月別アーカイブ: 2017年9月

ローカルだからこその醍醐味 – つがる地球村一周マラソン #マラソン

毎年、規模の大小問わずマラソン大会には色々参加しているのですが、陸連公認の大会は、公認であるがゆえに大会そのものの質や内容が問われる、ということがあります。単に出場するランナーのわがまま、という人もいるのも承知している一方、安全面の考慮やいかにスムーズにスタートを迎えることができるかなど、少しでもいい状態で大会に臨みたい、というのはランナー誰もが思うことではないかと思いますし、それが当たり前なのではないかと思います。…だって、それなりの参加料も支払っているわけだから。

他方、地元開催の大会に目を向けると、ローカルならではの工夫や志向、そこだからこそできる手作りのような大会もあります。

来週開催の「弘前・白神アップルマラソン」が目指すべき方向が未だによくわからない中、ほぼ同じような時期から開催されていながら、ある意味ローカルの運営にとことん徹しているのが、今回出場した「第13回つがる地球村一周マラソン大会」。

つがる市森田で開催されるこの大会、今回で3度目の出場ですが、既に癖になりつつあります。ただ、ここでこの大会を強烈に推すと、来年の参加者が増えて「色んな恩恵」が受けづらくなるので、さらっとだけ紹介しようと思います。

…あ、その前に結果だけ。
正直、大会そのものに出場しようかどうか悩むぐらいテンションが下がっておりまして。田沢湖マラソンの翌週、5日間全く走らなかったので疲労は抜けていると思っていたのですが、23日土曜日の朝練でサブ4ペースランナーの練習と称して2時間かけてハーフを走ったのが結構堪えました。自分で言いだしたくせに。

かなり筋肉に疲労を感じ、土曜日夕方からは左足ふくらはぎが時々痙攣をおこしたかのようにビクビクと反応するという不安と恐怖を抱えたままレースに臨むこととなったため、途中でやめることも考えつつ、スタート地点へ。悶々とした思いと不安の中、スタート…。

ところがスタートすると悪い癖。「一周」と謳っている割には折り返しというよくわからぬコース設定なのですが、行きは下り帰りは上りというコースのため、まずはイーブンで行くことを目指そう、でもあわよくば5キロ18分台を目指そう、と。

しかしふたを開けると5キロは19分台だわ、タイムは40分切るところか昨年から8秒タイムを落とすわと、ボロボロ。言い訳のネタは腐るほどありますが、今出せる実力がこの程度ということで、一切言い訳はしません!

そんな状況にも関わらず私、初めて閉会式が終わるまでこの大会を楽しんでいました。
これぞ、ローカルマジック!

…では、幾つか特徴を上げますね。
・コースは10キロのほか、5キロ、小中学生と60歳以上を対象とした3キロ。更に2名以上で参加するファミリー(1.5キロ)もありと、かなり豊富。
・エントリー料は、小~高校生1,000円、大人2,000円、一家族1,500円
・参加賞はタオルでもTシャツでもなく、何と「パン」!ランパンじゃないですよ、食べるパンですからね!

・いくつかブースがあり、ドリンクの試飲、バナナの無料提供、更にはポップコーンの無料配布まであり。
・そして、大会終了後は豚汁の提供あり。ランナーだろうが何だろうがお構いなしで群がります。温泉入浴券もいただけます。
・ゴール直後はアクエ○アス1本が提供されます。
・ただし4か所の給水はすべて水です。
・驚くなかれ、当日ワンコイン(500円)でエントリー可能!参加賞やタイムの計測はありませんが、その他のサービスを普通に受けることができます。マラソン走ってドリンク頂いて豚汁食って…コスパ高過ぎ。

…と、これだけでも魅力十分だと思うのですが、いかがでしょう。ある意味、平川市で開催される「たけのこマラソン」を凌いでいるようにも思えます。それに比べて弘前の…いや、なんでもないです!!

6位まで入賞すると表彰となるのですが、この副賞も凄い!つがる市の名産、ゴボウにネギ、上位入賞者には米、更にはホルモンや馬肉、施設で作られたドーナッツなど、紙袋に穴が開くぐらい(これホント)の副賞を頂くことができます。

そして、事前にあらかじめエントリーし、当日出走された皆さんは、全員が抽選会に参加する権利を得られます。

この商品の主たるものがまた地場産品なのです!こちらもネギにゴボウ、協賛しているパン屋さんのパン詰め合わせ(笑)、更にはコーヒーのバリスタマシン、スポーツ店や地元の道の駅にある飲食店の商品券など、多岐にわたっております。

