日別アーカイブ: 2014-11-13

「やねだん」リーダー豊重哲郎さんの講演に涙しました。

「やねだん」という言葉を聞いたことがあるだろうか。いや、言葉ではなく、正しくは地名の通称である。
鹿児島県鹿屋市にある、日本全国どこにでもありそうな、高齢化の進む一集落。
この何にもない集落で始まったのは、行政に頼らない「むら」おこし。
鹿屋市串良町の柳谷地区(通称:やねだん)での取組みは、各地区のモデルケースとして大いに役立つところがあるようで、今も県外からの視察が途絶えないという。

そんなやねだんのリーダーでもある豊重哲郎氏の基調講演が行われた。
11月12日、「青森県地域づくりネットワーク推進協議会20周年記念フォーラム」。
場所は青森市のアップルパレス青森。

会場にやってきた方々の顔ぶれを見ると、県や市町村の行政関係者が半数を超えている。その他、NPO関係者や任意団体の方々もちらほらと。
先日の東北OM三沢勉強会やパワフルAOMORI!!創造塾のメンバーの顔も見受けられた。

豊重氏の話では、青森県での講演は、47都道府県で最後となるという。

…そういえば、映画「ふるさとがえり」の上映会も青森県が最後だって言われたっけ。
そういう類の招聘が下手くそなのか、それともそういう類に興味を示したがらないお国柄なのか、あるいはそういう類の行動がまるで必要のない地域なのか…。

それはともかく、まずは汚い字で殴り書きされた基調講演の聴講メモ。(補足あり)

・立ち位置を相手に置き換えると、見えてくるものがある。
・地域再生のテーマは「文化向上」→やねだんでは、地区内の空き家を改装し、7人(6人?)の若手芸術家に県外から移住してもらった(豊重氏による面談も行われた)。自らの芸術活動の他、学校教育(課外授業?)にも関与してもらう。今のところ、誰もやねだんを離れる人はいない。
・地域の外の人たちを、地域と連携させる。コマが外にいるので、連携がずっと続く。
ex.)やねだん地区で栽培された芋から作った「やねだん焼酎」を3本、地域の人たちに無料で配付。1本は自宅に、残り2本は地域外の方達に送る。送られた地域外の人たちは、「やねだん焼酎」のことを勝手に自慢・宣伝してくれる。→やねだんと地域外の人たちとの連携。
・「感動」と「感謝」。地域づくりは「感動」。感動から、「感謝」が生まれる。
ex.)父の日母の日敬老の日に、地域の外で暮らす子どもから、やねだんで暮らす親に充てたメッセージを地域の高校生が代読。毎戸に設置された有線放送で流している。そのメッセージに親は「感動」し、代読した高校生に「感謝」を伝える。(豊重さんの活動に反目していた長老が、15年間音信不通だった息子さんからのメッセージを聞き、「俺を泣かせたのはお前だけだ。お前には負けた。」と言って泣きながら抱擁、それまでの冷えた関係が氷解した。)
・出口から出ないとアイディアは出てこない。入り口ではなく出口を考える。
・ちなみに、やねだん焼酎の出口は、「通販」。(実際、現在HPで「やねだん焼酎」の通販が行われている。買いたいと思ったのは、僕だけではないはずだ。共同購入しますか。笑)
・地域づくりは、100万円以下のお金では何もできない。
・半径100メートルの人に認められる(納得させる)。そのためには、名前、顔、その人の心を知る。
・地域参加のプロセスは3~5セット。どこか一つでもいいので、参加できるようなポイント(コマ)を作る。
ex.)畑作りに始まり、芋の植え付けから草取り、収穫まで、どこかで、何らかの形で、地域の人を関与させる。(口ではなく行動で)
・地域づくりは1人でするな。100人でしろ。
・地域の人から天狗と思われるような行動は、するな。
・地域づくりの約束事。「急がない、焦らない、近道しない。」→絶対成功する。
・不満に思うことのアンケートを取ってみる。
・黒子に徹するのは最高である。
・韓国との繋がり。たまたま福岡に来ていた韓国のホテルオーナーがテレビを見て感動し、その足で「やねだん」までやってきた。これが民間の行動力。
・「やねだん」の取組に感動し、自ら経営する韓国のホテル内に居酒屋「やねだん」を開業。以後、ホテル以外の場所にも開業。現在韓国のテグやソウルで5店舗を展開。
・関係構築を強固にしていく中で、韓国のとうがらしを栽培するプロジェクトがスタート。「やねだん」の気候と土はとうがらしの栽培に適している。
・収穫したとうがらしは韓国にも輸出。→文字どおり「外貨」の獲得。
・とうがらしは、鳥獣害に遭わない作物。同様の作物を3つ見つければ、行政として大したもの。(ちなみにやねだんでは2品目に取り組んでいるらしい。何かは明かさなかった。)

・反目している人ではなく、無視している人を、どう動かすかが大切。
・リーダーには、度胸と勇気が必要。
・人をその気にさせる方法は、段取りが8割。
・地域づくりは「自己満足」ではなく「他己満足」である。
・地域の年齢分布図を作る。これ、かなり重要。

もっと話を聞きたいと思ったが、かなり端折ってのお話しとなってしまったのがすごく残念だった。(そういう意味では、講演の前半で流したVTR、確かに「やねだん」の活動を知る手っ取り早い方法ではあったが、もっと短くても良かった。)

