ひょっとしたら角松ファンから「そんなことあり得ない」というお怒りの声もあるかもしれませんが、ここはお叱り覚悟で私見を言わせていただきますと、角松敏生とPrinceって、どこか似ているような気がします。
ざっと思いついた共通点。
楽器を弾いて歌って、それでいて他人のプロデュースもして、しかも敢えて言うならば女性好き、その上、神経質というか職人気質、端的に言えば自分大好きなんだけれど中途半端には妥協しない、だからこそ己の道をとことん突き詰めた挙句にレーベルというかレコード会社と揉め、片や改名、片や休業。
ついでに言えばパステルカラーが似合う。
参考までに、Princeが1958年、角松が1960年生まれ、世代も近いという…。
そういえば僕自身、角松敏生とPrinceを聴き始めたのもほぼ同じころ、高校に入学した直後でした。…ということはそれから約30年、ずっと両者については聴き続けていたわけで。
考えてみると、これまで色んなアーティストのライブやコンサートを観てきましたが、恐らく回数で言えばベスト3に入るぐらいこの方のライブを観ていると思います。そんな彼、角松敏生の2017年のツアー青森公演、10年ぶりの青森公演に行って参りましたので、簡単にレポート。…というか簡単にレポートの前のイントロダクションが長過ぎました。相変わらず、どうもすいません。
2017年6月3日(土)、青森は6月とは思えぬほどの冷え込み。初夏というよりは初春を彷彿させるような冷たい雨が降る中、会場の青森市民ホールにはたくさんのお客さんが集まっていました。僕の席は前から6列目のかなり左寄りではありましたが、ツアーに帯同しているサックスプレイヤー、本田雅人がちょうど真ん前にいるという、僕個人としては願ったり叶ったりの位置でした。この日の会場、2階席は見えなかったけれど、1階席はほぼ満席。恐らく全体でも9割以上が埋まっていたのかな?
…開演時刻の17時30分から遅れること3分、17時33分にいよいよ開演。
ざっと見たところの客層は、40代後半から50代前半が圧倒的に多く、男女の比率では4:6、といった感じでした。
…まだツアー中なのでセットリストを含む多くのことをここで披露するのは控えたいと思いますが、今回のツアータイトル「SUMMER MEDICINE FOR YOU Vol.3~SEA IS A LADY~」が示す通り、5月に発売されたインストゥルメンタルアルバム「SEA IS A LADY 2017」をメインとした、(個人的には)これまでの彼のライブの中でも恐らく1,2位を争うぐらいの、非常に充実した素晴らしいライブでした。
10年経ってもなお飄々とした佇まいというか、間もなく57歳となる今もそのスタイルは全く変わっていないし、声量もそのまんま。ただ今回は、「ギタリスト角松敏生」の片鱗を申し分ないぐらい堪能することができたのは、なんだろう、これまで色んなライブを経験してきた中では、ちょっとまた違った印象を「強烈に」ぶつけられたな、そんな感じでした。
前述の最新アルバム「SEA IS A LADY 2017」に参加した5名のミュージシャンが、そのまんまツアーメンバーとして参加していました。
だから、アルバムからのナンバーをそのまま生で聴くことができる、というよりもむしろ、それ以上に深い音を楽しめるという感じ。とりわけこの日は、メンバーで最も若いドラマーの山本真央樹(24)が帯状疱疹を発症するというアクシデントの中で、この日会場に集まった人たちみんなに強烈な印象を与えるぐらいのドラムテクニックを遺憾なく発揮してくれました。
でも、何よりも感激したのは、本田雅人のサックス。
もうですね、彼のことを僕がああだこうだと言うのもおこがましいのですが、彼のテクニックは、ある意味この日と同じ代金(ちなみにこの日の前売りは8,500円)を払って観てもいいぐらい、素晴らしいものがありました。
もっとも、角松敏生のギタープレイをしっかりと目にするのは恐らく今回が初めてと記憶していましたが、お世辞抜きで、うまい。ホントうまい。前述のとおりインストゥルメンタルアルバムを引っ提げてのツアーですので、それ相応の思いを持ってツアーに臨んでいたはず、それにしても凄い。歌半分ギター半分といった構成、彼の唄声を楽しみにしている人にしてみれば物足りないのかも知れませんが、敢えて言います。
ギターが、唄います。
サックスも、唄います。
そして二人の手にしている楽器で、ハモります。
変な話、完全にツインボーカルですよ。
もう、この二人の掛け合いを堪能できただけでも大満足。もちろん他のメンバーも圧巻の演奏を繰り広げ、終演までの3時間があっという間でした。
この先ツアーは続くようですが、お近くにお住いの皆さんはぜひともこのライブを堪能していただきたいと思いますし、その前にこの「SEA IS A LADY 2017」というアルバムも是非購入いただきたいと思います。
そう、今から30年前、バブル景気に日本が沸き始めていたころですよ。そんな中にあって、今改めて再録されたこのアルバムを聴くと、妥協を決して許さない今の音楽に対する姿勢を、垣間見ることができます。
…もっとも、ライブはそんな堅苦しさは全くないんですけどね。
終わってみると正味3時間、諸般の事情で、既にライブを行った他の地域のライブと若干(?)セットリストも違っていたようですが、個人的には大・大・大満足の内容でした。
個人的には、パステル系のステージ衣装の中でも、履いていた靴(シューズ)を見ながらMCを聴いて、妙に納得してしまったのでした。
とにかく、このライブは是非お勧めです。お近くでライブがあるようでしたら、ぜひ足を運んでいただいたうえで、一足早い夏の雰囲気を堪能ください。そしてその前に、直近のアルバムで修業を積んでおきましょう。
(敬称略)