…実は私、今回で3度目というお話をしましたが、過去2度いずれも事前抽選で賞品をゲットしていたのであります。初めてがパンの詰め合わせ、前回がゴボウ。さて、2度あることは3度あるのか…。

この大会、ローカルと侮るなかれ。
アップルマラソンの前週ということで、調整を兼ねて県内のエリートランナーが参加するのも一つの特徴で、入賞した皆さんの顔ぶれも多彩。折り返しを終えてやってくるメンバーの顔触れを見ているだけでも興奮します。
そして、私のお仲間も多数入賞しており、次から次へと表彰のために名前を呼ばれる仲間の姿に、かなり負い目と引け目、そしてその場にいることへの羞恥心にも似た感情を抱きつつ、結局最後まで表彰式を見ながら、そのまま抽選会へと突入することとなりました。

「今日は、ない、ない。」と謙遜しつつも、密かに期待する私。
入賞した皆さんが抽選で商品もゲットするという姿を横目に見つつ、「やっぱり今日は、ない、ない。」

「いや、マカナエさんはなんか持っていると思いますよ~。」と、ちょっと弄られることへの悦びを感じつつ、続々とゼッケンナンバーを呼ばれるのを聞いていたら…。

「139番」

あ!オレだ!
はいはい!と大声を出してステージに向かうワタクシ…かなり滑稽です。
すっかり舞い上がり、はしゃぎすぎて、顔も隠れるぐらい喜んでいます。アホ過ぎます。

そして頂いたのは、なんと卵40個!ありがとうございます!
「卵マン」なる称号までいただき、恐縮です(笑)。

ということで、2度あること、3度ありました!抽選に関してだけは3戦3勝。
すいません、ホントすいません!

しかも頂いた卵は「にっこり もっこり 福々たまご」ですよ!
文字通りビックリ、にっこり!もっこり!?ですよ。

もっとも、顔ぶれを見る限り入賞は絶対ありえない大会なので、今後もまた皆さんの入賞と抽選会を楽しみにして参加したいなあ、と思った次第です。

毎年参加者が微増しているとのことですが、第1回が100名も集まらなかったのに今回13回目で500名近く集まった、しかも当日参加抜きでの人数ということで、実際はもっと多いのだと思います。
前述のとおりこの大会は色んな意味で魅力的ですが、当日参加よりもやはり事前申し込みの方が面白いと思います。あ、さらっと紹介するつもりが、かなり手厚い紹介となりましたね。

ただ、願わくばこの大会にはあまり参加者が増えて欲しくないと思うところもあったり…なんか複雑だなあ!

(最後までご一緒させていただいた浪Gをはじめとする皆さん。なんとこの中の半数以上の方が「入賞」しています。)

いよいよ来週のアップルマラソン、疲労を抜いてちゃんと役割を果たしたいと思います。

皆さん大変お疲れさまでした!また頑張りましょうね!私も次回はさらにいい賞品をゲットできるよう、頑張ります!(←なんか違う。)

サブ4達成に向けて作戦を練ろう。 -弘前・白神アップルマラソンに向けて

田沢湖マラソンが終わってから全く走る気力が湧かず、中5日、ようやく21キロ走ってきました。ダメですね。身体も心もメンテ途中。
しかしそんなことを言っている間もなく、10月1日に地元・弘前市で「弘前・白神アップルマラソン」が開催されます。

一昨年に続き今年、再びペースランナーの大役を仰せつかることとなりました。

昨年までとの大きな変更点として、これまで各時間帯のペースランナーは2人組だったのが、今年からは3人編成となりました。

ちなみに今回、僕は4時間のペースランナーを務めます。単純計算だと、1キロ5分40秒のペースで42.195キロを走る設定となります。

しかしこちらも生身の人間、僕なんかは最初から最後まで1キロを5分40秒ちょうどで走りきる自信がないため、我々とスタートからゴールまでずっと一緒に走ろうなんてことは考えない方が得策。(多分その走りができる人は、最初から4時間なんて余裕で切れると思います。)

これはまた後ほど説明する、ということで。

ちなみに4時間のペースランナーを務めるのは今回が2度目(4時間30分も1度経験あり)となりますが、3年前、初めてのペースランナーを務めた時は、まだ大会非公式で勝手に行ったものでした。この時はフル4度目と経験も浅く、しかも前半でペースを抑えずに飛ばし過ぎた結果、35キロを過ぎた時点で、歩いてもゴールできるぐらい時間を大幅に余すという苦い経験をしています。今回はそんなことがないようにしないと…。

