日別アーカイブ: 2015-12-25

2015年の総括(音楽篇)

クリスマスが終わった途端、すっかり年越しムード。飾られていたクリスマスツリーは門松に置き換えられ、街の喧騒が一層激しさを増しています。

さて、2015年も残り僅か。いろいろ今年を振り返る時期に差し掛かっておりますが、個人的には今年は積極的な活動をしなかった年だな、と思っています。

恐らく一番の要因としては、5年間勤務した部署から異動となり、新しい職場での仕事の内容を叩き込むのに必死で、自分自身の感覚をなかなか掴めなかったことが挙げられます。まあ、こういう職種に就いた以上、40代半ばになろうとも50代になろうとも、それまで見たことも聞いたこともないような仕事に就くことはやむを得ないこと。取りあえず来年3月までは、年度単位で考えたときにどういう流れで仕事が進んでいくのかという、いわゆる時流を捉えることが肝要になってくるはず。まして県内全域を相手にしているとなればなおさらです。いつ何時どこの土地に行こうとも、そういう時流をいち早く捉えて自分のペースを合わせていくことが必要になるということを、これまでも幾度となく経験してきました。
それにしても、もうすぐ45歳となるにあたり、僕は時流を捉えるという作業をこの先何度経験することになるのでしょうか…。

閑話休題。
今年聴いた音楽を振り返ってみたいと思います。温故知新とは言いますが、結局今年も昔から聴いていたアーティストが中心となってしまいました。

浜田省吾 / Journey of a Songwriter 旅するソングライター

約10年ぶりとなるオリジナル・アルバム。僕の中では既に名盤と呼ぶに相応しい一枚だと確信に変わりつつあります。不思議なリズムのドラムからスタートするこのアルバムは、これまで築き上げてきた揺るぎない彼の信念というか、「優しさ」や「暖かさ」に包まれたアルバムだと僕は感じています。10年という月日は、長くもあり短くもあり。戦後70年という節目の時を迎え、10年の間には東日本大震災という未曾有の天災も経験しました。志半ばにして命を落とした人達に対する鎮魂の思いや、どん底から少しずつ立ち上がろうとしている人達への激励、そんなことを感ぜずにはいられない一枚。このタイトルを冠したツアーが行われており、青森でその公演を観ましたが、そちらも凄く良かったです。

佐橋佳幸 / 佐橋佳幸の仕事 1983‐2015 Time Passes On

プロレスで言うならば藤原喜明か木戸修か。主役にはなれないが、ギラリと光るいぶし銀のような存在。佐橋佳幸とは、そんな人物だと思います。誰とタッグを組んでも、どんな楽曲でも対応できる…だからこそこのアルバムが斬新だったのだと思います。世の中、色んなオムニバスアルバムやトリビュートアルバムが発表されていますが、多分ここまでバラエティに富んだアルバムは、唯一無二ではないかと。ただ、惜しむらくは、発売元が限られていることでしょうか。

佐野元春 & THE COYOTE BAND / Blood Moon

1980年代をザ・ハートランド、1990年代後半をホーボーキング・バンドという、名うてのミュージシャンで固めたバンドを従えてきた彼が、2000年代半ばになって新たに組んだのは、新進気鋭の若手ミュージシャンで構成されたザ・コヨーテ・バンドでした。(ちなみに前出の佐橋さんは、ホーボーキング・バンドの一員でした。)
佐野元春 & THE COYOTE BANDでは3作目となるこの作品、メッセージ性の強いクセのある楽曲も多い中、個々の作品のクオリティの高さは、バンドとして成熟したことを端的に示すものだと思いますし、曲も歌詞も、しっかり時流を捉えていると思います。最初聴いたときは地味なアルバムだなあ、と思いましたが、地味な中に光る何かがあります。

Janet Jackson / UNBREAKABLE

7年ぶりに発表された通算11枚目のアルバム。「Control」そして「Rhythm Nation 1814」で彼女を一気にスターダムへとのし上げた盟友ともいうべきプロデューサー、ジャム&ルイスと久しぶりにタッグを組んだ快作です。一時期は何をやっても今ひとつパッとせず、近い将来「過去の人」に落ちぶれてしまうのではないかと危惧していましたが、いろいろ紆余曲折を経ながら辿り着いた「原点回帰」。これ、正解だと思いました。
もう、逆に「Rhythm Nation 2015」でいいんじゃないですか?と言いたくなるぐらい、どこか懐かしさすら感じるようなサウンドである一方で、他のミュージシャンとのコラボレーションがあったり、あれやこれやのエッセンスが詰まっていて、多分あの頃の彼女の曲が好きな皆さんならば、聴いてみる価値アリです。
しかし、自ら立ち上げたレーベルの名前が「Rhythm Nation」ですか…。なかなか呪縛から逃れることができないようですね。

Babyface / Return of The Tender Lover

そういう意味では、ジャネット同様なかなか過去の栄光から抜け出せずにいるといってもいいアーティスト、Babyface。こちらはソロ名義の前作から8年ぶり、Toni Braxtonとの共作から1年ぶりというインターバルでの新作。まず、タイトルを見て驚きました。自身の過去の大ヒットアルバム「Tender Lover」を冠に据えた、まるで自身の作品に対するオマージュのようなタイトル。前回の共作アルバムを聴いたときに、さてこの人は一体この先何をやらかすんでしょうか…なんてことを思っていたら、何とこちらも「原点回帰」してしまいました。これだけでも充分驚きましたが、前述のジャム&ルイスやテディ・ライリーと並んでの敏腕プロデューサーの一角として君臨していたLaFaceの頃を彷彿させる、キャッチーでどこかAOR的なサウンドに、更に驚き。とりわけ80年代後半~90年代前半の洋楽ファンであれば、きっと懐かしさを感じるはず。40分強という、このご時世にしては非常に短い収録時間のアルバムではありますが、逆に濃縮されているような感じがして、実に心地良いです。

Prince / HITnRUN Phase One
Prince / HITnRUN Phase Two

締めくくりはやはりこの方。前にもレビューしているので、こちらは簡単に。蓼食う虫も好き好きとは言いますが、彼ほど海外と日本とでの賞賛の差が激しいアーティストもいないのではないでしょうか。好きな人はとことん好き、嫌いな人は反吐が出るほど大嫌い。マイケルやマドンナのような華やかなシンボル的存在ではなく、どちらかと言えば毒々しくもありどこか気味の悪い存在として扱われ続けていることが、日本国内での彼の評価を下げている一因ではないかと思います。
そんな彼が未だに第一線に君臨している理由…それは、まさに時流を捉えているからなのだと思います。だって彼の楽曲って、皆さんの知らないうちに色んな番組で使われているんですよ。
そんな彼が今年の後半に入って立て続けに発表したアルバム。Phase OneはEDMを多用したどこかチープな仕上がりなのですが、聴けば聴くほど駄作というほどではないのかな?と思うようになってきました。そうして耳に馴染んできた頃に突如発表されたPhase Two。この2つはセットですね。互いに相容れないところはあると思うのですが、両輪として捉えた方がいいです。本当は最初から2枚組で発表したかったんだけど、Oneについてはちょっと実験的な要素もあったので様子見で、Twoの方はOneに対する反応や混沌とする社会情勢を踏まえたアンチテーゼみたいな感じで。…あ、全然簡単じゃなかったですね。すいません。