思い起こすと、昨年10月の弘前・白神アップルマラソン以来、マラソンの大会に出場していなかった。しかもアップルマラソンはペースランナーを務めたので、自分の力量を測るレースとしては、その前週に行われた9月末の「つがる地球村1周マラソン」の10キロが最後ということに。
今年に入り、楽しみにしていた3.11の「古河はなももマラソン」への出場が叶わなかったため、4.22に開催された「イーハトーブ花巻ハーフマラソン」の出場は、約7か月ぶりのレース参戦となった。
3月に向けて冬場は順調に、それもいつになく順調に調整を続けて来たが、「諸般の事情」により全く練習に取り組むことができなくなり、この3月は久し振りに月間の累計走行距離が80キロを下回るという事態となった。4月になっても似たような状況は続き、大会前日でようやく90キロまで乗せるのが精一杯だった。
走った距離は裏切らない、というのであれば、この距離を踏まえた結果は火を見るよりも明らかだったし、ここ最近の練習の質を見ても、とてもじゃないがベストを狙う状況には程遠いことを認識していた。
だからこそ逆に、中途半端にではなくしっかりと走りきらなければならないと思うとともに、今の体調や疲労度等を踏まえた目標を設定してみた。
最低でも91分、あわよくば90分切り。
実は花巻では、過去2度にわたって自己ベストを更新している、僕にとっては相性の良いコース。
昨年度は花巻で1時間28分台を出した後の仙台で、あと3秒で1時間27分台というところまで記録を伸ばすことができた。毎年、ここでの結果が今年の命運を握る、といえば大げさだけど、それぐらいの気持ちをもって臨んでいる。
だからこそ、あまり練習ができていない中でこの大会に出場するのは、正直言って本意ではなかった。
しかも、大会前日の夜は青森市内でライブを堪能、帰宅が23時近くとなった。晩ご飯を口にするのも帰宅後となったため、ざっと見積もってわずか4時間ちょっとの睡眠時間を空けてガッツリ朝食、というのもかなり気が引けた。
さて、こういう時はどうすれば良いんだろう。思い描くような結果は望めないだろうけれど、やれることはやってみようと、幾つか「人体実験」に取り組んでみることにした。以下、備忘録として。
【前日夜】
23時10分頃の夜食はミートソースのパスタ。ただし、量は少なめ。これに、ノンアルコールビールを1本。就寝は23時45分。胃薬を服用。ちなみにこの日の夕方から、BCAA入りの粉末を溶かした水を飲み続けた。
【当日朝】
4時起床。胃もたれは、なし。朝食は茶碗半分のご飯に、焼鮭と納豆。インスタントのカップスープで流し込む。
4時45分出発。カフェイン入りの飲み物は口にせず。前日夜と朝の食事の間隔が短すぎるので、空腹がどの程度になるのか試してみることに。
スタート2時間前と1時間前、フルマラソンの際に口にする補給用のゼリーを口に入れる。6時頃から感じ始めていた空腹感はなくなる。
6時55分、会場着。15分ほど車中で仮眠。
【スタート40分前】
この日の風向をおさらいした後で、いつになく念入りにストレッチ。気温が高くなるとの予報だったため、ノースリーブにランパンの格好。その後トラックへ移動し、2周半(1キロ)のウォームアップ。手には経口補水液のゼリー。結局3キロ過ぎまでちびりちびりと口に運ぶことに。ちなみに、体重は2kgオーバー。無期限資格剥奪級の斤量だ。
【スタート】
あわよくば90分切りということで目標タイムを1時間30分以内に定め、前から5列目に陣取る。
8時50分、スタート。昨年はここで勢いよく飛び出し、1キロ4分を切るペースで3キロほど走ってしまったことを踏まえ、今回は1キロ4分程度に抑えることにしつつ、狙いはネガティヴスプリット。帰路の追い風が背中を押してくれれば、何とかなるんじゃないか、という他力本願。ちなみにスタート時のロスタイムは、3秒。
【スタート直後】
思ったほど気温は上がっていなかったが、湿度が高い感じ。南西方向から吹いてくる風がちょっと湿っぽい。