サブ4を目指すランナーは、それ相応の練習を積んで大会に臨むはずなので、この間の僕みたいにいきなり暴走するとか、ペース配分を無視するような無茶な走りをするといったことはないと信じています。

だからこそ、ペースランナーであるこちらがしっかりと時間配分しながら走らなければならないというプレッシャーもあります。

一方、人それぞれ走り方が異なるのは当たり前のこと。前半から飛ばすランナーもいれば、後半ペースを上げるランナーもいるだろうし、中には終始一定のペースで走り続けるランナーもいると思います。更には30キロまでガチンコで走り、そこからとぼとぼと歩くランナーも…あ、それは自分か。

たった3人のペースランナーが、サブ4を目指すランナーそれぞれの要望全てに応えることは残念ながら不可能なので、ここで一つ、我々のプランをあらかじめ明示したいと思います。これは既に、4時間を担当する3人のペースランナーの間で、情報共有している内容です。コースの概略説明にもなっていますので、参考にして頂ければ幸い。

1.スタート直後は下り坂、若干ペースが上がり気味に陥るため、ペースを抑える。(ここで勘違いして勢いに任せて加速すると、後半はほぼ確実に潰れます。)

2.引っ張りつつもペースを抑えるのは2人、最後尾からの押し上げに1人回る。

3.岩木川に架かる岩木茜橋を越え、3キロ付近までにはターゲット(5分40秒前後)となるペースに落ち着かかせる。

4.以降、コースの起伏に関するアドバイス、給水ポイントなどを指示しながら走る。ちなみに、7キロ過ぎで下りとなるが、ここでも絶対に飛ばさない。

5.中間地点までは緩い上り基調となるが、できるだけペースを変えず淡々とかつ黙々と。

6.この間、引っ張る人1人、後方から押し上げる人1人、合間合間で様子を窺う人1人で、集団走を目指す。


(今年からルートが多少変更となった関係で、折り返し地点が弘前から少し遠くなりました。)

7.中間地点の通過目標タイムは、引っ張る人で2時間ちょうど…プラスマイナス3分前後。後半の落ち込みは想定しませんので、後半ペースの落ち込みが想定される人は、我々の前を走って欲しいです。

8.後半は下り基調となり、30キロまではペースが上がり気味になるので、飛ばさないように我慢の指示。

9.30キロ以降、如来瀬を左折してから五代へと続く道は上り基調となるので、ここで踏ん張りのハッパ。

10.36キロ以降、ようやく先が見えてくるけれど、実はここからが本当の勝負と気合い入れ。

11.岩木川を越えて40キロ、マックスバリュ樋ノ口店の辺りから一気に観客が増える。行ける人は、ここからラストスパートのGoサイン。

12.41キロ、最後の坂。前方2人と後方1人が徐々に差を詰めながら、サブ4を目指すなら我々の前を走るよう促す。

13.41.5キロ。登りきったところで3人合流。落ちてきそうなランナー、前に行こうとするランナーを鼓舞。残り700m。

14.ゴールが狭いので、追手門広場の入口ではランナーの皆さんになるべく先を譲ります。

15.ちなみに、ペースランナーの目標タイムはスタートの号砲から4時間00分01秒。こんな感じで、どうでしょう。

さて、サブ4を目指す皆さんへお願いがあります。

先ほども述べたとおり、最初から最後まで我々と一緒に走ろうなんてことは、絶対に考えないでください。折り返しを2時間で通過するということは、ほぼイーブンのペースで走るということを意味します。なので、後半落ち込みが考えられる人は、前半で少し前を走るぐらいのイメージを持ってください。我々の後ろを走ったら絶対にサブ4を達成することができる!なんてことは決してありません。

あくまでも自分のペースで、我々をうまく「利用」しながら走って下さい。

申し訳ない。
残念ながら我々は「4時間のペースランナー」を務めますが、「サブ4請負人」を担うほどの重責を負うことはできません。

そしてこれは4時間に限ったことではなく、どの時間帯のペースランナーも一緒です。

実際、スタート直後は追随する人が20人も30人も、下手をすると50人以上いますけど、これまで2度の経験から、最後まで一緒に走り続ける人は、35キロ地点では片手に足りるかどうかというところまで減ってしまうという状況です。

もちろん我慢できずに先行し、そのままサブ4を達成する人、先行したにもかかわらず最後我々に追いつかれ、惜しくもサブ4を逃す人、更には後半で追い上げて我々を追い越してサブ4を達成する人など、ランナーも千差万別。

まずは、ご自身がどれぐらいのペースで走ったら目標を達成することができるか、後半の落ち込み等を加味した上であらかじめシミュレーションすることをお勧めします。

その上で、脚力やその日の体調などを見極めながら、ベストパフォーマンスの発揮に努めてください。

マラソンって結局のところ、他力本願ではどうにもなるものじゃなくて、大会までの準備や体調、体重のコントロールといった部分も含め、最後は自分なんですよね。だからきっと、自分を信じれば道は開けるはずです。

僕たちも、前方から、側面から、そして後方から、サブ4を目指す皆さんのお手伝いを精一杯務めたいと思います。

大会まであと少し。無事に目標を達成することを心から願っています。

皆さん、頑張りましょうね!


