日別アーカイブ: 2013-09-16

「第28回田沢湖マラソン」20キロ走って来ました!

2013年9月15日(日)。今季4レース目は、秋田県仙北市で行われた「第28回田沢湖マラソン」。
フルマラソンのデビュー戦は、10月のアップルマラソンで、と決めていたので、今回も20キロコースにエントリー。
ちなみに田沢湖マラソンはフルマラソン、20キロ、10キロが陸連公認コースとなっていたのだけれど、8月の大雨被害でフルマラソンのコースが一部変更された結果、フルマラソンのみが公認コースから除外となってしまった。

この大会は、それぞれのコースのスタート地点が異なっており、10時に一斉にスタートする。そして、それぞれのコースを走り終えて、同じ地点にゴールする。
ちなみにフルマラソンの制限時間は5時間となっており、午後3時には田沢湖の時計回りのみの通行が認められている一部区間の片側1車線の通行制限が解除されることとなる。

今回の大会は、弘前公園RCのメンバーも多数参加することになっていた。僕が把握しているだけで、フルが5名、20キロ5名、10キロが2名エントリー。
弘前からはTさんが手配した10人乗りのワゴンに便乗して向かうことが決まっていたのだが、僕は一人、大会の前日に弘前公園RCの朝練を終えたあと、僕は一足先に秋田県入りすることにしていた。

今年のお盆に手向くことができなかったので、この日に合わせて、命日の近い祖父と、昨年亡くなった祖母の墓参りのため、北秋田市に向かうことにしていたのだ。

大会前日の時点での天気予報は「曇りのち雨」。実は雨の中での大会はもちろん、練習においても雨の中を走ったことがほとんどなかったため、一抹の不安が頭をよぎる。

午後3時過ぎに北秋田市内に入り、まずは祖父母の墓に向かう。
お盆に来られなかったことの非礼を詫びて、まずは最初の目的完了。

続いて母の実家へ出向き、今晩お世話になる挨拶を済ませ、次の目的地へ向かう。

…温泉。
腰の具合は走っているうちは忘れてしまうのだが、2時間近く車を運転してきたら、何かやっぱり腰のあたりが怠くなったので、温泉に行って養生しよう、という算段だ。

軽トラをはじめ、半数以上の車に高齢運転者マークが貼られている車の並んだ駐車場の端っこに車を停めて、温泉へ。40代前半の僕は、確実に洗い場の平均年齢を下げている。
約1時間、じっくりと足腰を温め、途中、明朝の食物飲物を買い込んで母の実家へ。

午後6時。従姉が作ってくれたきりたんぽに舌鼓を打つ。比内地鶏の脂が強くて明日腹を壊されても困る、という配慮から、だいぶ脂を抜いてくれたらしい。嗚呼、きりたんぽの旨味が…。でも、きりたんぽが米を原料にして作られていることを考えると、ちょうどいいカーボローディングになったかも知れない。まあ、所詮20キロなのであまり必要ないけど。

20時30分には就寝。就寝前に、事前に入手していたコースの高低差をのグラフを見て色々思案する。全体的には起伏があまりなく、比較的平坦なコースなのだが、15キロ前後に、急に壁のような急坂が待ち受けているらしく、そこを一気に下ると、その後も細々とした起伏が待ち受けている。

2週間前の「啄木の里ふれあいマラソン」で経験した後半の急激なペースダウンが頭をよぎる。
その時のレース展開は、前半抑えて後半に余力を残すことをイメージしていたのだが、ダラダラと続いた前半の上り坂が堪え、後半には余力など残っていなかった。
あの時に比べれば、乗り越えなければならない壁は一つしかない。
あとは…事前に下見をするか。
北秋田から田沢湖へ向かうルートは一つしかないが、湖畔に出てから左折すれば程なくスタート会場へ、右折すれば15キロ程度はコースの下見ができることになる。

よし。少し早めに出て、下見をしよう。

翌朝4時に起床。田沢湖まで自分の車で向かったことはなかったが、1時間30分ぐらいで着く、という話を従姉から聞いたので、午前4時30分過ぎに出発すれば、まあ、6時30分頃には到着するだろう。多少駐車場が混雑していても、何とかなるだろう、と考えた。

