Monthly Archives: 12月 2018

平成は最後でも、21世紀は終わらない。

自分の「立ち位置」を見つめ直す。
2018年は、まさにこんな感じでした。

「申酉荒れて戌亥の大凪」という格言とは裏腹に、大荒れ過ぎた戌年。

そろそろ自分の老い等も考えなければならないお年頃、今年は色んな面において全く成長を感じることができませんでした。成長どころか退化、劣化、硬直化が進行してしまった感じ。寄る年波にささやかな抵抗を続けているからこそ、一度自分の「立ち位置」を見つめ直すことが必要だったのかも知れません。

実際今年を振り返ると、ガッツリ立ち止まって自分の足元を見つめ直したり、自分のポジション(立ち位置)を確認したり、という機会が何度もありました。

正直、何にでも与するって本当に疲れるものです。

以前であれば「来るもの拒まず去る者追わず」の姿勢でオープンマインドを貫くつもりでしたが、昨年の暮れ頃から考え方が少しずつ変わりました。

泰然自若。
もう少し大局的な見地というか、物事を俯瞰するような立ち位置で色々考えればいいだけの話なのですが、どうも木を見て森を見ず、な状態に陥っていたようです。

木だけではなく森を眺めるため、木との間に少し距離を置くと、視野が広がります。これこそが「木休め」ならぬ「気休め」というヤツ。押すばかりではなく、時には引くことも必要って、まさにこんな感じでしょうか。

いや、決して「気を引く」ことではないですよ。

ここ数年、自戒のために意識している言葉があります。

「慌てず焦らず諦めない。」
「気負わず気張らず気にしない。」

これに合わせて最近意識していること。

「怒らず威張らず粋がらない。」(※所謂「イイガラない」にも係っている。)

人それぞれ色んな考え方がある以上、そこに見解の相違が生まれるのは当たり前のこと。

物事を進めるうえでの勢いは、とても大切だとは思いますが、勢い余って他人を威嚇するほどの勢いとなっても困るし、逆に形だけの虚勢になってしまうと、ただ疲れるだけだし格好悪いものです。

見解の相違や意見の食い違いにいちいち腹を立てても仕方がないことですが、かといって全く相容れないのは少し違うのではないかな、と思う今日この頃。

だからこそ、一方的に我を貫くのではなく、傾聴の姿勢も大事だよね、ということ。

そういう意味では、常に心の余裕、寛大な心を持っておきたいものだなあ、と思うことが多々あります。

失敗から得られることも多々あるとはいいますが、結局のところ「失敗」は、失うものが大きいというものです。

ちなみに僕の場合、口が災いとなって失敗することが圧倒的に多いため、もっと謙虚にならなければならないと自覚している…つもりです。しかし、もはや若気の至りが通用する年代ではなくなっているとはいえ、持って生まれた性分を簡単に変えることができるはずもなく、我慢ならぬものは我慢ならないんですけどね。もっとも、常々深くしたいと思っているのは「ネッチョ」ではなく、「懐」なのですが、たまには思い切り開き直ることも必要なのかも知れません。

今年の漢字は「災」だそうですが、いよいよ50代が霞んで見えてくる中、この先は「無病息災」で過ごしたいところ。

そして来年は年男。年甲斐もない猪突猛進も、ほどほどにしたいと思います。

しかし、今年はホント色々疲れました。
もはやこのブログは、自分にとって唯一の毒の吐き出し口になるかも知れません。少し喧騒から離れて、静かに年末を迎えたいと思います。
皆さま、穏やかな年末年始をお過ごしください。

「不思議な木」の話

「ディスる」を漢字で何と書くか、ご存じですか。
皆さん、気分は丸まっていますか。何となく気分がギスギスしていませんか。今日は、そんなギスギスした気分を晴らすために、寓話を一つ。


とある田舎の小さな町に暮らすボブとジョージは、たまたま路傍で見つけた小さな芽に心を奪われ、一緒に水やりを始めた。
成長を祈りながら、二人は毎週のように、愛情を持って芽に水やりを続けた。
やがてその芽はすくすくと成長を始め、細い幹となり、広がり始めた枝から小さな果実が収穫できるまで大きくなった。

それを見ていた町の人たちが、「一緒に水やりに加わりたい」と申し出てきた。
順番や時間などをみんなで相談し、交代で水やりを続けた結果、小さな苗木は背丈を越えるまでの大きさまで成長した。
そして、毎年のようにさまざまな果実が取れるようになった。
赤い果実、黄色の果実、緑の果実、中には水色の果実まで。
程なくその木は「小さな町の不思議な木」として有名になり、町の内外からその木を見るために多くの人がやってくるようになった。

そんな状況を、ボブとジョージたちは目を細めて眺めていた。
「いつまでもこんな光景が続いたらいいなあ。」

木を取り囲む人たちはどんどん増えていき、「僕にも、私にも手伝わせて下さい」と、町の外からお世話にやってくる人まで現れた。

ボブとジョージはみんなと相談し、水やり、追肥、農薬散布など、それぞれの役割に応じた作業に取り組むようになった。

しかし、しばらくするとそれを傍から見ていた一部の人たちが、悪さを考え始めるようになる。
枝を折る人、果実を盗もうとする人、木をナイフで傷つける人…。
その中には、かつて作業に加わっていた人もいた。

