日別アーカイブ: 2014-08-06

弘前のことを、ねぷたのことを嫌いにならないで。


8月5日。青森駅を出発し、弘前駅に19時10分過ぎに到着した電車から降りると、ちょうど駅前での弘前ねぷたの運行が始まっていた。小雨が混じる中、観客の数は思ったほどではなく、これは6日に観客が殺到するな…と思いながら、ねぷたを横目に家路を急いだ。

この日のねぷたの運行台数は60台を超えていたという。恐らく最後のねぷたが出発するのは、21時を軽く過ぎてしまうのではないだろうか。

ところが家に戻った直後の20時過ぎから、雨脚が強くなってきた。
いやいや、これは運行するのが大変だな、と。

そんな中、20時30分頃、透明シートを被せた近隣町内会の運行と思しきねぷたが、戻りの囃子を奏でながらゆっくりと家の前を通り過ぎた。

その後、いつもあちらこちらから聞こえて来るはずのねぷたの囃子の音が全く聞こえていないことに気づくまで、それほど時間はかからなかった。
雨のせいで中断したのだろうか。それとも、また何かトラブルでも発生したのだろうか…あるいは、途中で中止?まさかな…。

ところがその「まさか」が起きていたとは。
「何か」のトラブルが、まつりの根幹を揺るがすぐらい大変な事態だということを知ったのは、0時近くになってからだった。誰かがFacebookに投稿していたニュースソースを目の当たりにして、僕は独りで動揺を隠すことができなかった。
…ねぷたが倒れた?ねぷたの下敷きになって、人が亡くなった?

弘前市民のひとりとして、かなり動揺していることが自分でもわかった。結局僕はその後、眠りにつくことができなくなった。
(以下の記事は第二報)

ねぷた内で頭挟まれ男性死亡

弘前署や弘前消防本部などによると、5日午後8時半ごろ、弘前ねぷたまつりの出発地点の手前にあたる、弘前市北瓦ケ町付近の弘前郵便局前交差点で、運行準備中のねぷた本体の内部で、40代男性がねぷたの昇降装置に挟まれ、頭部外傷で死亡しているのが見つかった。大型扇ねぷたの昇降時に頭部を挟まれたとみられる。同署は男性の身元を確認するとともに、昇降中の事故とみられることから、業務上過失致死の疑いでも捜査を進める。まつり本部は午後9時1分、同日のまつりを打ち切った。(2014年08月06日01時04分 Web東奥)

僕が記憶している限りでは、弘前ねぷたまつりの運行中に亡くなる人が出たというのは聞いたことがない。どちらかといえば、弘前ねぷたは「静」のイメージがあり、むしろ事故など起こるはずがない、という印象を持っていたのだが…。
一方、この事故を踏まえ、残り2日間のまつりを中止することが決まった。もちろんこれも、雨天中止以外を除いては、今まで記憶がなく、実際初めてのことだそうだ。

関係者にしてみれば、苦渋の決断なのだろうが、致し方ないことと思う。まずは責任を押しつけ合うことなく、今後の安全確保に向けてしっかりと対策を検討する必要があるだろう。

弘前ねぷた6、7日中止

弘前ねぷたまつりで5日夜に死亡事故が起きたことを受け、弘前市など主催4団体は6日午前、同日と7日(最終日)のまつりを中止することを決めた。(2014年08月06日09時33分 Web東奥)

僕が最後にねぷたに参加したのは高校3年の時。つまり、相当期間ねぷたまつりに参加していないが、今回の事故は、これまで何となく避けてきた弘前ねぷたそのものに対する喫緊の課題を突きつけられたような気がしてならない。

もはやこれは、他人事ではないと思った。
観る側も運行する側も運営する側も、弘前市が全国に誇るまつり全体の問題として捉えなければならない。
今年の弘前ねぷたまつりは、初日から運行中のトラブルがちょこちょこと発生しており、中には、今回の事故が起こってしまった団体同様、油圧系統のトラブルを起こした団体もあったようだ。


亡父は自称「ねぷたバカ」だった。8月1日から7日まで、毎日毎日どこかの団体に顔を出し、ねぷたの運行に参加していた(正しくは、ただ酒を煽っていただけだったのかも知れないが)。

「青森のねぶたは、のたばったガニ。弘前のねぷたは、金太郎飴。」

そう言って笑っていた父。僕にとって「弘前ねぷたまつり」は、父のことを強烈に思い出す時期でもある。

やがて金太郎飴は多種多様化し、運行団体もどんどん増えていった。
気がつくと、運行規模に合わないぐらい大型化されたねぷたや運行団体の多種多様化が進むとともに、駅前に集中する運行台数、年を追う毎に無法地帯と化した場所取り、運行前の過度な飲酒、目に余るぐらいの衣装、そして、団体間での小競り合い…。

きっと亡父も、今回のこの事故に心を痛めていたことだろう。

もちろん今回の事故を予見できた人などいるはずがない。
しかし、いつか起こりうる事故が今回、とうとう起こるべくして起こったのかも知れない。
これを機に、ねぷた運行のあり方が問われることになるだろうし、ここぞとばかりの批判合戦も繰り広げられることも考えられる。

正直、ねぷたの運行やまつりの運営などに携わる方々、そして、今回事故を起こした団体や亡くなられた方のご家族の心中を察すると、胸が張り裂けそうなぐらい苦しくなる。

だが、来年以降の安全な運行に向けて、今こそ関係者が一丸となって、なぜこのようなことが起きてしまったか、しっかりと検証と分析を行い、祭り全体のルールを明確化しなければならない。
「教訓」の一言で済ませるには、あまりに事態が重すぎるのだ。

今朝の弘前市は、激しい雨が降り続いていた。弘前市全体が、号泣しているようだった。
まつりの後の静寂ほど侘びしさを感じるものはない。

その静寂が、いつもより2日も早くやってくるなんて、誰も想像していなかったことだ。

僕はねぷたに関しては前述のとおり既に20年以上も参加していないし、弘前ねぷたの運行こそ、「餅は餅屋」の世界だと考えている。大体にして、今のねぷた運行に係る内情は全くといっていいほどわからないので、ああだこうだと口を挟む立場にはない。

でも…弘前市民の誰もが、ねぷたまつりをやめて欲しいなんて思っていないはずなんです。津軽の、弘前の短い夏の夜空を焦がす風物詩なんだって、みんなわかっているんです。でも、やるからには何らかのルールを決めなければ、今後もこういったことが起こりうるんです。

喜怒哀楽。
人間の持つ4つの感情。楽しい時には喜びが伴い、喜びは楽しみをもたらす。
一方で、哀しい時には怒りが伴い、怒りは哀しみをもたらす。

だからこそ関係者の皆さまにおかれましては、どうか感情的にならず、責任を押しつけ合うことなく、努めて冷静に今後の方針についてご検討くださるよう、一市民として心からお願い申し上げます。

亡くなられた方のご冥福を心からお祈り申し上げます。