(今年はペースランナーとわかるように、頭に風船を載せて走る予定ですが、日光等の影響で割れたらごめんなさい)

禍福は糾える縄の如し ‐第32回田沢湖マラソン(後編)

(大会前日に旅館から見た夕暮れの光景)

※前編はこちらから。

ほぼサブ3ペースを維持したまま、18キロ付近で後続の集団に吸収された。女子2位のランナーを含んだ一団らしい。周囲には5~6人の男性ランナーが追随している。一緒についていこうとしばし並走。いいペーサーになるかな、と思ったけれど、ちょっとペースが速いように感じられた。(1キロ4分10秒前後で走っていたらしい。)

19キロ手前の交差点、右折の時に、僕にサインを送るランナー。ササダ君だった。

「先に行きます」と手で合図を送られたので、無言のまま「行って、行って」と僕も合図。女子2位のランナーにピタリとついたまま、彼を含む一団が徐々に前へ進むのを見ながら、まだ半分にも達していないのに自分は何をやっているんだ!と奮い立たせる。20キロを通過し、いよいよ中間地点へ。前の集団とは既に10m以上差が開いている。

中間地点通過の際、時計に目をやって驚いた。1時間30分。…アホだ。これまでのフルマラソンで通過したタイムより4分以上も早い。いくら何でもオーバーペース過ぎる。
直後にダラダラと続く坂道は、スタート直後に一気に下った坂。これを上り切れば、このコース一番の賑わいが待ち受ける。例年より少ないようにも思われる声援を受けながらもう一度気合を入れ直し、いよいよ田沢湖畔へ…。

ペースは少し落ちてきたのかな。まあいい、このまま行けるところまで押していこう。いや、何とか最後まで押していけるかな?湖畔に入ってから時計を見ていないけれど、もしかしたら、ペース上がっているのかな?(決してそんなことはなかった。)

しかし、この気の緩みや邪念が、しっぺ返しとして降りかかってくるのは、時間の問題だった。

…考えてみると、大会前から既にこの結果は見えていたのかもしれない。
8月の北海道マラソンで今年2度目の自己ベストを更新、自惚れがあったのは紛れもない事実だった。

今日だってそうだ。あわよくば3度目の自己ベスト更新、3時間5分切り、いや、サブ3なんて、今の実力では到底出来もしないようなことを考えていたし…。

程なく、昨日訪れた御座石神社が見えてきた。

神様、本当に申し訳ない。僕はなんて浅はかなんでしょう。自信を過信にしないなんて言いながら、一番過信していたのは自分じゃないか…。

再び強い向かい風が、まるで僕を嘲笑うかのごとく身体に吹き付ける。風に吹かれる木々が一斉に音を立てる。バーカ、バーカ!
前半でほとんど使い果たした気力と体力。先へ進むのを遮ろうとする風に、太刀打ちする力すら残っていなかった。

ジェンガのブロックが一つまた抜けた途端、カラカラと音を立てながら崩れ落ちた。
道端ジェンガ、これにて終了。完全に緊張の糸が切れた。
ちょうど30キロ地点通過。2時間10分。奇しくも、30キロまでのタイムは自己ベストだった。
残りは12キロ。

ここからは、歩いたり、走ったり、歩いたり、歩いたり…。

明らかに歩く距離の方が長く感じられた。

ハリウさんに追い抜かれたのがどこなのかも思い出せないぐらい、滅入っていた。しかし焦りはなかったし、慌てもしなかった。気負い過ぎたのか?いや、気張り過ぎか?考えたところで答えは見つからなかった。

32キロ地点。「たつこ姫」の看板が見えてきた。再びゆっくり走り始める。カメラマンが被写体を見つけたとばかりにレンズを向ける。

程なく見えたスポンジエリアで再び足を止める。カメラの前だけで走るなんて、なんとまあ姑息な奴だ…。

自虐的になりながら、相変わらず走ったり歩いたりを繰り返す。この間、キロ6分前後だろうか。

補食は15キロと25キロで済ませたが、空腹ではないし、熱中症になったわけでもない(実際、補食をしたのはこの2度のみだった)。ただ、脚が棒になって前に進まないだけの話。そういえば2年前もこんな感じだった。時計に視線を送るのはこれが何度目だろう。まだ2時間半しか経っていない。完全なるペース配分のミス。この時、失敗覚悟でレースに臨んでいることすら忘れ、言い訳ばかりを考えていた。ホントにアホだ。

