日別アーカイブ: 2017-05-15

複雑な心境渦巻く自己ベスト更新 - 第27回仙台国際ハーフマラソン

素直に喜べない自己ベスト更新。喜び3分の1、悔しさ3分の1、その他3分の1。
何だろう、この釈然としないモヤモヤ感は。結果的に、うまく丸め込んだ感じが自分自身への憤りになっているのかな。
イケるんじゃないか、やれるんじゃないか、いや、イケるはずだ、やれるはずだと言い聞かせた花巻からの3週間。
やるにはやった、結果、それなりにイケた。
…でも、それじゃ足りないんですよ。I can get no satisfactionなのですよ。46歳にして、再びもがき苦しむことになるとは。

ジャパン・ツアー2017の2戦目の会場は、2017年5月14日(日)の仙台市。仙台国際ハーフマラソンは、初めての出場。
朝6時、弘前駅を出発する普通列車に乗り込み、新青森駅で乗り換え。6時49分発のはやぶさ8号に乗車し、8時55分仙台着。
仙台に降り立ち東口に向かうと、パッと傘の花が開いているのが目に飛び込んで来ました。
「やはり雨か…。」
事前の天気予報は曇りだったり雨だったり、バラバラ。それだけ予想しづらい天気だったということ。
暑いよりはマシだ、とはいうものの、正直、雨の中で走るのは好きじゃありません…というよりもハッキリ言って嫌い。僕だけじゃない、皆さん一緒だとは思うのですが。ただ、肌寒さを感じるほどの寒さではなく、体温を奪う風がそれほど強くなかったのがせめてもの救い、といったところでしょうか。

せめて少しでも身体を温めないと、と会場までの1.6キロを荷物を背負ったままジョグ。その間も、無言の静かな小雨が降り続いていました。
初めて出場する大会とはいえ、この大会に関しては毎年テレビ中継されており、何となくコースのイメージは掴めます。ある程度であれば仙台の中心市街地の地図を頭に思い描くことができる、というのも利点かも知れません。とはいえ、いつもの如くコースマップと高低差は一通り事前に頭の中に叩き込んでおきました。
陸連登録の特権、ということで、今回はAブロックからのスタート。(Bの人が紛れ込んでいたことに走りながら気付いたけど、うちら陸連登録料を払っているんだよね。その中に紛れ込むなんて、無賃乗車みたいなもんじゃない?見るからに走り慣れない、後述するSを背負った人の中ですら代走と思しき人も見かけたし。お前ら、ホントふざけんじゃねえよ、とかなり憤慨。)
Aブロックの前には、先頭を争うエリートランナー、高速ランナーが揃ったSブロックがあります。雨に濡れるのはイヤだな、と思いながらも、9時45分までには各ブロックに整列するよう求められていたので、仕方なくAブロックへ向かうと、ゲストランナーの谷川真理さんと会いました。
出場するメンバーのうち数名がピンクのNo Apple,No LifeのTシャツを着ていたので、すぐに我々に気付いた谷川さん。
「今日は弘前から何名ぐらいエントリーしているの?」
「10名に満たないぐらいですね。」
「あれ?Tキャプテンは?」
「今日は不参加です。あ、Yさんは札幌に行ったようで…。」
「あ、そうなんだ!良かった(笑)。」

谷川さんから激励(?)の言葉を頂いてAブロックへ向かうと、既に大勢の選手が陣取っており、我々はAブロックのかなり後方に位置を取ることとなりました。…そうなんだよね、スタート前からレースは始まっているんだよね。
我々のすぐ背後には、ゲストランナーの人たちが揃ったブロックが。ふと見ると、かつて瀬古利彦さんや谷口浩美さんと名勝負を繰り広げた中山竹通さん、お笑いタレントの小島よしおさんらが顔を揃えています。その中でもひときわ異彩を放っていたのが、センダイガールズプロレスリングのカサンドラ宮城さん。
程なく、「小島よしお vs カサンドラ宮城」の「場外戦」が始まり、会場は笑いの入り交じったちょっと異様な雰囲気に。

そんな雰囲気の中、スタートゲートまでの距離を見ると、ざっと30秒のロスは見積もった方がいいのかな、なんてことを他のメンバーと話しながら、気がつくとスタート1分前のアナウンス。依然として小雨が降り続く状況の中、「絶好のマラソン日和(by 高橋尚子)」の10時05分、奥山仙台市長の号砲とともにいよいよレースが始まりました。
スタート時の混雑が結構凄い、という情報を事前に聞いていましたが、実際走ってみると、結構どころじゃなくてかなり凄い…。号砲から約25秒後にスタートラインを踏んだまではよかったものの、その後自分のペースで前に進もうにもなかなか進むことができず、手持ちの時計で確認したところ、最初の1キロは4分50秒!(stravaでは4分48秒)
いくら何でも遅すぎるでしょ、とペースを上げようとしても、道幅が狭くなったり、道路に溜まった雨水を避けようとした人が突然進路を塞いだりで、思うように前に進むことができません。スタート直後から足を取られて(引っかけられて?)転倒する人を2人も見かけるなど、これはなかなか厳しいレースになりそうだな、ということを考えましたが、後で言い訳するための邪念になるだけなので、すぐに振り払いました。

