青森県、とりわけ津軽地方に住んでいる人たちは、岩木山に対する思い入れをそれぞれ持っていて、特に、自分の住んでいる場所から見える岩木山こそが一番だという自負を抱いている。
岩木山は言わば山岳信仰の典型である。旧暦の八月朔日に岩木山頂の奥宮に参拝する「お山参詣」のように、岩木山を崇拝する行事が未だ受け継がれているし、「お山参詣」の時期に合わせて、一般の方々でも気軽に参加できる「レッツウォークお山参詣」といった、口に出すのも恥ずかしい最悪なネーミングの体験型ツアーも企画されている。
そういえば「岩木山(いわきさん)」は、「お岩木山(おいわきやま)」と呼称するケースが結構あるように思われる。
青森県には岩木山の他に、八甲田山や釜臥山、階上岳など数多くの山があるが、「お」を冠して呼ばれる山は、岩木山以外にほとんどないような気がする。
日本一の山と言われる富士山についても、尊敬の意を込めて「お富士山」と呼ぶ人は滅多にいないはずだ(群馬県に「お富士山古墳」なるものはあるらしいが)。
それだけ岩木山は信仰色の強い山なのかも知れないし、津軽の人たちが、岩木山に対する畏敬の念を強く抱いているといっても過言ではないだろう。