長引く怪我の影響もあって、ここ最近、というか今年の大会の結果が今ひとつパッとせず、走ることに対する熱が少し醒めてきたのかな、と悶々としていたところへ、信頼を寄せるラン仲間の方々から叱咤激励。これがかなり効きました。
10月4日の「弘前・白神アップルマラソン」では、フルマラソンで4時間30分のペースセッターを務めることに。フルマラソンを4時間30分で走りきるということは、実は僕自身今まで経験したことのないタイム。(僭越ながら、もっと速いタイムでしか走ったことがない、という意味で。)
フルマラソン挑戦3年目、これまで7回しかフルマラソンを走ったことがないのに、ペースセッターを務めるという図々しさ。自分みたいに経験もそんなにないヤツがペーサーなんてやっていいんだろうか?というかその前に、出来るんだろうか?という葛藤。実はこの自問自答が自分の心をちょっと疲弊させていたみたいで、どうやらかなり神経質になっていた模様。
まあそれでも、やると決めた以上は絶対にやりますよ!ということで大会前日は22時前に就寝…のはずが、ラグビーW杯の日本-サモア戦が気になって23時30分頃に目が覚め、そこから結局ノーサイドまで起きてました。
翌朝目が覚めたのは4時40分。熱めのシャワーを浴び、「秘密の粉(といってもヤバイ粉ではありません)」を混ぜた500ミリリットルの経口補水液を、家を出るまで飲み続けていました。
その他9時のスタートまで口にしたのは、例の如く切り餅。
今回は、納豆と一緒に4個、雑煮にして3個を平らげました。この他に、無調整の豆乳とバナナ1本。
7時30分前に受付会場のある追手門広場に到着。まずは弘前公園ランニングクラブのテントに荷物を置いて…と。しかしまだ早かったらしく、あまり人は集まっていませんでした。空を見上げると、雲の切れ間から青空が広がっています。
これが昨日じゃなくてよかったな、と思いながら、何とか天気が持ちこたえてくれることを祈ります。というのも、前日は激しい雨と雷が断続的に続き、朝練もやらなかったぐらいなんですから。
8時前後になると、かなり多くの人が集まってきました。僕も受け取ったペースセッター専用の赤いビブスを着用し、気合いを入れ直します。しかし、これを着用して歩いていると相当目立つらしく、多くの方から好奇の目で見られることとなりました。
8時15分、すっかり恒例となった弘前公園ランニングクラブの市役所前での集合撮影。今回はhoneygoodや絶倫魂など、他の団体も一緒の撮影となり、通りがかったバスが思わず停車したり、道行く人がカメラを向けたりと、ちょっとした「名物」のような様相を呈していました。…まあ、一度NHK-BSでも放映されたしね(笑)。
続いて8時30分、今度はゴールゲートの前で、ペースセッターを務めるメンバーで地元新聞社の取材と撮影…のはずが、連絡がうまく伝わっていなかったようで、一人足りない状況の中での撮影となってしまいました。
まあ、8時15分の集合写真の際に全員で撮影できたし、結果的にこの画像そのものは記事には使われなかったので、そこは結果オーライということで…。
8時45分。いそいそと移動を開始。途中、部署は違えど同じ職場で働くK氏と会い、色々話しながらスタート地点に向かいます。彼が結構頑張って走り込んでいるのを知っていたので、きっと目標達成できるはず、と願いながら。(結果K氏はサブ4達成、PB更新でゴールしたそうです。おめでとう!)