35キロ地点通過。この坂道を「大したことないな」なんて思ったのはどこのどいつだっけ?
ほとんど歩いたまま坂を上りきる。ジョグペースで一気に下るが、脚の攣る気配はまるでない。
そりゃそうだよね、これだけ歩いていればね。

…とまあこんな感じでダラダラと進み、気がついたら41キロ近くまで来ていた。はぁ…やっと残り1キロか。

「よーし!一緒にゴールするぞー!」

背後から聞き覚えのある声。
振り返ると、そこにはトミーの姿が。
正直、誰か来ないかなあ、と思っていたところに現れた彼の姿を見て、ちょっとホッとした。

何事もなかったかのように再び走り出す。
「は、速いよ!何なんだその余裕!」と、背後から声が聞こえる。
僕は笑いながら、追いつかれないように距離を取る。

「のんべ!遅いよ!」
ふと右前方を見ると、今度は畏友ザワの姿。
「おー!ごめんごめん!」
手を合わせ、思わず謝る。

更に左前方には、ザワの長男坊の姿。
「のんべさん!がんばって!」
精悍なその顔を見て、思わず笑顔になる。

そうだ、彼には先日「頑張って3時間10分切ってゴールするから!」と言っちゃったんだよな…。

「遅くなってごめんね!」

声援に応えながら、ニコニコ笑いながら、後ろから追いかけてくるトミーを煽りながら、残り500m。
そうなんだよね、マラソンを走るって一人じゃないんだよね。自惚れていた自分がホントに馬鹿だなあって。
タイムなんてもう、どうでも良くなっていた。

それにしてもマラソン、やっぱり面白いし難しい!

ようやくゴールにたどり着き、声援を送る皆さんに一礼し、振り返ってもう一礼。
顔を上げると、そこに現れたのはトミーではなくてケンケン!その後ろから、苦悶の表情を浮かべながらトミーがやって来た。
3時間25分10秒、27秒、37秒と、昨日から行動を共にしていた3人が、揃いも揃って25分台でゴール。もちろんスタート時はバラバラだったし、帳尻合わせをしたわけでもなく、偶然こうなっただけの話。

ザワの長男坊が駆け寄ってくる。
「お疲れさまでした!お父さん、もう歩けないって…(笑)」
「いやいや、遅くなってごめん、ありがとうね!ところで、10キロどうだった?」
「はい!46分でした!」
中学生にして、しかもあの激坂を駆け抜けて10キロを46分!素直に凄いと思った。
そんな長男坊に最大級の賛辞の言葉を送り、近いうちの再会を約束して別れた。

15回目にして初めて、失敗を覚悟で攻めた田沢湖マラソン。

前半1時間30分、後半1時間55分。前半はフルの自己ベスト、総じてみると今季ワーストの記録。
傍目から見ると大失敗のレースかも知れないけれど、30キロまでの平均ペースがキロ4分20秒、ここまで攻め続けられたことは唯一の収穫だった。この挑戦を次に生かせばいいだけの話だ。胸の中はこれまでとは違う達成感と幸福感に溢れていた。今回はこれでいいんだ、うん。

しかし、やってみないとわからないことって、まだまだたくさんありますね。

…ちょっと待てよ。今回、は?
田沢湖マラソンはこれで最後にするはずだったのに。

…どうやらもう一回挑戦しなければならないみたいっすね。

ただ、今回のランで一つ言えることは、マラソンは付け焼き刃やノープランで臨んではならないということだろうか。

マラソンにまぐれはない、ということを改めて思い知らされたし、いい経験にもなった。来年の話をしたら鬼が笑うらしいけれど、自分自身が鬼になるのも悪くないかな。鬼になって、皆さんこれでどうですか!って、大爆笑したいですよ。

ということで次は地元で開催される弘前・白神アップルマラソン。年内最後のフルマラソンは、ガチンコではなく御恩返しの意を込めた4時間のペースランナー。役割をしっかり果たそうと思います。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします!(おわり)

禍福は糾える縄の如し ‐第32回田沢湖マラソン(前編)