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僕は別に何か積極的に「地域づくり」に取り組んでいるわけでもないし、何かそういう活動を行おうと考えているわけでもない。
でも、「何かやれそうな気がする」「何かしなければ」とこちらを奮い立たせるような豊重氏の言葉のマジックに、かなり心を揺さぶられた。
壇上にとどまることなく会場内を歩き、時折言葉を詰まらせ、声をうわずらせ、涙声になりながら語りかける豊重氏の熱いメッセージに、胸を打たれ、危うくこちらが落涙しそうになった。

最近あちらこちらで耳にする「地域づくり」「まちづくり」。
でも本当は、「地域づくり」や「まちづくり」に名を借りて、鍵で閉ざされたような閉塞的な社会からの開放というか、かつて見られたような社会、「ひと」と「ヒト」との繋がりの再構築をすることが根底にあるんじゃないかな、と思った。
やれ「地域づくり」だ「まちづくり」だって一人で声高に叫んだところで、何かが生まれるはずがない。
そこに共感する人が現れ、そこから繋がりが生まれ、その繋がりが…1人が2人、2人が4人、4人が8人、みたいな…。「やねだん」も然り。みんなが(全くではないにせよ)同じ方向を向き始めたことで、まるで強固なベクトルが作用したように大きなうねりを生み出したわけだし。

…あれ?そういえばついこの間、これに似たような話(点と線、線と面)を記事にしていましたね。

基調講演のあとは、あおもりコミュニティビジネスサポートセンターの山田さとみさんによる県内の事例発表。

青森県内で行われた地域づくりの3事例が紹介された。
佐井村、新郷村、黒石市。
地域も文化もまるで異なるこれらの地域で、それぞれ自分たちの地域を良くしたい、何とかしたいと思い始めた人たちが動き出し、それがそれぞれの形となって地域づくりに貢献している、という実例。
ただ、こちらも時間が足りず、結構内容が端折られた感じだった。ちょっと残念。まあ、山田さんとはまた別の機会に違うところで、落花生をつまみながらゆっくりお話しをすることにしよう。

さて、これはFacebookでも述べたことだけど、昨今の地域づくりのツールとして取り上げられているのが、「まちあるき」。
以下、このフォーラムに参加した直後、Facebookに投稿した内容を抜粋してそのまま転載。
賛否両論あるかも知れないけど、僕が感じていることはこれ以上でも、以下でもないので。


「どうもあちこちで「まちあるき」を基調とした地域おこしに取り組んでいるようですが、まちあるきもここまで拡がると、付加価値というか、よほど何か変化球を用意しないと、手掛けた地元の人の「自己満足」に終わってしまうような気がします(少なくとも北海道新幹線が開業する頃には、よほどのネタがないと「まちあるき」も下火になっているような気がするのです)。
「他己満足」に繋げるための次の一手をどうするか。
入口ではなく出口を考えて取り組むことが必要みたいです。

これが今日、僕なりに学んだことです。僕も色んな意味で黒子に徹したいと思いました。」

ここでの投稿の意図は、「まちあるき」に関する複数のネタがあるところであれば、色んなバリエーションでまちあるきを行うことができるけれど、一つしかないと、すぐに飽きられるのではないか、という懸念であり、「まちあるき」そのものを否定しているワケではないので念のため。
「まちあるき」も「地域づくり」も、それを始めることでどうなる、いや、どうなりたいかという出口のビジョンを描かないとうまくいかない、ということだろうか。

自戒を込めて言わせていただくと、これって行政が作る「ハコモノ」にも通じるところがあるんだよね。もしも「地域おこし」や「まちづくり」のシンボルのような形で整備されたハコモノであれば、なおさら恐い。
だって、ランニングコストばかり気にして、中身を入れ替えることに頭が回らないから。

一度見たらおなか一杯という展示物(…という言い方はあくまで誇張です。ホントは端から観る気も失せるようなつまらない展示物だったりします)しか置いてなくて、結局数年後(早ければ数ヶ月後)には閑古鳥が鳴いている状態で、中の展示物に興味を示しているのは、クモの巣を張ったクモだけ、といった有様になるのがオチ。

もっとも、最近の「地域づくり」はハードの整備よりソフトの整備に重点が置かれているし、行政主導よりも地域住民や民間の組織・団体主導にシフトしているので、そんな不安を抱く必要がないのかも知れないけど。

「地域づくり」に話を戻すと、僕の場合、町内会がもっとも身近なコミュニティということになる。
ちなみにうちの町内では、市の中心部に近い場所に位置しながら、高齢化そして過疎化、更には建物の空洞化が急速に進んでいる。

でも、実のところ町内会の集まりには一度も顔を出したことがないし、町内会費が何に使われているかなんて気にしたこともなかった。まあ、回覧板についていた町内会の決算報告で、敬老の日にバス遠足みたいな経費が出ていたのは見たことがあるけど。
豊重さんのお話を伺いながら、偏ったお年寄り(自称「地元の有識者」)しか参加しないようなコミュニティではなく、もっと幅広い年代が参加できるようなコミュニティになるよう、一石を投じてみるのもいいかな、と思ったのも事実。

豊重氏の講演、そして山田さんの発表は、まずは半歩、いや一歩を踏み出す勇気を頂いたような気がした。