ボブとジョージは、そんな嫌がらせに耐えながら黙々と作業を続けたが、手伝う人たちがどんどん増える一方で、その人たちとの会話が徐々に減っていった。

5年も過ぎると不思議な木は更に大きくなり、2階の屋根を軽く越えるほどの高さまで成長した。
しかし、あまりに成長してしまったため、いつしか果実の収穫が追いつかなくなるようになった。
更に、ボブとジョージですら、どこに何色の果実があるのか見分けがつかなくなり、虫食いや落果の被害も現れ始める。しかし、二人の欲はとどまるところを知らなかった。

あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しい、もっともっと欲しい。
あれもしたい、これもしたい、もっとしたい、もっともっとしたい。

いよいよ当初から水やりを手伝っていた人たちの手にも負えなくなるようになり、最初は面白がって作業に加わっていた人たちも、面倒くさがって少しずつ作業から離れていくようになった。

そんなある日のこと、不思議な木に根腐れが見つかった。
既に完全に根元がぐらついている。症状は思った以上に深刻だった。
ボブとジョージは、欲と果実にばかり気を取られた結果、根元の変化に全く気付けなかったことを悔やんだ。

「あの時どうして、僕の話に耳を傾けてくれなかったんですか。」
苦虫を噛み潰したような表情で口火を切ったのは、途中から作業に参加していたサムだった。
サムは、作業に参加したその日に、不思議な木の根腐れが始まっていることに気付いたが、ボブとジョージは「どうせサムは作業に参加して間もないから…。」と、聞く耳を持たなかった。

周囲が動揺する中、サムは続けた。
「ここの人たちはみんな、そういう色眼鏡で人を見ているんだろうね。」
悲しそうな表情を浮かべながら、サムはその場を立ち去った。

やがて、あの木は近づくと危ないという噂が立ちはじめ、あれほど賑わっていたはずの木の周囲から人影が消えた。

ある日の夜、季節外れの台風に見舞われた。
灰色の雨が激しく窓を叩き、生温い風が強く吹き荒れた。
台風が去った翌朝、不思議な木は、無残にも根元から折れて倒れていた。

思いもよらない光景を目の当たりにしたボブとジョージは、その場に呆然と立ち尽くしながら、成長に任せて樹木を放置しておいたことを、この時になって初めて激しく後悔した。
枝払いに剪定、もっと樹木の管理をしっかりやるべきだった、と嘆いた。

「いや…だから、そこじゃないんだよね。」
周囲の人たちが一斉に二人を指弾し始めた。
二人が本当に周囲の声に耳を傾けていたか。果実を収穫し目先の富を得ることよりも、この先もずっと樹木を世話する人たちに、もっと気を配るべきではなかったか、次から次へと矢継ぎ早に二人を攻め立てた。

周囲の人たちの意見は全て正論だった。一言も反論できず、二人は泣きながら黙々と不思議な木の幹や枝を切り続けた。まるで、火葬を終えた亡骸の骨を拾うように。

その姿に居たたまれなくなったのか、やがて遠巻きにその作業を眺めていた人たちが一人、二人と作業に加わり、切り倒した木をチップにしたり、辛うじて残った倒木の根元から株分けした苗木を持ち帰っていった。
ボブとジョージも、株分けした苗木をもう一度最初から育てることにした。

「そう、この木は僕たちだけのものじゃない。みんなのものだったんだ…。」

ボブとジョージは、毎日謝罪の言葉をかけながら、小さな苗木に水やりを続けた。
やがて、伸びた枝の先に一つの小さな実をつけた。

株分けし、近場で育てていた他の苗木にも、小さな実が育ったことを知った。
味も色も形も異なるさまざまな果実が町を彩り、再び地域に活気が戻り始めた。

それを見ていた人たちが再び、「もう一度手伝わせて欲しい」と申し出る。
みんなの手によって大切に育てられたそれぞれの苗木は、すくすくと成長を遂げていった。

そして、収穫の時期にはみんなが集まり、それぞれの木から収穫した、色も形も大きさも全く違うそれぞれの果実を手に取りながら、素直に収穫を喜び、そして、果実を分け合った。その中には、サムの姿もあった。

その時、ボブとジョージの耳に、聞き慣れない声が囁いた。不思議な木の苗木の声だった。

「ちゃんと仲間の意見をマルメロな…。」

ボブとジョージは思わず苦笑いした。

…が、その声が二人だけに向けられたものではなく、その場に居合わせた全員に向けられていたことは、サムや周りの人たちの表情を見てすぐに気が付いた。そして、みんなが一斉に晴れたような表情となり、堰を切ったように作業を再開した。

…みんな、ありがとう。これからも一緒に頑張ろう。