マラソンの大会に出場する直前3日ぐらい前からのイメージトレーニングが、一つのルーティンとなっている。
知り得る限りのコースの起伏やルートを思い返し、どれぐらいのペースで入ったらいいのか、どれぐらいの余力でゴールすればいいのか、そうすれば、どれぐらいのタイムでゴールできるか…。
2017年は1月の勝田も8月の北海道も、それまでの大会結果や練習内容を踏まえ、イメージトレーニングしたうえで臨んだ結果だった。烏滸がましくも、出るべくして出た結果だと思っている。

さて、事実上の2017年、今季最終戦となった9月17日の田沢湖マラソン。

16日の午後から移動を開始し、一路田沢湖へ。前回同様、トミー、ケンケン、そして僕というオッサン三人衆で同じ宿に宿泊することにしていた。
ただ前回と異なるのは、トミーの車に同乗させてもらったこと。
大人の休日俱楽部ならぬ、オッサンの休日俱楽部といったところだろうか。

16時前には田沢湖畔に到着、受付を済ませた。このまままっすぐ宿泊先に、とはいかず、せっかくなのでコースの下見と称して、田沢湖畔を一周してみることにした。
御座石神社に立ち寄り、明日の「安全走行」を祈願。この湖畔を走るのは、今年が最後になるのかもしれないなあ。ありがとうございました、と。

そう、今回の田沢湖マラソンは、2017年最後のガチンコ大会であり、僕の中では今回をもって出場も最後にしようと考えていた。北海道から中2週、弘前・白神まで中1週という間隔、正直疲労を完全に抜ききってレースに臨むのが難しいお年頃に差し掛かっているということを感じ始めていたからだ。

32キロ地点にある「たつこ像」、そして35キロから約800mにわたって続く鬼門のアップダウンを確認。果たして僕は、このアップダウンに差し掛かる時にはどういう状態で、そして、どういったタイムでゴールゲートをくぐるのだろう。

そんなことを考えながら、昨年もお世話になった「青荷山荘」へ向かう。
8畳に3人のオッサン。

昨年は我慢していたアルコールをここで解禁し、ビール1本を飲んだのだが、どういうわけか今年は誰も「飲もう」とは言わず、めいめいが持ち込んだノンアルコールビールで乾杯。しかし、アルコール抜きで黙々と食事に没頭した結果、18時から始まった宴は、何と19時には終わってしまった。

台風18号の影響も気になる中、温泉に浸り、21時には床へ。
荷物を整えながら、明朝から口に運ぶものを準備する僕の姿を見て、「ルーティン凄いな」と半ば呆れる二人。
隣に寝るオッサン二人は、あっという間に寝息を立て始めたが、さて僕は、明日どういう気持ちでレースに臨もうか悶々としながら、気が付いたら眠りに就いていた。

しかし、未明の暴風で目を覚ます。台風の影響にしては早すぎる。しかし、尋常ではない風に木々の枝葉がぶつかり合う音にすっかり恐れた僕は、よく眠れぬまま朝を迎えることとなった。まあ、緊急事態の電話でたたき起こされるよりはマシか。

朝になってもやまない風に、「大会中止になるんじゃないか?」という一抹の不安がよぎり始める。トミーが大会本部に電話をすると「風は全然強くないですよ。何を言っているんですか?」ぐらいの感じでけんもほろろに返されたそうだ。
山荘の女将に聞いたら、この周辺は秋田駒ケ岳からの吹き下ろしの風が凄いらしく、珍しいことではないのだそう。

「風もあんまり強くないみたいですし、頑張ってきてくださいね!」

女将に見送られた僕らは、10キロ地点にある臨時駐車場へ移動し、そこからバスで会場へ。9時前に到着すると、確かに風はさほど吹いていたわけではないけれど、駐車場で吹いていた強い吹き下ろしの風がレースにどれぐらい影響するのか、気になるところではあった。風、強いっすよ。女将…

弘前公園RCの他のメンバーとも合流し、スタート地点へと向かう。この時点で腹は決まっていた。今までは失敗することを恐れて絶対突っ込んだりすることはなかったけれど、今日は失敗ありきでいけるところまで攻めてみよう。ダメでもともと、やるだけやってみて、来年までの課題としてまた練習し直せばいいんだし。カフェインを4日抜き、アルコールも6日抜いた。疲労は完全に抜けきっていないかもしれないけれど、きっと何とかなる。やるべきことは、やったはずだから。初めての、ノープラン。

スタートの10時まであと5分となった時に、会場の異変に気がついた。

そういえば、あれが聞こえていない…。
田沢湖マラソンといえば、朝から耳につくぐらいの大音量でテーマソングが延々と流れているのに、この日は、あの曲がどこからも聞こえてこないのだ。