想定通り1キロを4分5秒前後で通過、そのままペースを落ち着かせる。
【3キロ過ぎ~中間点】
3キロを過ぎて右折後、約4キロにわたって直線の緩い上りが続く。弱い西風が吹いているが、ペースを一定に保つことだけを考える。先行していた弘前公園RCやHNYGDのメンバーを捉えるが、自分のペースで走ることだけを考えていたので、無言のまま抜き去る。
10キロ通過は42分弱。まずまずといったところか。コースの変更で前回から少し先に伸びた折り返しを通過するも、この辺りから時計には全く目をくれず走り続ける。中間地点の給水所では塩分も補給。しかし、全ての給水を潰したのが災いしたようで、胃の中がチャポチャポと音を立て始めたため、給水の量を減らしたり、口をゆすぐだけに留めたり、首にかけてみたり。でも、そんなに暑いとは思わなかった。
【中間地点~14キロ】
微風より少し強めの風に変わる。南から吹いてくるため、抵抗となっている感じ。13キロの上り坂、ペースを一定に保つことだけを考えるも、かなりエグい坂に感じられる。こんなにきついはずじゃないんだけど、やっぱり練習不足なんだろうな。
【14キロ~ゴール】
この上り坂を過ぎれば下り基調になるし、追い風になるはずなのでペースアップを図ろうと考えていたが、どうも東から風が吹いているようで、またしても向かい風。一度落としたペースが元に戻らない感じ。ここで確認の意味で一度時計を見ておくべきだったけれど、怖くて時計を見ることができなかったことは、反省点。そして、下り基調になったにもかかわらず、前半から1キロ平均で10秒近くタイムを落としていたらしい。空腹感はないが、脚の運びが重くなる。
17キロ付近で、背後から迫ってきたSさんに声を掛けられる。さすがサブ3ランナー、後ろから見ても足取りがしっかりしていて、ドタバタと自分でもわかるぐらい足音が大きくなってしまった僕とは大違い。背中を追うにもペースについて行けず断念したが、自分のペーサーに見立て、ひとまず見失わないように走り続ける。
19キロからペースアップを目論むも、最後まで持ちこたえる自信がなかったため、そのままペースを持続。最後の落ち込みを覚悟しつつ、Sさんの背中がまだ見える位置をキープしながら、20キロを過ぎてようやくペースアップ。
競技場に入り、遠くに見える電光掲示板が1時間28分台を刻んでいるのを確認。タイムは、1時間28分45秒。…まあ、全然練習できていない中でこのタイムは及第点なのかな。目標はクリアできたが、特別な感情も湧いてこなかった。
【ゴール後】
とはいえ最後の追い込みが相当堪えたらしく、ゴール後はしばし立ち尽くす。花巻東高の生徒さんにチップを外してもらい、完走証を受領、先行してゴールしたSさん、Nさんとレースの戦評。ところが、話してるうちにだんだん視界が白くぼやけていく感覚に。嗚呼、これが噂に聞いた熱中症の前兆なのか…と我に返り、慌てて水分を補給し、しばし目を閉じると、色んな感情が波打つ。
もう少しやれたんじゃないか。いや、今はこれが限界か。限界を決めたら、終わりだろ?走れただけでもいいじゃないか。まだまだここからだろう?
他の仲間が続々とゴールする姿を見ながら、しばし芝生でへたり込む。
1キロ毎のラップを見ると、高低差を差し引いてもほぼ4分10秒を切るぐらいのイーブンで走っていたことがわかる。
…ただしそれも、13キロの上り坂までの話。
13キロ以降は、ペースがガクンと落ち、1キロ4分15秒を保つのも難しい走りに。ネガティヴスプリットには遠く及ばず、後半の失速ぶりが顕著に現れることとなった。
まさにこれこそが僕のウィークポイントであり、練習不足が生んだ結果なのだろう。まあ、その中でも最後まで足を止めることなく走りきることができたこと、更に90分を切ることができたことは、冬場の練習が無駄にはならなかったこと、そして、土台部分がようやく形になりつつある結果なのだと、都合のいいように捉えたい。
とはいえ、新たな課題を突きつけられたのも事実なので、今年はその土台部分を更に堅牢なものにするべく、前向きに取り組んで行きたいと思いまーす。