日別アーカイブ: 2014-03-31

15年ぶりの表舞台

宮原学というミュージシャンを、どれぐらいの人が知っているだろうか。

僕が彼の音楽と初めて接したのは、従姉が持っていた「SCRAMBLE」というCDを耳にした、今から25年以上も前のことだ。

一度それを聴いて衝撃を受けた僕は、従姉に頼み込んでようやくそのCDを貰い(それも、半ば強引に貰った)、何度も何度も何度も何度も聴いた。まさに、愛聴盤だった。

好き嫌いはあるだろうが、宮原学はどちらかと言えば過小評価されているアーティストじゃないかと、僕は勝手に思っている。

彼の声は凄く特徴があって、良く言えば野太い、他の言い方をするならば力みの入った歌い方が特徴的で、決して上手いというわけではないけど、一度耳にしたら離れなくなる、そんな独特な唄い回しが僕のお気に入りだ。
恐らく好きな人はとことん好きで、きっとかなりディープなファンも多いんじゃないかと思っている。(あ、僕はそんなにディープではないです。)

歌唱力よりも、どちらかといえばギターテクニックが注目され、同じレーベルに所属していた元レベッカのメンバー(小田原豊、高橋教之、是永功一)らと結成した「Baby’s Breath」(アルバムを2枚出したけど、どちらも名盤だった。)での活動の後、一時活動を休止してからは、近藤真彦や安室奈美恵、相川七瀬などのツアーメンバーとして帯同するようになり、メインというよりサポートでの活躍が目立つようになった。

そして、何度かレコード会社の移籍を繰り返した後、99年に発表したアルバム「MANABU MIYAHARA」を最後に、名前すら見かける機会がなくなっていた。(実は体調を崩して療養していたこともあったようで、結構波瀾万丈の時期を過ごしていたらしい。2006年から始まったブログは、地味に更新されていたみたいだけど。)

そして、長い潜伏期間を経て、09年には盟友の小田原豊と西山史晃(元ROGUE)とともに、「KISSAMA」というバンドを結成し、地味に活動をしていたらしいのだが、僕はそれすらも知らなかったわけで…。

…と、宮原学のバイオグラフィーみたいなのをつらつらと並べてみたが、僕の周りで彼の名前を知っている人って、実はかなり少ないんじゃないかと思う。
あるいは、久しぶりに聞く名前に、思わずのけぞりながら懐古的になってしまうか。

多分「あの人は、今」みたいな番組に出ても何ら不思議ではないような気がするが、そもそも彼の知名度を考えると、それすらもあり得ないことなのだろう。

彼を例えるのによく引き合いに出されるのがブルース・スプリングスティーン。
でもどちらかと言えば、もっとハードロック系への憧憬がある人なんじゃないか、そう思っている。

個人的には江戸屋レーベルで発表された「RHAPSODY」と前出の「SCRAMBLE」、そして「FLASH BACK」が名盤過ぎてたまらんのだけど、今はどれもこれも廃盤になっていて、入手困難。

そんな既に忘却の彼方へと葬られても何ら不思議ではない彼の音沙汰を、ここ最近急に耳にするようになった。

しかも、何とフルアルバムとしては15年ぶりとなる「宮原学」名義での新作発表。
…といっても発売されたのは今年1月のことなので、発売されていることすら知らず、気づいて慌てて購入した、という顛末なんだけど。

2年半にもわたるレコーディングを経て、先行配信されていた楽曲のリミックスバージョンや、セルフカバーなど、全12曲を収録したオリジナルのアルバム。もう一度言うけど、15年ぶりだって(笑)。

アルバムには、前出の小田原豊の他、同じく「Baby’s Breath」のメンバーだった柴田俊文や、「パール兄弟」の窪田晴男など、気心知れたミュージシャンが脇を固めている。
最初聴いた時に思ったのは、昔みたいな重厚感溢れるコテコテのロックというよりは、むしろいぶし銀のブルースっぽい感じ。
あの野太い声も相変わらずだけれど、寄る年波には勝てないのか(笑)、声量は以前より落ちている。
ただ、その代わりといっては何だが、円熟味を増した味のある声が、今回のアルバムのプロデュースをサポートした小田原豊の心地よいドラム音とも相まって、非常に味のあるいい作品に仕上がっている。

そして、これは狙ってのことなのかも知れないが、12曲が3つのパートに分かれていて、前半はどちらかといえば、これまでの路線を踏襲しつつのハードな曲、中盤はこれまた欠かすことのできないミディアム~スロー、そしてブルーシーな曲、そして終盤は既発曲のリミックスという流れ。

年相応といっては本人に失礼かも知れないけれど、声量のことはともかくとして、これだけ素晴らしい作品に仕上がっただけでも凄いと思うし、錚々たる顔ぶれのミュージシャンがサポートしつつも、今現在の宮原学の作品が聴けるということ、それだけでも充分過ぎるぐらい満足だ。

ジャケットがシンプルで、メッセージがなかなか伝わりにくいだけに、まずはいいから黙って聴いてみろ!といった感じだろうか。

個人的には、昨年12月に会ったらしい角松敏生との出逢いが今後どう展開するのか、非常に興味がある。頼むから何かやってくれ(笑)。