ちなみにこの日のレース展望(目標)は、次のような感じ。
・タイムは最低でも90分切り。あわよくば87分台のPB狙い
・前回の花巻で前半突っ込みすぎた結果、後半の失速に繋がったので、今回はムラのない走りを心がける。
・上半身、下半身の連動を意識する。
・無理に歩幅を広げるのではなく、前へ前へと推進する、というイメージ。
・跳ねるのではなく、スライドするといった感じ。

スタート時での混雑は2キロほど続くこととなり、結果、この区間だけでもかなりムラのある走りをすることに…。
JR線のガードをくぐり、仙台駅の西側に出てようやく自分のペースに持ち込むことができました。設定タイムは1キロ4分7~8秒でしたが、3キロ以降は時計に視線を送ることを止めたので、概ね設定通りのペースで最後まで走っていたことを知ったのは、ゴールした後のことでした。
沿道の声援はひっきりなしに聞こえて来ます。特に青葉通、定禅寺通は結構観客の数が多かったような。もっとも、この辺りは木や枝葉から容赦なく滴り落ちる雨が大変でした。しかし、雨の影響もあって声援を送る人の数は例年より少なかったそうです。
5キロ地点の手前、広瀬川に架かる大橋に向かって一気に下り、その後6キロ地点に向けて上り基調となります。
大橋の手前の下り、大きなストライドで颯爽と僕の横を駆け抜けていく一人のランナー。速いなあ、と思ってチラッと見たら、何と中山竹通さん!またとないチャンスとばかりに食らいつき、併走を開始します。他のランナーが中山さんに「キロ4分ぐらいですか?速いですね!」と話しかけると、「いやぁ、ダテに40年も走っていませんから。」と笑う中山さん。僕も一緒になってハハハ、と笑いますが、こっちは話しかけることができないぐらいイッパイイッパイ。なのに、12歳年上の中山さん、ちょっと余裕過ぎるんですけど。
一瞬、このまま中山さんをペーサーに見立てて走ろうか?そんなことも頭をよぎりましたが、それは今日のレース展望にないメニュー。ここはもう一度ギアを入れ直し、5キロを通過して上り坂に入ったところで再び中山さんの前に出ました。ちなみに5キロ通過は21分30秒。

程なくようやくコースの最高地点を通過。ここからしばらくは、限りなく平坦に近い緩~い下り基調になります。
広瀬川を再び渡り、仙台市中心部へ。川を渡った最初の交差点で左折しようとした時、川内優輝選手をはじめとする一団(あとでわかったのは、この一団が先頭集団ではなかったということ)が9キロ地点へと向かうのが見えました。やがて、最初の折り返しとなる定禅寺通では、依然として小雨が降る中で老若男女がランナーに向けて様々な応援を続けています。何かその姿を見ていたら胸が熱くなり、すずめ踊りの一団へは、思わずこちらから拍手を送ってしまいました。本当にありがとうございました。
10キロ通過は42分15秒。あれ?これって想定の範囲だったっけ?
10キロを過ぎてしばらくすると、コースの真ん中に仁王立ちする人が。ん?誰だあれ?と思ったら、スペシャルアンバサダーの高橋尚子さん。駆け抜けるランナー一人一人とハイタッチをしています。もちろん僕もハイタッチを交わしながら、「ありがとうございます!」とお礼を伝えます。大体こういう「イベント」があると直後にハイペースに陥る、という傾向があるのですが、まだ中間地点。フォームは乱れていないか、ペースを崩していないか確認しながら気持ちを引き締め直して先へと進んでいきます。

再び仙台駅東側のゾーンへ。相変わらず小雨が降り続いていますが、沿道の声援は途切れません。その声援に応える、というわけではないものの、上半身と下半身を意識して、無駄に跳ねることもなく、しっかりと走っている感じ。
ゴールとなる陸上競技場の外周をぐるりと一周して、スタート地点へと戻ってきました。2度目の折り返しを終えたエリートランナーの皆さんが、ゴールとなる陸上競技場に向けて続々と進んでいくのが見えてきました。その中に、川内優輝選手の姿を再び捉えました。
こちらはまだ15キロ地点。電光掲示板は1時間2分台を指していました。ゴール時間を逆算しながらスタート時に右折した交差点を左折し、最後の折り返しに向かいます。もう、タイムのことは考えないって決めていたはずなのに。
その時、目の前に突如現れたのは、貨物駅近くの跨線橋。
「あ、そうだった…。この橋の存在をすっかり忘れてた…。」
結構な長さの緩い上り勾配で、最後、20キロ地点を迎える跨線橋でもあります。一瞬気持ちが萎えかけますが、ここで垂らしては元も子もないと、他人には見せられないような表情で上りきり、進路を東方向へと進めます。この辺りでは、向かい風が時折吹いてきます。失速した花巻のことが一瞬頭をよぎりますが、大丈夫、今日のペースは安定しているはずだという妙な自信がありました。

