猪瀬都知事ロンドンでアピール 海外記者から好印象
(スポニチアネックス 1月11日(金)7時1分配信)20年夏季五輪の開催を目指す東京の招致委員会は10日、国際プロモーション解禁後、初の海外メディア向け会見をロンドン市内で開いた。招致委会長を務める東京都の猪瀬直樹知事は「世界中の観客や選手にユニークで忘れられない経験を与えられる」とアピールした。
ロンドン市内の中心部の五つ星ホテルで行われた会見には、日本のメディアを含め63社、105人が出席。猪瀬知事は「世界で最も安全で先進的な大都市の中心で開催されるダイナミックな祭典になる」と東京での開催意義を説明した。海外メディアから東京電力福島第1原発事故の影響を問われると「現在の東京の放射線量はロンドンと変わらない」と強調。領土問題をきっかけとする日中関係については「両国が平和的に解決する方向に向かうと確信している」と答えた。
海外メディアにも好評で、AP通信で国際オリンピック委員会(IOC)を担当するスティーブ・ウィルソン記者は、猪瀬知事の印象を「非常にプロフェッショナルだった。はぐらかすことなく全ての質問に的確に回答した」と評価。英紙などで多くの五輪取材に携わった歴史家のデービッド・ミラー氏も「東京の計画は非常に素晴らしい。計画が良ければ勝つわけではないが、魅力的だ」と話した。
東京でのオリンピック開催に向けた招致運動がいよいよ始まった。2016年の開催をリオデジャネイロに持って行かれた東京としては、石原前都知事の「遺言」を何としても形にしたい、という思惑があることだろう。
今回立候補を表明しているのはスペインのマドリードとトルコのイスタンブール、そして東京であるが、最終的にはイスタンブールと東京の争いになるのではないか、と目されているようだ。
その一方で、記事にもあるように、海外メディアからからは福島原発の影響を不安視する声もあがっていたが、それに対して猪瀬都知事は「現在の東京の放射線量はロンドンと変わらない」と、まるで福島原発事故が他人事であるかのようにさらりと述べていた。
僕はこの模様をテレビで見ていたのだが、この発言を聞いたときに、何だか違和感というか、不快感というか、嫌悪感すら覚えた。
元々東京という都市は、地方出身者が多いということで知られている。4年前の誘致の際は、そもそも対外的な招致活動ばかりが行われていて、国内向けのプレゼンやPRはあまりなかったように思われる。関係者の中には、東京で開催するのだから支持されて当然、といった奢り高ぶりがあったのかも知れない。そのことが住民感覚とかけ離れていて、今ひとつ支持率の向上に繋がらなかったのではないかと勝手に思っている。
昨年のロンドン五輪での日本勢の活躍を目の当たりにし、前回よりは開催支持率も多少は上向きになったようだが、それでもなお、他の都市よりまだ低いらしく、このことが足かせの一つになっているようだ。
地方出身者の多い東京、とりわけ東北地方の出身者が手放しで五輪開催を支持しているかといわれると、果たしてどうなのだろうか。
東京でのオリンピック開催の支持率が低い理由は、実はここなのかな、とか思ったり。
ここで、1月10日付けの河北新報の社説を紹介したい。
東京五輪招致/被災地と夢を共有できるか
2013年01月10日木曜日 河北新報2020年夏季五輪・パラリンピックの東京招致を目指し都などが組織する招致委員会が、大会の詳細な計画をまとめた「立候補ファイル」を国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。
9月にブエノスアイレスで開かれるIOC総会まで、イスタンブール(トルコ)、マドリードとの開催都市レースが続く。
「震災を経験したわが国は、国民がひとつになれる夢を必要としている」
立候補ファイルの巻頭に記された猪瀬直樹東京都知事の一文だ。復興した日本を示すことが、世界から寄せられた支援、善意への返礼となるとの考えだ。
昨年提出した「申請ファイル」より記述は減ったが、東京開催の意義付けとして「震災復興」が大きな重みを持つことは変わらない。
安倍晋三首相も「復興を示す機会となる」として、政府のバックアップを約束した。20年夏季五輪の東京開催を国民全体の目標とする上で、「復興五輪」という看板は必要だ。
聖火リレーが東北を縦断する。男女サッカーの1次リーグが宮城スタジアム(宮城県利府町)で開催されることも盛り込まれた。開会式に先立って、熱戦の舞台となる日程だ。
被災地にとって、「2020年」という具体的将来に思いをはせる夢がもたらされることは、素直に喜ぶべきことだ。震災の風化に被災地が危機感を募らせつつある時期に、心強いメッセージともいえる。
立候補ファイルのスローガンは「ディスカバー トゥモロー-未来(あした)をつかみ取る」。国際的な先進都市・東京の実力を全て大会につぎ込むとの意気込みだ。
猪瀬知事はきょうロンドンで海外メディアと会見。今後、活動の焦点は海外への働き掛けに移っていくが、夢を国民共通のものとするためには、国内に向けた一層のアピールもまだまだ大切だ。
東京はリオデジャネイロに敗れた16年大会誘致の際に、地元の開催支持率で後れを取った。立候補ファイルは都民の3人に2人が開催を支持していると記述するが、「オールジャパン」と位置付けるには広がりを欠いている。
被災地復興に向け、都は積極的な職員派遣やがれき処理により大きく貢献してきた。一方で、福島原発事故への首都圏住民の不安は風評被害という形でわだかまり、目標を共有する障害として残る。解消は急務だ。
昨年末、仙台での招致イベントに仙台市幹部が出席しなかったことをめぐり、猪瀬知事が声を荒らげる一幕があった。
行き違いは仕方ない。だが仙台市側から参加を申し出るのが当然とも受け取れる発言が本音だとすれば、同じ夢を追うことは難しい。
復興五輪が、被災地を勇気づけることは間違いない。誘致活動が国内の理解と共感を広げるためには、被災地に寄り添い、日本全体と手を携える首都・東京の姿勢が鍵を握っている。
華やかな五輪招致の陰で、依然として進まない震災復興、そして先の見えない原発事故への対応…。
五輪の招致と震災復興を同じ土俵の上で語るのは、実は根本から間違っているのかも知れない。
多分こう思っているのは僕だけではないはずだ。五輪の前にやらなければならない課題はたくさんあるのではないか。遅々として進んでいない震災復興の道筋を付けるべきなのではないか…。
猪瀬知事「震災を経験したわが国は、国民がひとつになれる夢を必要としている」
安倍首相「復興を示す機会となる」
お飾りだけの美辞麗句。東京至上主義、といえば語弊があるかも知れないが、東京と地方との地域間格差を強く感じずにはいられない五輪招致。
東京でのオリンピック開催による経済効果は計り知れないものがあるだろう。
景気の底上げや活性化にも繋がるかも知れないし、外貨の獲得により経済成長が回復するかも知れない。
しかしそれは、まずは「東京」での話であって、その副次的な効果が地方にどれだけ波及するか、といえば、懐疑的にならざるを得ないと思うのは僕だけだろうか。
五輪の聖火が東北を縦断しようとも、サッカーの一次予選が開会式前の宮城で行われたとしても、その効果が極めて限定的なことは、聖火の火を見るより明らかだ。
それでも9月には、猪瀬都知事が鼻穴をおっ広げ、どや顔で息巻く姿が見られるかも知れない…。
…なんてことを思った1月11日。22か月目の月命日。
合掌