日別アーカイブ: 2009-05-01

エレファントカシマシ 『昇れる太陽』

4月18日午後3時からOAされたTOKYO FMのラジオ番組にゲスト出演したエレカシのボーカル宮本浩次が、生放送中にもかかわらずブチ切れし、DJとかなりイタイやりとりをしたことは、某掲示板などでもかなり話題になった。僕はちょうどこのトラブルになる直前まで車の中でラジオを聴いていたのだが、あと2分我慢できずに車を降りたことを、後になってこのことを知り、後悔した(5分ぐらい過ぎたあたりから凄いことになります)。


結局双方がそれぞれ謝罪コメントを発表し、事態は一応収束と相成ったわけだが、発売前のアルバムのプロモーションの場、それも生放送で「バカ」とか「ゲロで吐け」なんてことをDJに向かって口にしてしまうのは、何かもの凄く大人げない言動であるようにも思えるが、DJの発した言葉が宮本を不快にしたのは事実だし、何か宮本らしいといえば宮本らしい。プロモーション的には賛否両論あるにせよ、「アリ」だったのではないだろうか。というかこれじゃ、『昇れる太陽』のPRじゃなくて、「怒れる宮本」を露わにした印象が強く、個人的には、エレカシ宮本の「毒」が久しぶりに復活したな、とほくそ笑んでしまったのだが…(笑)。

エレファントカシマシがメジャーデビューしたのは88年、だった。知る人ぞ知る「eZ」という音楽番組で彼の唄う姿を初めて見て衝撃を受け、すっかり惚れ込んでしまったのだが、当時の宮本浩次はひたすら寡黙で、ライブはといえばノースタンディング、しかも客電付きだったらしい。そんな中で観客が拍手や声援をあげると「うるせぇ!」と罵声を浴びせるなど、観客との過激なやりとり、というか相当緊張感を強いられるライブだったようだ。

結局彼らは売れ行きがパッとしないまま、エピックソニーとの契約を打ち切られてしまうのだが、このことが彼らに転機をもたらした、といってもいいだろう。
彼らの名を一躍有名にしたのが、レコード会社移籍後、ドラマの主題歌として使われたシングル「今宵の月のように」で、この頃からメディアへの露出が急に増えた。デビュー当時のエレカシを、囓った程度ではあるが知っていた僕としては、テレビに出て頭をかきむしりながら饒舌に喋る宮本の姿に、何ともいえない居心地の悪さを覚えたものだった。

さて、だいぶ前置きが長くなったが、レコード会社を転々としながら、その間にも天国と地獄を味わったエレカシの最新作『昇れる太陽』。
タイトルだけをみると、なんだか昭和の時代に作られた映画のタイトルみたいだ。しかもジャケ写は、これまた今どき珍しい、ハエみたいな大きな黒いサングラスをかけた宮本の顔がドーン。まぁ、「昭和の日」に発売されたということを考えると、意外とエレカシサイドとしては「昭和」というタイミングを狙っていたのかも知れないが。

何と、このアルバムがエレカシにとって19枚目だということにも驚きだが、新たな息吹を吹き込まれたエレカシの作品が、いろいろな紆余曲折を経ながらではあるが、多少なりとも注目を受けるということは、個人的にはとても嬉しいことだ。
今作では、映画やCMのタイアップもあり、初期の頃に比べれば、幾分世俗に迎合した作品に仕上がっているのは事実かもしれない。多分、この作品でエレカシを好きになったいう人は、初期のエレカシを聴くと、その攻撃的な楽曲にビックリすることだろう。

それでも、特にここ数作は本当にクオリティの高い内容に仕上がっていて、決して流行に飲まれることのない、独特のエレカシ節が相変わらず炸裂している。どことなく不器用さが残り、泥臭く、それでいて洗練された彼らの作品は、彼らなりの解釈をふまえた進化を確実に遂げている。
その中にあっても今回のこの作品は、エレカシの中でもかなりお薦めできる作品になっているような気がしてならないのだ。
多分エレカシを好きな人はとことんエレカシを好きだろうし、嫌いな人は心底嫌っていることだろう。エレカシというのは、そういう好き嫌いのハッキリするバンドなんだと思う。

だから、Amazonのユーザーレビューを見ると、どの作品も評価が高いのは、そんなエレカシ大好きな人たちが、こぞってエレカシをみんなに紹介したいという思い一筋から、レビューを寄せているからなのだろう。
全体を通じて聞いてみたが、しばらく飽きが来ない、ヘヴィロテになりそうな予感の作品だ。
文学を愛する宮本の作る作品は、どことなくドラマを感じさせる。たぶんこういう言い方は一番宮本が嫌いそうなフレーズだが、いわば「歌謡ロック」のような作品なのだ。日本語ロック…?ちょっと違うか。でも、英語の歌詞ばかりが溢れる日本のロックに飽きた人には、いい刺激になる、かも。多分。わかんないけど。

ラストナンバーである「桜の花、舞い散る道を」を、桜の花が舞い散る弘前市内で車を走らせながら聞いてみた。ちょっと感動しちゃったよ。