17.6キロの折り返し直前、前を走っているのは恐らく同じ弘前公園RCのA先生の姿だったと思ったのですが、確信を持てぬまま、視界の幅を狭めてひたすら前へ前へと突き進みます。花巻で失速した15キロ以降、後からやってくるランナーの後塵を拝する、ということになりましたが、今日は違っていました。
17.6キロ、最後の折り返し。雨脚が少し強くなってきました。結局「曇り」の天気予報は完全に外れ。いよいよ残り3,500メートル、ゴールまでのカウントダウンがスタート。ラストスパートは跨線橋を越えた20キロからだ…。
結局、A先生にどこかで追いつき追い抜いたらしいのですが(19キロ付近だったらしい)、その記憶もなく、いよいよ最後の難関、貨物駅近くの跨線橋へ。
脚も心も切らさぬまま、ラストスパートとばかりに下りでペースを上げ、先行するランナーを抜き去ります(もちろん、僕を抜き去るランナーも多数)。
陸上競技場のトラックで出せる力を振り絞れ、とばかりにペースを上げ、最後の直線へ。ふと見ると、電光掲示板が01:27:48…49…50と秒を刻んでいます。

「うわっ!」

恐らくこのレース最速でゴールに飛び込むも、速報タイムは1時間28分02秒。あわよくばの87分台へわずか3秒及ばず…。
いや、一応自己ベストを更新したんですよ…たった19秒ですけど。ネットタイム(実際にスタートラインを踏んでからゴールするまでの時間)では、87分台なんですよ。

ゴールした直後にいつもの如くコースに向かって一礼したあと、フィニッシャーズタオルを受取り、出口へ向かうと、学生たちのハイタッチが待ち受けていました。飲料を受け取ったあと、スタッフやボランティアの皆さんに対して、自然と「ありがとうございました。お世話になりました。」という言葉が口から溢れて来ました。
雨の中のレースで荒んだ気分の中、一筋の光明とでもいえばいいのでしょうか。
一人一人に「雨の中、本当にありがとうございました。」と握手したいぐらい、感謝の気持ちでいっぱいでした。

「ハーフマラソンでの90分切りを当たり前にする」という当面の目標は、昨年10月から今レースで3連続達成ということになりましたので、目標はクリアした、と言ってもいいのかな。でも、1時間28分21秒、25秒、そして今回の02秒。何だか記録が良くも悪くもまとまってきたなあ、という感じ。
あとで結果を見ると、5キロ毎のタイムはかなり綺麗に刻んでいます。ハーフマラソンの大会でこれほど綺麗にタイムをまとめたことは、ないはずです。ほぼ一定のペースを最後まで崩すことなく、しっかりと走りきった感じ。なので、やろうと思ったことはやり切った、と評価してもいいでしょう。20キロからゴールまでは4分19秒、恐らく4分を切るペースで走っていたのかな?ただ、これだけ綺麗にタイムをまとめたということは、裏を返すと今回「も」勝負はしていなかった、ということに。

結局のところ、この結果に全然満足できていないということは、もう少し頑張れるはずだという自分への驕りか、はたまた単なる勘違いか…。何かやりきれないというか虚しいというか、何だろう、自己ベストを更新したとはいうものの素直に喜べないこの複雑な感情。この日の天気同様、スッキリとした晴れやかな気分になれないという。

いずれにせよ今季2戦目、まだ自分の力を全部出し切ったとは思っていない、というかまだ出し切る時期ではないと思っているので、自分を信じてこれを弾みに次へと繋げていきたいと思います。
今回の大会運営に携わったスタッフそしてボランティアの皆さん、更には沿道で声援を送ってくださった皆さん、本当にお世話になりました。
練習にお付き合い頂いた皆さんにも、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
そして、一緒に雨の仙台を駆け抜けた皆さん、お疲れさまでした。

…どうやら仙台に落とし物をしてしまったようなので、また拾いに来ないとなあ。

(ゴール直後に受け取ったフィニッシャーズタオルは、速攻で汗拭きならぬ雨拭きに変わりました。助かりました。Tシャツは、昨年までのものと比べるとかなり良くなったと評判のようですが、この色合い、最近の大会ではちょっと多過ぎかも。)