一抹の寂しさに似たようなものも覚えながら、最前列に近い場所に並ぶ。隣には、 昨年の大会で結果的には15キロまでペーサーの役割を務めてもらったシカナイさん。時計を気にするかどうかの話題になる。
最近、大会に出るときは極力時計に目を送らないことにしている。さて、今日は何度時計に目をやることになるのだろう。

いよいよ10時、号砲とともにランナーがスタート。42.195キロの旅が始まった。軽く上った後で一気に下る。ペースを抑えようとせずに、リミッター解除。いきなりトップギアで、入りの1キロが3分50秒。2キロ通過が4分6秒。既に時計に2度目をやったが、この時点で明らかなオーバーペースだった。左折直後に追い風となったが、緩い上り基調。ここで少しペースを落ち着かせ、3キロ通過が4分15秒(Garminの測定値による)。

北海道マラソンの翌週に32キロ、先週は22キロをこなしたが、何となく頭が重くて、全身の疲労がまだ完全に抜けきっていない感覚。まあ、それも含めてマラソンですから。
5キロ通過で一瞬ペースが落ちかけたけれど、7キロ地点通過時で再びペースを戻し、完全にサブ3ペースで走っていたようだ。バカですよね、身の程知らずもいいところですよ。
8キロ手前から下り基調となる。しかし、吹き下ろしの風は相変わらずで、時々身体を揺さぶったり押し返したりしそうなぐらいの勢いで吹き付けてくる。

無心で走ろうと思っていたのに、なぜか「ジェンガ」のことが頭に浮かぶ。何だろう、今日に向けて積んだブロックは全部揃っていなかったなあ。身体というよりも頭の疲労回復がまだされていない、完全完璧ではない形の、ジェンガ。

…そう、僕こそがまさにジェンガ。
足りないブロックはともかく、バランスを保ちながら、崩れないように走り続ける、そんな感じ。
そして、風に身体が押されるたびに、積まれたブロックが道端に投げ捨てられていくような気分。

…こんにちは。
道端ジェンガです。

そんなくだらないことを考えながら、田沢湖駅前を通過。最初の賑わいがある場所だけれど、ここから16キロ付近までしばし続く地味なアップダウンが結構堪えてくる。

この大会の本番は、ここからなのですよ…。(後編へ続く)

2017年、最後のガチンコレースまであと5日。

日本経済新聞編集委員の吉田誠一さんが執筆している「ランナー集まれ」が大好きだ。

ランニングに関する僕自身の投稿は、かなり吉田さんの影響を受けている。(でも、決して意識しているつもりはありません。)

僕は物書きでもなければ一端のブロガーでもないので、内容はあくまでも自分本位だけれど、ランニングにとどまることなく、色んな投稿で無意識のうちに吉田さんのコラムが参考になっている可能性は非常に高い。

実はこれまで数度、吉田さんと同じ大会にも出場しているみたいだけれど、(当然のことながら)ご本人をお見かけしたことはない。それでも、万が一にもいつかお目にかかる機会があったら、「マラソンのネタを記事にするようになったのは、吉田さんのようなランナー目線の投稿に憧れたからなんです。」と、絶大なる感謝の意を伝えたいと思っている。 まだ見ぬ吉田さん、いつもありがとうございます。


今だから明かすと、北海道マラソンの前日、千歳空港でみんなと離れた僕は、単独で空港近くにあるノーザンホースパークを訪問するつもりだった。馬の姿を見ながら、日頃の心の疲れを癒やす。

…すっかりその気でいたのに、さあ、移動を開始しよう!と思った約15分前、突然のゲリラ豪雨が千歳空港付近を襲うこととなり、大会前日に雨に濡れることを恐れた僕は、泣く泣く訪問を断念した。

予定がすっかり狂い、失意のまま札幌へと向かい、エントリーを済ませたその日の深夜。 追い討ちをかけるかのごとく、不測の事態発生との知らせが届き、完全に緊張の糸が切れた。

札幌まで来たのに、走ることも許されないのか!
怒りと嘆きと悔しさとが渦巻く中、涙も出てこなかった。

心の疲れは、癒やされるどころか蓄積される一方だった。

しかし、既に先日「3部作」を投稿したとおり、走れないかも知れないという不安は結果的に杞憂に終わり、無事に北海道の地を完走することができた。しかも、自己ベスト更新というおまけ付きで。

変に力まず、結果を追い求めなかったことが好走に繋がったのだろう。まさにこのブログのサブタイトル「きおわない、きばらない、きにしない」を地で行くレース展開。実際、走っているときは何も考えなかった、いや、考えないようにしていたし。