「目標:4時間30分以内」と書かれたプラカードの前に立つと、背後に並ぶ人達からにわかに期待の声が。そこでくるりと後ろを振り返り、いくつかお願いと注意事項を伝えます。
・後半に少し貯金を残すため、ペースは6分15秒から20秒前後を想定していること。(実際は6分10秒前後だった。)
・最初から最後までうちらのペースに合わせて走ろうと考えず、最後は自分のペースで走りきること。
・給水は全て必ず摂ること。
・スタートしてすぐの坂道でペースを上げないこと。
程なく、一緒に走るTキャプテン(以下「相棒」といいます。)も横に並び、あっという間にスタートの時間が迫ってきました。妙な緊張感が漂ってきます。
「10秒前」の声と同時にGPS時計に手を掛けます。そして9時、いよいよ4時間30分のペースセッターとしての役割が始まりました。
正直、練習でもなかなか走ったことのないペースということで、果たして無事に走れるのだろうかという不安がありました。スタート時のロスを考慮しても、最初の1キロ6分29秒はまずまず。5キロで32分を想定していましたが、実際は30分42秒と、やや早めのペース。「ちょっと早いんじゃないですか」という声がちらほらと聞こえましたので、少しペースを抑えながら走った…つもりでした。でも、結局10キロまではほぼ変わらないペースで走っていたようです。
途中、給水地点が近づいていることや、長い下り坂があること、そしてそれが復路では長い上り坂になることなど、ポイントとなる地点については大きな声で伝えながら走ります。スタート時点でその数50人は近くいたのでしょうか、一団となって僕らの後ろをピタリとついて走ってきます。
スタート時に出ていた陽射しが隠れ、冷たい風が吹いてきました。10キロ通過は1時間1分30秒。予定では、このままのペースで押して行ければ、設定タイムより3~4分早くゴールすることができます。しかし、ここでの油断は禁物。時計に目を配りながら、一定のペースに落ち着かせるよう、「相棒」と歩調を合わせます。ところが、身体に吹き付ける冷たい風が災いしたらしく、10キロを過ぎた辺りで尿意をもよおしてきました。そしてついに12キロ地点の給水所で、ペースセッターとしてはありえないトイレタイム…嗚呼、すいません。
その後、尿意から解放された私、足取りも軽く先を行く集団を追いかけます。ちょうど緩い上り坂、気にならない程度とはいえ、ここで無理をするとあとのダメージとして響いてきます。程なく集団に追いつき、背後から声を掛けます。
「いいですよ!皆さんいい走りしていますよ!まだまだ余裕ありますねぇ!」
一度追いついたあとで、緩く長い上り坂の頂点付近まで先に走り、今度は写真撮影。こういうことをしながら、徐々にランナーに緊張を解いていく、という僕なりの作戦でした。もっともこれ、4時間30分のペースセッターだからこそできたわけで、多分4時間なら無理だったと思います。
(写真を見ると皆さん楽しそうに走っているでしょう?こうやって緊張をほぐすのも大事だと思いました。)
14キロ地点を過ぎた辺りで、小雨が降ってきました。
そしてこのあたりで、先に折り返してきたトップの選手が白バイに先導されてやって来ます。ちょうど1車線に規制された狭い区間だったため、後ろを走るランナーの皆さんに左側に寄るように声を掛けます。
一度止んだと思ったその小雨は、18キロ過ぎから再び降り始めます。遠くの景色が霞んで見えているということで、恐らくこのあと折り返しまではしばらく雨が続きそうな気配。これまでのマラソンの時は暑さ対策を色々考えてきましたが、今日に限っては寒さ対策が必要だったようです。(結局雨は折り返す直前で上がりました。)
その後も続々と反対車線をやって来るランナー。入賞を目指す仲間、3時間切りを目指す仲間、そして、自己ベストを狙う仲間。やがて、3時間30分のペースセッターがやって来ました。背後には大勢の人達。うわぁ…うちらもまだこんな感じなんだろうか…。すれ違いざまに声を掛け合い、お互いを鼓舞します。仲間たちは、明らかに走力が上がっています。続いてやって来た4時間のペースセッター。その背後にも、たくさんのランナーが…。
気がついたら西目屋村に入りました。と同時に、ようやく折り返し地点が近づいてきました。
天気があまりよくないこともあってか、観客は昨年より少ないようです。それでも、我々に声援を送ってくれる地元の人達。ただただありがたいです。
僕はといえば、折り返し地点の先にある建物に、既にこの世にいない二人の姿を思い浮かべます。
気を取り直し、「さあ、折り返しますよ!」と声を掛けます。
折り返し地点を過ぎるとすぐに、弘前公園ランニングクラブの私設エイドがあります。そこに立ち寄り、コーラ一杯と、チョコレートを一つ。すぐに給水所もあるのですが、私、またしても尿意をもよおし何とこの給水所で2度目の小タイム…すいません。ホント寒かったんです…。
(後篇につづく)