寝静まる母の実家の仏壇に静かに手を合わせ、出発。
途中コンビニや道の駅に立ち寄って5分弱の休憩を取りながら、6時過ぎ、田沢湖畔に出た。予定通り車を右折させ、遠回りにはなるが、コースの下見をしてみた。しばらく平坦な道が続き、10キロあたりの地点で「たつこ像」を左に目視。
道路に掲示されている距離表示の看板は全てフルマラソン用の看板なので、42.195キロから逆算していけば、自ずと残り何キロだということがわかる。
そして、35キロ付近を過ぎたあたり、車が右カーブをすると、突如その「壁」が現れた。

1400ccの車のエンジンが唸りを上げる。左カーブを曲がってもダラダラと上りが続く。左にカーブミラーを見たと思ったら、そこから急に下り坂。前回の反省を踏まえながら、その坂を下る途中で色々作戦を考える。
6時40分頃、スタート地点付近に到着し、弘前公園RCのメンバーと無事合流。7時前に受付を済ませ、事前にメンバーがテントを張っていた場所に戻る。未明2時に出発した8名(1名は急用のため不参加となってしまったとのこと)もさることながら、僕もかなり眠気が襲ってきた。
出発まであと3時間。実は事前に車で一部コースの下見を済ませてきたことを告げると、興味深そうにどんなコースなのか聞かれた。
あの坂を上手に説明するには、言葉を選ぶ必要があると思ったが、結局「うーん…凄いです。」としか答えられなかった。

昨晩のうちに購入しておいたクリームパンを口に運び、昨日の朝練後にK先生から頂いた痛み止めを3錠服用する。気になっていた腰の痛みはほとんど感じなくなっていたが、万が一に備えての対策だ。そして、テントの横に停めた自分の車(Tさんの配慮で、まるで特等席のような場所に駐車することができたのです)の中で軽い休息を取る。

9時過ぎに県外メンバーのYさんとOさんらが合流し、出発前の記念撮影(一足先に10キロのスタート地点に移動を開始していたK君は、この時恐らく遊覧船の中だった)。

そして、9時30分過ぎに20キロのスタート地点に移動を開始。この頃、やや雨脚が本降りっぽくなってきた。
20キロコースには、男女合わせて2172名(うち男子は1746名)がエントリー。うち陸連登録者は68名。
僕とO先生は陸連登録者ということで、スタート位置は最前列。周囲を見ると、いかにも「走り屋」といった顔つきの人たちがズラリと並んでいる。徐々に高まる緊張感。隣にいたO先生とも会話がほとんどなくなる。
やがてスタート5分前のアナウンス。
時計をセットし、スタート前に初めて空を見つめながら手を合わせた。
ジイちゃん、バアちゃん、オトン、頼む。ヤバそうになったら、背中を押してくれ…。

スタート1分前。試しに今日はちょっと突っ込んでみよう。

バーン。号砲一発と同時に、猛牛のように選手がスタートする。打ち上げ花火が鳴り響く。
ドンッ!いきなり肩口を押される。こういうレースには必ず一人二人いる、猪突猛進型の選手。うわっ…と思った瞬間、後ろから怒号が聞こえた。

「ちょっと!そこの黄色いシャツのおじさん!危ないだろう!!」

そう叫びながら僕の横を猛スピードで駆け抜けていく緑色のノースリーブの…
…ん!?同じチームのSさんじゃないですか!!

そう、大声で怒りをぶちまけていたのはSさんだったのだ。
Sさんは出発前、「1時間30分切り」を宣言していたけれど、黄色いシャツを追いかけながら凄い勢いで飛び出し、あっという間に視界から消えてしまった。

僕はと言えば、周囲のペースに多少呑まれつつも、決して突っ込み気味ではなく、かといって抑え気味でもなく、最初の1キロを4分21秒で入った。まあまあのペースと言っていいだろう。前半はほぼ平坦なので、これぐらいのペースか、もう少し上げても大丈夫かも知れない。雨はといえば、スタート時点の時に小降りとなって、ほとんど気にならない。湿度は若干高めだが、日が照っているわけでもないし、かなり走りやすい感じだ。
その後の5キロを大体4分25秒ペースで走り抜けた。

ほんの僅かに起伏があるものの、タイムに大きな影響を与えるものではない。あとは、例の急坂をどう攻めるかだが、その時は全く考えないようにしていた。

たつこ像をバックに選手を撮影しようと、カメラマンが陣取っている。思わず手を挙げる。未だそんな余裕がある、ということだ。10キロを44分ちょっとで通過。ここを過ぎたあたりで多少ペースが落ちたような気がしたが、これは想定の範囲内。ハーフより1.1キロ短い20キロなので、1時間30分を切れれば最高だが、せめて1時間31分以内にまとめたいと考えていた。しかし、このペースでは恐らく33分台ぐらいのゴールになるな、と想定していた。