苦手意識の高かった北海道のコースを最後まで走りきったことは、僕にとって大きな自信となった。

…が、ここで気をつけなければならないのは、この「自信」を「過信」としないことだ。

9月17日に開催される田沢湖マラソンは、僕にとってフルマラソン15本目の大会となる。田沢湖ではこれまで3度フルマラソンを走り、そのうち2度、自己ベストを更新している。

だからといって「得意なコース」などという大きな勘違いをすると、とんでもない大失敗を招く。(30キロ過ぎからほぼ歩き、3時間40分台後半、ワースト2のタイムでゴールした時の画像が、これ。)

2017年、僕自身の勝負レースは、実は北海道ではなく田沢湖に据えていた。

だからこそ、北海道での好走の勢いそのままに…と臨みたいところをグッとこらえ、ここはもう一度気を引き締めなければならない。 そして、もう一つ気をつけなければならないこと。

それは、時々自分でもビックリするぐらい充実した内容で練習を終えることがあること。

しかし、練習はあくまでも本番に向けたプロセスであり、それがどんなにいい内容だったからといって、必ずしも結果に結びつくというものではない。そう、当たり前だけれど練習はあくまでも練習なのだ。

…たくさんの声援の中、ゴールでガッツポーズを決める自分。
…自己ベストを更新し、感涙で表情をクシャクシャにする自分。

イメージトレーニングって大事だというけれど、レース中にこのことをイメージしたり意識し始めると、大概そのレースは失敗に終わることが多い。(実際、途中で時計を確認、自己ベスト更新に欲を出した挙げ句、これらの光景が頭に浮かんで失速したことが何度あったことか。)

結局のところ、走っている時は何も考えないのが一番いいらしい。

2017年、本気で走るフルマラソンの大会はこの田沢湖が最後となる予定。

それでも、1月の勝田、8月の北海道M、そして9月の田沢湖M、そして10月の弘前・白神アップルMと、年4回のフルマラソンという年間スケジュールでの想定は踏襲していることとなる。

ただ、前走の北海道から中二週はあっという間。更に田沢湖の次、弘前・白神アップルMまでは中一週と、かなりの強行スケジュールといった感もある。レースからの回復度合いを考えた場合、1か月半足らずで3本のフルマラソンは、いくら何でも少し多過ぎだな、とも思う。

思い返せば、ここ最近のタイムの短縮は、昨年の田沢湖から始まった。この勢いをここで終わらせたくない、という気持ちも正直言ってかなりある。

しかしそれよりも、タイトなスケジュールや今後のことを考えると、ひょっとしたら今回は、真の意味で最後の田沢湖となるかも知れないと、朧気ながら考えている。年齢との戦い?いやいや、老いたなんて気持ちは微塵もないんだけれど。

今のところ、天候も恵まれそうな気配。あとは気温が問題かも知れないが、北海道もそれなりに暑かったし、田沢湖では暑さも雨も経験しているので、何とかなるんじゃないかな、と楽観視しているところもある。

これが世界や日本のトップを狙う選手なら話は別なのだろうが、所詮は市民ランナーの端くれ。誰かに勝った負けたと一喜一憂するほどのレベルじゃないことは重々承知の上。だからこそ僕の中でマラソンというスポーツは、「競技」「競争」という位置づけにはない。

どうしても競争をしたいということになれば、その相手はあくまでもこれまでの自分、ということになる。

今回の田沢湖マラソンは、前回叩き出した3時間17分を切ることが最大の目標。あわよくば、前走の北海道に続く3時間10分切り。そして更にはその先を…と、欲を言い出せばキリがない。

ただ、そのことを意識してしまうと、また自分の走りに狂いが生じてしまうので、あくまでも無心で、かつ淡々と42.195キロを刻みたい。

北海道で掴んだ走りのイメージはそのままに、今回も時計には目もくれず、自分の感覚だけを信じて走ってみようと思う。

…しかしまあ、考えてみるとおかしなものですよ。 あれほどフルマラソンを走る人たちに対して、「凄いな」という羨望、「何が楽しいんだか」という偏見、二つの複雑な感情を抱いていた自分が、既に14本もフルマラソンを完走しているなんて。

さて、田沢湖で2017年の有終の美を飾ることができるのか、はたまた課題を残して2018年に向けた叩き直しが始まるのか。

邪念を拭い去り、邪心を捨てよ。 結果は後からついてくるのではない。
持てる力を出し切るからこそ結果に繋がるのだ。

9月17日がやってくるのを、今からちょっとワクワクして待ち受けている。