日別アーカイブ: 2016-08-15

今年の法界折 -ご先祖様への供えもの-

平成28年のお盆休みが終わりました。
今年は8月11日に祝日「山の日」が制定され、13日が土曜日だったことから、12日に休暇を取る人が多かったようです。かくいう私もその一人です。
我が家は弘前市内にある2つの寺院街のうちの1つの中にあるため、お盆や彼岸の時期になると、外出するのも一苦労です。
特にお盆の8月13日になると、毎年目も当てられないぐらいの大渋滞が発生するほか、よりによってうちの菩提寺が、同じ町内ではなくもう1か所の寺院街にあるため、墓参りも一苦労。ですので、前もってスケジュールを組んで行動しています。

11日から13日までの道路の混雑状況をざっと見たところでは、今年のお盆は11日から13日までの間で分散して墓参りに訪れた方が多かったようです。また、日中の暑い時間帯(ちなみにほぼ連日真夏日でした)は朝夕と比較しても明らかに墓参りに訪れる車の台数が明らかに減っていた感じです。そして、何となく13日午後より12日午後の方が混雑していたような、そんな風にも見て取れました。一番のピークは13日午前でしたが。

さて、お盆といえば、津軽地方の風習として古くから伝わる「法界折」。そのまま「ほうかいおり」と読みますが、田舎に行くと訛って「ほげおり」と呼ぶお年寄りを見かけることもあります。簡単に言えばお墓や仏前に供える、いわばご先祖様向けの「弁当」というか「折詰」というか、そんな感じのものです。ただ、何の目的でいつ頃からこういった風習が始まったのかは、ちょっとわかりません。お盆の時期ともなればこれを持参して墓参りするというのは当たり前のように見慣れた光景でしたので、ほとんど意識したこともありませんでした。

以前もこのブログで紹介したとおり、うちではこの「法界折」を毎年作っています。今年は母の実家(ちなみに母の実家は北秋田市ですが、こういった風習はないと聞いています。)や妻の実家(同じ弘前市内にお寺があります。)、妹の嫁ぎ先(我が家のすぐ近所にお寺があります。)など、全部で14個の「法界折」を作ることになり、前日12日から仕込みを開始。とはいっても年末にこしらえる盛皿ほど手間はかからないものでして、下ごしらえは、いわゆる「煮染め」の材料を切っておくだけ。

ちなみに今回作った「法界折」、ベーシックな内容物はこんな感じです。

煮染め(大根、糸こんにゃく、人参、凍豆腐、麩、インゲン、油揚げ、タケノコ)、かぼちゃの煮物、プチトマト、茄子の揚げ物、岩木山で収穫された嶽きみ(めっちゃうまいトウモロコシ)、ミョウガの酢の物、ミズ(山菜)、そうめん、干瓢と紅ショウガのおこわ、みかん、ぶどう

ベーシック、と表現しましたが、実は大きめの法界折も用意することになり、微妙に中身が変わっています。鏡天(色のついた丸形の心太。仏様を映す鏡と言われています。)の代わりにお菓子(一口サイズのゼリーやおかきなど)が入っていたり、スイカが入っていたりいなかったり。その他容器が大きかったために隙間を埋める(!)ためのアイテムを母親が急遽こしらえたのですが、「ちょっとそれは法界折に入れるものとは違うだろ」ということで、先ほど挙げた法界折の内容からは外しています。ちなみに、法界折に肉や魚が入っているものを見たことはほとんどありません。

今回は、容器の大きさ、形もちょっと違っていたために、結果的には3パターンの法界折が出来上がりました。
法界折は毎年この地方のスーパーなどで600~800円前後で販売されていますし、仕出し屋さんなどでも「法界折承ります」といった貼り紙を見たことがありますが、何か必ず入っていなければならないものがあるとか、「こうでなければならない」といったルールは特にないみたいで、内容物についてはバラバラのようです。ただ、スーパーのそれを見ると、正直言って「値段の割にはかなり質素だな」という印象を受けます。「質素」の意味は、お察しいただければ。
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ちなみに私、13日は早朝4時に起床。土曜日ということで本来であればランニングクラブの朝練に向かうところ、さすがにこの日はご先祖様にちゃんと敬意を払わないと、と朝練を回避、法界折の製作に早朝から精を出していました。
13日朝6時30分には一つだけこしらえた法界折を持参、父をはじめ先祖様が眠る墓へ出向いて手を合わせ、帰宅後残り13個の法界折を完成させ、午後12時30分には妻の祖母の墓、そして午後3時30分には妻の父の墓へとそれぞれ法界折を持参して出向き、手を合わせてきました。

弘前市内の寺院街では、墓前の供物を「持ち帰る」のが原則。だって、「拝んだら供物みんな置いてとっとと帰れ」と言わんばかりに、カラスが狙っているんだもん。要するに、お盆やお彼岸が終わった後の墓地の清掃が大変なんでしょうね。実際この日も、寺院街では結構な数のカラスがカーカーと樹上で啼いておりまして、袋入りのお菓子(和菓子と見た)をくちばしに咥えて飛んでいくカラスを数羽見かけましたよ、ええ。

なので、ご先祖様がゆっくり食事する間もなく、法界折に関しても例外なく「持ち帰り」となるのですが、その後どうなるかと言いますと、誰かが食べようとも文句は言われません。というか、最終的には誰かが「食べる」ことを前提にして作るお宅もあるようですし、さもなければ、廃棄処分ということになってしまいます。うちの「法界折」も前者を想定していますので、それなりの「味付け」を施しています。中には食材の匂いや味が移ってしまったり(特に「果物→煮物」は致命的)、時間の経過で残念ながら違う匂いがし始めるというケースもあるようですが、そういうこともあって13日の早朝に完成させ、13日のうちに供えるということをしているわけです。

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ちなみに、田舎のお寺に行くと、カラスにはお構いなしで供物を墓前に置いたまま帰るところも多いようです。まあ、せっかくならばご先祖様にゆっくり食べて頂きたいものですよね。