給水所はとにかく全部つぶす。並んでいるスポーツドリンクは、必ず口にする。スポンジも、取る。
基本中の基本と思い、これは難なく全てこなせたのだが、スポンジを手にして、首筋から背中、大腿部に当てていた時に、気づいた。
シューズの中が、ビショビショじゃないですか…。

時折雨が本降りになったこともあって、気にしないようにしていたのだが、靴の中がチャポンチャポンと音を立てはじめる。なるほど気持ちいいものではないな、と。これもレースで初めて経験したことだった。

走りながらギュッとシャツの裾を握ってみると、じわっと水が溢れてくる。いや、水も汗も雨も混じっているのだろう。もういい。気にするの、やめた。

やがて「フル35キロ」の看板が見えてくる。ペースは4分30秒を超えていたので、前半の貯金はかなり食いつぶしたことになる。
そして、右にカーブするといよいよ例の坂が現れた。いきなりペースが落ちたのがわかる。でも、辛いのは僕だけじゃない。周囲で走っている人も、10キロを走った人も、これからフルマラソンで走る人も、みんなこの坂は辛いんだ…。
そう考えたら、足がスッと軽くなった。ふと、Oさんが以前送ってくれた「辛くなったら足を見ろ」というメッセージを思い出す。
まだ大丈夫だ、絶対行ける。
何だか不思議な力が沸いてきて、坂を登ることに対する苦痛が抜けた。もう、前は見えていない。足下ばかりを見ている。スピードが上がったような気がする。さっきまで僕を意気揚々と追い抜いて行った人たちの息が上がって、まるで地を這うような足どりになっている。
その横を、まるで何事もないように走り続ける僕。
下り坂は、抑えながらもややスピードを上げる。以前までの僕だったら、ここで萎えていたのに、この日は何かが違っていた。

..結局急坂のある13~15キロの区間を、平均4分50秒弱で駆け抜けた。
まるでギアを入れ替えたかのように、ここから徐々にスピードを上げる。これまでのハーフマラソンの大会では、あり得なかったことだ。
多少の起伏はあるが、全く気にならない。むしろ、まるで何か目に見えぬ力に押されているかのように、どんどんスピードが上がっていく。
残り2キロの看板。時計を見ると、1時間21分。4分半のペースで行けば、1時間30分に届く!
ふと前を見ると、かなり前を走る緑色のノースリーブ姿のランナーが見えた。
Sさん?…Sさんだ!

グッと足に力が入る。追いつきそうだけど追いつけない。でも、確実に差は縮まっている。
残り1キロ。やっとSさんの背中がハッキリ見えた。残り500m。Sさんの横にスッと並ぶ。僕に気付いたSさんがペースを上げる。僕も負けじとペースを上げる。
最後は地力の差でSさんのゴールシーンを見てから僕もゴール。
タイムは、1時間29分50秒!1時間30分を切れた!!

残りの数百メートルで勝負に乗ってくれたSさんと、ガッチリ握手。
その後、続々と他のメンバーもゴールし、お互いの健闘をたたえる。

田沢湖マラソン完走証

田沢湖マラソン完走証

陸連登録者では68名中32位。ただし、68名中24名が関東学院大の選手だったことを差し引くと、かなり好成績ではなかったか、と(自画自賛すいません)。
何よりも、初めて自分のレース展開に満足できたこと。これが一番大きかった。

気負っていたつもりはなかったし、自分としては結構楽しめた。
実際走っている途中でカメラを向けられたポイントでは、かなりの確率で手を挙げて、薄気味悪い卑屈な笑顔を浮かべていたのだから(たつこ像の前の写真が楽しみです。笑)。

これがまぐれだったと言われないように、3週間後のアップルマラソンまで体調と走力の管理を怠らないようにしないと。
そして今回、時折強い雨が降りしきる中、フルマラソンを完走した同志のゴールシーンを見て感涙しつつ、ハッキリとした一つの目標が芽生えた。
完走?それは当たり前。初フルマラソン挑戦だけど、4時間を切ってみたいです!そして願わくば、3時間45分前後でゴールしてみたいです!

田沢湖マラソンのレース展開

田沢湖マラソンのレース展開