【CD感想】JOY-POPS / LIVE 2020 NEXT DOOR #joypops #thestreetsliders

新型コロナウイルス感染症の影響は、飲食店や観光業、宿泊業にとどまらず、人々の趣味、娯楽の領域までも侵食することとなった。とりわけ、ライブ活動を主戦場としているアーティストやホール経営者にとって、これほど厄介で疎ましく、そして腹立たしいものはないだろう。

私事だが、2020年から21年にかけて、4本のライブ鑑賞を予定していた。
アーティスト名は敢えて伏せるが、中には、約25年ぶりの鑑賞となるアーティストや、人生初の鑑賞となるアーティストも含まれていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響でいずれの公演も延期または中止となってしまった。これほどまでに虚しく、やるせない気持ちになったのは、恐らく10年ぶりぐらいではないだろうか。

さて、医療従事者から始まったワクチン接種が段階的に進められていくとはいうが、一体いつになったらこの閉塞感から解放されるのだろうか、という悶々とした気持ちを抱えている方々がほとんどではないかと思う。
それでも、いつか開かれるであろう新しい扉の向こうに広がる世界が来る日を待ち続けながら、目には見えない内外の敵と戦い続けなければならない。

遡ること2018年の7月、僕は青森市で伝説のライブを目の当たりにした。
The Street Slidersのフロントマン、村越弘明(ハリー)と土屋公平(蘭丸)によるユニットJOY-POPSの18年ぶりとなるライブの最終公演(のちに追加公演が発表されたが)。
このライブにとてつもなく感動した僕は、いくつか願いを込めてブログの記事をしたためた。

JOY-POPS 35th Anniversary Tour ”Wrecking Ball” @青森QUATER #joypops #thestreetsliders

このライブが最後でなければいいな。そして、願わくは4人が集まる場面が見たい。
できれば、演奏してくれた新曲に日の目が当たりますように。そして、ライブの模様がもっと多くの方々の耳や目に触れられますように。

この願いのうち、4人で集まる場面は未だに叶っていないが、他の3つは念願成就となった。

このツアーの模様はDVDとCD双方で発表され、CDには青森でのライブ音源も収録されたのだ!
そして、これだけでJOY-POPSの活動は終わらなかった。2020年春から全国8か所でライブが開催されることが発表された。こうして再び動き出すはずだった2人だが、新型コロナウイルス感染症の影響で全公演が中止となってしまった。

しかし、怪我の功名とでも言えばいいのだろうか、2年前のツアーで披露された新曲は、中止となったライブの代わりにスタジオ録音され、他の新曲とともに2020年6月に発売された受注生産限定盤のミニアルバム「INNER SESSIONS」に収録された。
本格的に2人が動き出し、そして何かを仕掛けようとしていたことを充分予感させるものだった。

2020年12月には、ツアー唯一の有観客公演となったLINE CUBE SHIBUYA(元・渋谷公会堂)でステージが繰り広げられ、何と3月には、この時の模様が収録されたBlu-rayとCDが発売、同日には「INNER SETTIONS」のアナログ盤も発売された。

このうち僕は、2枚組のライブCDを購入。CDには、23曲が収められている。ライブで披露された全曲が収録された、というわけだ(MCは収録されていないけれど)。

前回のLIVE CDとは全く趣が異なるのは、会場内の入場者数が限定され、更には声援なしでの鑑賞を強いられたため、楽曲間の音はほとんど拍手のみで、それがまたステージと観客との間に妙な緊張感を生み出しているといえばいいのだろうか、非常に厳かな雰囲気が漂っていることだった。
前述のミニアルバムに収録された楽曲は全曲披露され、Slidersの懐かしい名曲はもちろん、JOY-POPS名義の曲も数多く演奏されている。
繰り広げられるのは、ドラムもベースもキーボードも不在の、2本のギターのみで構成された阿吽の呼吸…というのは前回と同じなので、表現を改めると、ギターを抱えた運慶と快慶、といったところだろうか。一貫して貫き通されるロックとブルースの融合は、彼らの姿勢にブレのない証だ。

固唾を飲んでステージを見守る観客の一人になったような気分で、その息づかいや弦を弾く音にじっくり浸らせてくれる作品だった。
気がつくと二人は、還暦を迎えた。こういう年齢の重ね方も悪くないと思う。

なお、それぞれの作品はローソン系列のMastard Recordsから販売されており、取り扱いはHMVのみなので要注意。

(背面を紹介する人はあまりいないような気がするので、収録曲もクレジットされた背面をアップしておきます。)