日別アーカイブ: 2004-11-02

不問になった自己責任

この話題には触れるかどうしようか迷ったのですが、やっぱり書きます。
またしても起きてしまったイラクでの日本人殺害。日本国内の状況が状況だっただけに、大きく取り上げられたのは殺害された後ということになってしまいました。
小泉首相は、「最善を尽くした」とは言っていますが、結局のところは他力本願(イラクの宗教家などを通じて犯人グループとのコンタクトを取ろうとした)だっただけで、果たして他に解決策はなかったのかという疑問は拭えません。もちろんそれはイラク派兵の是非も含めて。ちょうど12月で期限切れとなる自衛隊派遣に関して、派兵延長か撤退かで議論を呼ぶことは間違いないでしょう。そして、現在行われている米大統領選挙の結果次第では、今後方向転換を余儀なくされる可能性もあります。
最近の話ですが、世界に見る日本は、ドラえもんで言うところのスネ夫の役回りだというコラムを読みました。実に的を射ていると思います。当然ジャイアンは米国。主人公であるドラえもんがいないのが、非常に残念ではありますが。
いずれにせよ、今後も日本はスネ夫であり続けることでしょう。ただし、ドラえもんに登場するスネ夫がそうであるように、いつかジャイアンに泣かされる可能性も十二分にあることを忘れてはならないと思います。
さて、今回の事件。亡くなった香田さんには、ただただ無念としか言いようがありません。謹んでお悔やみ申し上げます。
しかしながらその一方で、なぜ危険極まりないイラクへ、しかもわずかな所持金で、わざわざ単身乗り込んだのか。この辺に関しては、香田さんの行動に疑問を持つ声も少なくありません。単なる好奇心で入国したらしいという噂が広まるにつれて、再び「自己責任論」が噴出しかけていました。そして、口言わぬ世論に後押しされたかのように、拘束直後の香田さんの情報は、新潟中越地震の陰に隠れることとなりました。
さらにこの時、いろんな情報が錯綜していたらしく、「既に殺害された」という誤報が流れてしまいました。これは、絶対にあってはならない初歩的なミスではないかと思います。しかもほぼ同時期に、地震の影響で母子3名が生き埋めとなり、幼児1人が救出された際も、「3人生存」という誤報が流れました。人の生死に関わる情報が正確に伝わらないという事態を見た時、報道する側はもっと情報収集や発表に慎重になるべきではないかと思いました。
結果的に、その誤報は現実となってしまったわけですが、
恐らく生存したまま帰国すれば、間違いなく「自己責任論」を問われ、バッシングを浴びていたことでしょう。しかしながらその彼は、近日中に無言の帰国となります。
確かに私も、彼の行動はちょっと身勝手過ぎたのではないかという気がしています。
だからといって、全面的に彼に非を預けるのは酷ではないでしょうか。
本来入国できないはずのイラクに、彼が入国できたということを、なぜもっと問題視しないのか。これって、内政干渉なんでしょうか。では、今イラクに派兵されている米国軍は、内政干渉には当たらないのか、と問いたい。それは、自衛隊員も一緒。実は、ある方から聞いたのですが、「1日約1万円の日当を目当てにイラクに向かった」自衛隊員もいるというのです。もちろん真偽はわかりませんが。
親御さんが発表した談話。
「支えていただいた多くの方々には大変な心痛をおかけし、おわび申し上げたい。感謝の気持ちでいっぱいです。このような結果になったが、イラクの人たちに一日も早く平和が訪れることを祈ります」。
誰を責めるわけでもなく、誰に怒りをぶつけるわけでもなく、今は息子の死を受け止めようと必死なのが、何とも痛々しいコメントです。
香田さんが人質として拘束された当初、「なぜあんな危険なところへ行ったのか」と怒りをぶちまけた政府関係者がいました。では、今入国している自衛隊員やマスコミ関係者は全員安全なのでしょうか。それは違うんではないかと思います。
一部政府関係者のように「自己責任論」を振りかざすのも大いに結構。でもその前に、もっと本質的なこと、つまりイラクがなぜこのような状態に陥っているのかというのを、改めて考えてみる必要があるような気がしました。