91歳になる祖母が金曜夜からやってきた。
大病を患うことなくここまで生きてきた祖母の顔、そして手には、約90年の年輪がしっかりと刻まれている。
そしてその年輪は、前にも増して深みを増している。
「最近足腰が弱くなって…」と弱音を吐く祖母であったが、冷静に考えると、91歳にもなって(娘、すなわちうちの母が送迎したものの)我が家に遊びにやってくる事自体が凄いことだということで。
二晩泊まって、今日帰ることになったのだが、帰ると決まった途端支度を始め、出発予定の1時間前には出発準備OK(笑)。
この「時間前行動」、俺にも絶対その血筋が流れていると見た。
「正月、良かったら遊びに来て下さい。」
そう言って祖母は家をあとにした。
杖をつき、ゆっくりと歩を進める祖母の背中を、ぼんやりと追っていた。
決して力強い歩みではないし、足取りもしっかりしたものではない。
91歳という年齢は、人生をマラソンに例えるならばそろそろ40キロを通過した頃だろう。いや、ひょっとしたら最後の周回トラックなのかも知れない。
しかしその丸くなった背中は、未だ生への渇望を感じさせるものであった。
祖母が歩む道は、実は100キロマラソンなのかも知れない。