馬したところで、多選高齢批判をかわすことはできなかったはずだ(つまりそれは、敗北を意味する)。
そのような伏線もあり、恐らく今回の衆院選に出馬しないことは、相当前から決まっていたのだろう。ただ、党第二派閥のドンが選挙で敗れることが、派閥のみならず党にどれだけの打撃を食らわせるか、本人はそのことを深く承知していたはずだ。
全国版のニュースでは、今回の不出馬について驚きを持って報じられていたが、むしろ「やっぱりそうだったか」といった感じで、そんなに驚くことではないと思う(「えーっ?今頃になって言い出すか!?」とは思ったけれど)。

しかし、敢えてここまで不出馬の意向を示さなかったのは、党内の他の候補が出馬に意欲を出さないよう牽制し、自分の秘書である長男の世襲を暗に既定路線とするための戦略だということは、県内有権者の誰もが感じているようだ。それとも、敵前逃亡といわれようとも、敢えてこの時期に引退を表明したのは、彼なりの政治美学、信念に基づくものなのだろうか。だとしたら、随分自分本位で身勝手な美学だが。

自民党では候補者は公募で決めるとしているけれど、水面下では、津島氏以後の候補者選びは、ほぼ固まりつつあるような情勢のようだ。事実、津島氏の意中の人も、「その人」であるらしい。

現在のところ、前回の参院選で民主党の新人に惨敗した元参院議員が出馬の意向を示している他、おそらく津島氏の秘書を務める長男、すなわち前述の「その人」も、遅かれ早かれ出馬の意向を示すことだろう。

まあ、今更候補者を公募したところで、既に始まっているといってもいいであろう選挙戦に誰が名乗りを上げても、正直勝算を見いだすのは困難ではないか、という気がする。それとも、劇場型政治よろしくお涙頂戴の選挙戦に打って出るか、あるいはタレント候補を担ぎ出すか…。もっとも、都議選のように公示2日前に出馬を決めて当選した人もいるぐらいだから、こればかりはどうなるかわからない。
ただ、今の青森県内でそんな神風が吹くとは到底考えにくい。

最終的には県連の判断に委ねられるようだが、ここは津島氏の長男を次期候補者に立てる、ということに落ち着きそうな気がする。

もっとも、仮に誰かに禅譲するとしても、確実に勝てる候補でなければそういったこともあり得ないだろう。裏を返せば、それだけ自民党にとって青森一区(いや、県内全域か)の情勢は厳しく、思った以上に逆風が強くなっている、ということだと思う。ここまで迷走するのならいっそのこと、やたらと衆院選に色気を出していた某県知事を無理矢理青森から担ぎ出すというのも一考かもしれない。あ、それとも「美人過ぎる何某」も選択肢ですか?

県連としては、これはあくまで公募によるものであって、世襲ではない、と突っぱねるだろうが、誰がどう見ても世襲でしかない。まぁ、長男以外の方を次期候補者にするというのであれば、これらの書き込み内容はすべて撤回させていただくしかないワケだが…。

ただ、青森一区への注目度がこれで一気に上がるとともに、候補者が乱立しそうな現状を考えると、情勢が混沌としてきたということは間違いないだろう(前回比例で復活当選した民主党候補への信任、とはすんなり行きそうにもなさそうな気配)。

あれほど東北新幹線の全線開業に心血を注ぎ込み、いよいよ来年に開業を迎えるこのタイミングで、敢えて全線開業のテープカットのハサミを次代に譲ろうとする津島氏の真意は計りかねるところが大いにあるものの、いずれにせよ、多選高齢批判を受けたまま落選し、そのまま過去の人になるよりは、無敗のまま引退した方が自分の政治生命には傷が付かないだろう、という打算があってのことなのだろうか。
それとも、自分や長男を犠牲にしてまで自民党愛を貫き通したいという意思表示の表れなのだろうか。

もっとも、今回は敗北もやむを得ないが、次回の選挙を見越した布石だとするならば、それはそれでしたたかだとは思うけど。

生誕百周年を迎えた太宰治の「孫」が衆院選に出馬。話題性としては十分あり、マスコミは食らいついて来る、かも?

しかし、どこを見ても、そこまでして血縁者を後継にしたいということは、「政治家」という職業はそれだけオイシイ職業なのでしょうな…。

なお、私の住んでいるところは青森四区が選挙区ですので、青森一区の候補が誰になろうとも、自分の投票行動とは全く関係ないことを念のため申し添えます。