音楽は、時として清涼剤となり、良薬ともなる。しかし一方で音楽は、時としてとてつもなく心を傷つけ、そして暴力的、猟奇的な一面を見せることもある。
このような感じ方は全て、聴く側、音を受け入れる側の精神状態や気分、体調によって変わってくる。
…というのはアタクシ自身の単なる持論。気の持ちようの変化によって、音楽に対する受け入れ方や見方も変わってくるものだと思っていたのだが…。
U2の音楽をちゃんと聴くようになったのは、1987年に発表された「The Joshua Tree」から。「War」や「焔」といった代表作は、ちゃんと聴いていない。
U2に対してのイメージといえば、正直何だか面倒臭そうというか、政治思想や社会批判めいたアプローチというか、そういった音楽的な指向に理解が及ばず、聴かずじまいのままだった。とはいえ「The Joshua Tree」にもそういった要素は孕んでおり、逆に言えば、ようやく自分の耳や感性が、そういう音楽を聴くところまで追いついた、ということなのだろう。
U2が1980年にデビューし、結成から40年目を迎えた時には、世界中で新型コロナウイルス感染症がまん延。更には各国が露骨に反目し合うという情勢が如実に露呈し、世界が混迷の一途を辿る中、遂にロシアとウクライナとの衝突に発展。日本を取り巻く状況を取って見ても、北朝鮮や中国などによる諸々もあり、全くもって落ち着く気配がなかった。
そんな中、2023年3月にU2が発表したアルバムは、新しい解釈による過去の楽曲のリテイク。まあ、見方によってはいわゆる「セルフカバー」ということになるが、そこが単なるセルフカバーにとどまらないのがU2。むしろ、この状況においてU2がどういう形で反応を示し、音楽で表現するのか、興味津々だった。