弘前市土手町といえば市内、いや、中南津軽でも屈指の商店街であった。
しかしながら、車社会の到来による交通網の発達、郊外型ショッピングセンターの相次ぐ進出により、かつて人がすれ違うのも困難なぐらい賑わいを見せていた土手町は、衰退の一途を辿っているのが現状である。
無秩序な都市計画の名の下に、楔のように打ち込まれた幅の広い道路はかつての商圏を寸断し、賑わいを見せていたスーパーの跡地にはマンションが建設され、店主の高齢化に伴う店舗の閉店が相次ぎ、土手町の人影はどんどん消えていくことになった。
弘前市中土手町にある弘前中央食品市場。弘南鉄道大鰐線の終着駅である中央弘前駅に程近いこともあり、かつてはさまざまな魚菜や惣菜を販売する店が軒を連ねていた。しかし今となっては店舗の数もまばらとなり、薄暗い建物の中は、木造の柱と冷たいコンクリートタタキの床が剥き出しとなっているところが増えた。残った店舗も、「来るもの拒まず」の姿勢ではあるが、自ら売り出そうという気概は全く感じられないようにも思える。古き昭和の時代を彷彿させる情緒のある建物なのだけれど、寄る年波には逆らえない、といったところだろうか。
そんな中にあっても、気を吐く店がいくつかある。ひとつは、入り口左手にある山田商店。弘前市民であれば大概の人は知っているはずだ。あの、大学いもを販売する店である。そしてもう一つは、「中華そば 山田」である。
後で知った事なのだが、大学いもを販売する山田商店の娘さんが、この「中華そば 山田」を営業しているのだそうだ。さくらまつりでも出店している店ということで、馴染みの人も多いらしい。
通路に面した長いカウンターと、ずらりと並んだ10席以上の椅子。僕らが座った直後には全ての椅子が埋まり、後ろで空くのを待っている人もいるぐらいの混雑振りだった。
隣の人の丼をみて、大盛りを頼んでみることにした。程なく差し出されたラーメンがこちら。
大きな粉ミルクの空き缶から割り箸を取り出す。
スープは魚介系ではなく動物系。久しぶりに食する味だ。
恐らく鶏ガラと豚骨を混ぜたものがベースと思われる。寸胴にネギとりんごが浮いていた、という情報もあった。画像でもお分かり頂けるとおり、醤油色の濃いスープではなく、非常に透明度の高い上品そうなスープである。
魚介系ほど強烈度は強くない分、優しい口当たりのする中華であった。ちょっとケミカル(いわゆる化学調味料)っぽさも感じたけど、気のせい?
トッピングはチャーシューとネギ、メンマにナルト。王道である。
トッピングの下に隠れた麺は細い縮れ麺(個人的にはかなり好みの麺)。ただ、ちょっと長い時間茹でられた(あるいはお年寄り向けに長い時間茹でている?)ため、ちょっと麺が柔らかいな、といった印象。
だがしかし、大盛りとは思えないような勢いで食することができた。
中華以外にもそばやうどんなどもある。おにぎりを頼んだら、「マス、うめ、こんぶのどれにしますか?」と聞かれたのでマスを2つ頼んだところ、「温かい方がいい?」と聞かれたので、「はい」と答えたら、目の前にあったおにぎりをおもむろに手にして電子レンジで温めていた。しかも、おにぎりを手にしてみたら、マスが一つと、もう一つにはこんぶが入っていた。それでも「ま、いいか。」と思わせてしまう、そういう空気がここには漂っている。
営業時間は9時から18時30分まで、定休日は木曜日。
裏通りに駐車場があり、運が良ければ停めることができる。