日別アーカイブ: 2016-06-07

さようなら、ハナ

3分の1の欠落。一度は覚悟を決めていたので、そんなに辛くないハズだと思っていましたが、やはり辛いです。

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我が家で一番の古株だった愛犬ハナ(♀・16歳)が、6日午後9時45分、静かに息を引き取りました。
先日の脱走騒動からちょうど1週間。まあ、最後の最後にやりたいことがやれたんだから、それはそれで良かったのかな…。
彼女の生き様は、脱走に始まり、脱走に終わった、そんな感じです。別に逃げる必要なんてないのに。

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6日の夜、何か胸騒ぎがして20時30分頃に帰宅すると、ハナは既に骨が浮き上がった身体を自分の脚で支えることができず、這いつくばったような格好で、か細くなった声を絞り出し、吠えていました。それは、今まで僕が見たことのないハナの姿でした。既に目の焦点が合っていないような感じで、水も食事も受け付けてくれませんでした。
その日の朝家を出る時には、こんな姿になっているとは想像もしていませんでしたので、あまりの急激な衰えぶりに、少し狼狽してしまいました。人間の年齢に換算すると、犬の場合3年目以降は4歳ずつ年を取るといわれていますが、衰える時も同じスピードで衰えていった、そんな感じです。
その姿を目の当たりにし、僕はいよいよ「その時」が近いことを悟ったものの、それからわずか1時間後、ハナはあまりにもあっけなく旅立ってしまいました。妻が帰宅して程なくのことだったので、それだけがせめてもの救い。多分、帰ってくるのを待っていたんだろうな。

徐々に吠える声が聞こえなくなるとともに呼吸が大きく深くなり、最後はピンと伸ばした四肢から、まるで残された魂の糸が1本ずつ抜き取られるように3度深呼吸、そのまま全身の力が抜け、息を引き取りました…。七転八倒して苦しむようなこともなく、本当に穏やかな最期でした。残された他の2匹も、まるでその時を見守るかのように、静寂な時間が流れていきました。

彼女に変化が現れたのは、今年に入ってからだったかな。普段寝床にしている2階の階段から転げ落ちたのが、一つの転機でした。足腰が徐々に弱くなっている兆候はありましたが、その日以来、階段の上り下りは危ないということで彼女を2階に上げるのをやめ、1階の居間で僕と一緒に寝るようになりました。

土曜日ともなると、ランニングクラブの朝練から帰ってくる僕を待っていて、クールダウンを兼ねて「町内パトロール」と称した散歩に連れ立っていました。時には2キロ以上を平気で歩くので、僕は勝手に「散歩マスター」と呼んでいました。

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しかし、その頻度も徐々に減り、5月中旬にやっと散歩をしたのが最後となりました。
たかが犬。されど、犬。室内犬として飼っていたこともあり、寝食を共にしていたようなものなので(食事の内容はもちろん違いますが)、ペットというよりは家族に近い感じ。飴と鞭を使い分けていたわけじゃないけど、叱る時は叱り、褒める時は褒める、ということを心掛けたつもりではありました、が…。
晩年はどうしても徘徊癖や痴呆の気配が見られて、その姿に声を荒げることが多かったかも知れないです。多分それは、その状況からハナを救い出して上げることができない、自分自身に対する憤りだったのかも知れないし。
こういう言い方は良くないのかも知れないけれど、これからやらなければならないであろう、介護の練習というか心構えを身に付けさせてもらったような感じ。

脱走騒動を起こしたのが5月30日。家に帰ってきたのが、6月1日。それからわずか5日で旅立つなんて、あまりにあっけないというか、ちょっと先を急ぎ過ぎですよね。そりゃないぜ、ハナ…。でも、全員で最期を看取ることができて、正直ホッとしているところもあります。最期までハナらしさを貫いたというか、なんというか。脱走した時点である程度の覚悟もできたので、取り乱すこともなく冷静に最期を受け入れることができました。まあ、ハナにとってそれが本意だったのかどうかは、知る由もないのですが。

目がクリッとしていて小型だったので、散歩に行くと、色んな人からよく「可愛い!」って声を掛けてもらいました。しかし、他人から触られることは大人だろうと子どもだろうと絶対ダメ。手を近づけた途端に牙をむき出しにして、警戒心をあらわにし、美人がすっかり台無し。美人なんだけれど、ハッキリ言ってツンデレの性悪女。まさにツンデレラ。臆病なくせに虚勢を張る、気分屋。飼い主に似て、ひねくれ者。

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…でも、憎めないんですよ。いい犬だったんですよ。毛艶も良くて、変な話ですが年齢を感じさせない犬でした。

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実は僕、小さい頃のトラウマがあって、それまでは犬があまり得意じゃなかったんです。だから最初うちでハナを飼うことになった時に、心の底から賛同できませんでした。あの頃は、猫が一緒に住んでいたからね。でも、不思議なぐらい仲良く共存していたハナと猫たち。その後2匹の猫がいなくなると、うちは犬3匹に占拠されることになりましたが、気づいたら僕の犬に対するトラウマも完全に払拭されていました。

何の因果か、初めて写真展に出品した一枚に、彼女の写真を入れておいてよかったな、と思っています。彼女の美形をみんなに見てもらうことができたしね。

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思い出は尽きないけれど、今はただ、安らかに眠って欲しい。それだけです。大丈夫だ、ハナは独りじゃない。虹の橋の向こうで、みんなが待ってるよ。
僕らもハナのことは一生忘れないし、忘れるわけがないから。
約16年間、うちの家族でいてくれて本当にありがとう。楽しかったよ。美人薄命っていうけど、あれウソだね。ハナは美人だったけど、16年も生きられたんだから。

今はまだ、心の中に穴が空いたような感じですが、徐々に埋めていこうと思います。
ハナのことを気に掛けて下さった皆さん、今まで本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。

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まあでも、家族で最期を看取るという、飼い主としての最低限の役割は果たせたのかな、と思っています。ここ1週間はちゃんと眠れなかったこともあり、僕も今は少しゆっくり休みたい、というのが正直な気持ちです。ただ、うちには3分の2、あと2匹要介護犬がいるんだよね。メソメソ寂しがっている場合じゃないんだよな。うん。